「中国のイノベーション封じは西側の損」Web Summit創業者が警鐘 video poster
欧米のテック政策が中国との協力を妨げることで、世界全体のイノベーションの質が落ち、最終的には西側の方が大きな損失を被る──。世界的なテックイベント「Web Summit」の創業者パディ・コスグレイブ氏は、そんな警鐘を鳴らしています。
「中国抜きのイノベーションは成り立たない」創業者の問題提起
コスグレイブ氏は、中国の国際メディアCGTNで関欣(Guan Xin)氏のインタビューに応じ、ヨーロッパとアメリカのテック政策が、中国を重要な参加者とする「よりグローバルで協調的なイノベーション・エコシステム」の発展を妨げていると指摘しました。
そして、中国のイノベーションを「ブロック」しようとする短期的なアプローチは、長い目で見れば中国よりも西側にとっての損失の方が大きくなると警告しています。中国を排除するのではなく、世界の一員としてどう協力していくかが鍵だ、というメッセージです。
欧米テック政策は何を「ブロック」しているのか
コスグレイブ氏が問題視しているのは、中国とのテクノロジー協力を制限しようとする欧米の動きです。具体的には、次のような方向性が含まれると考えられます。
- 先端技術や半導体などに関する輸出管理の強化
- 中国と関わるスタートアップや研究への投資制限
- 大学や研究機関同士の共同研究に対する監視や制約
- データやデジタルサービスの越境利用に対する新たな障壁
こうしたテック政策は、安全保障やサプライチェーンのリスクを意識したものとして説明されることが多い一方で、コスグレイブ氏は「イノベーション・エコシステム全体」に与える影響を懸念しています。
なぜ「西側の方が損をする」のか
では、なぜ中国側よりも西側が大きな損失を被るのでしょうか。コスグレイブ氏の問題提起から読み取れるポイントを整理すると、次のようになります。
- 市場と人材へのアクセスを自ら狭める
中国は巨大な市場であると同時に、エンジニアや研究者、起業家などの人材が集まる拠点でもあります。こことの交流を制限することは、西側企業が成長機会と人材プールを自ら減らすことにつながります。 - 技術の進化スピードが落ちる
イノベーションは、異なる地域やバックグラウンドを持つプレーヤーが協力することで加速します。特定の国や地域を排除すると、知識やアイデアの循環が滞り、新しい技術の開発スピードが鈍るおそれがあります。 - エコシステム全体が分断される
世界のテック産業が複数のブロックに分かれ、お互いに互換性の低い規格やプラットフォームが乱立すると、企業もユーザーもコスト増に直面します。コスグレイブ氏の懸念は、こうした「分断のコスト」を西側が過小評価しているのではないか、という点にあります。
2025年の日本とアジアにとっての意味
2025年現在、日本やアジアのテック企業にとっても、欧米と中国の関係は無視できないテーマです。両者のあいだで緊張が高まるほど、ビジネスや研究開発の選択肢は複雑になります。
- 橋渡し役としてのポジション
アジアの企業や研究者は、欧米と中国の双方とつながりを持つことが少なくありません。対立の構図が強まる中で、対話や共同プロジェクトの「橋渡し役」となれるかどうかが問われます。 - サプライチェーンとパートナー選び
どの技術をどの地域のパートナーと開発するのか。企業は、政治リスクだけでなく、長期的なイノベーション力も含めて判断する必要があります。 - 人材と研究交流の維持
留学や共同研究、国際カンファレンスなど、人の行き来が減れば減るほど、知識の更新も遅くなります。開かれた交流をどこまで維持できるかは、日本にとっても重要なテーマです。
「安全保障」と「オープンな協力」をどう両立させるか
コスグレイブ氏の発言は、欧米の政策そのものを単純に批判するというより、「短期的な封じ込めが本当に自分たちの利益になるのか」を問い直すものだと言えます。
テクノロジーと安全保障のバランスをどう取るのか。どこまでが正当なリスク管理で、どこからが過剰な分断なのか。これは、日本を含む多くの国や地域に共通する問いです。
- 安全保障とイノベーションは、本当にトレードオフなのか
- 短期的な政治判断が、長期の技術競争力を損なっていないか
- 対立ではなく協調を前提にしたルール作りは可能か
2025年のテック産業は、もはや一国だけで完結するものではありません。コスグレイブ氏の言う「よりグローバルで協調的なイノベーション・エコシステム」をどう実現するのか。日本の読者にとっても、自分ごととして考える価値のあるテーマではないでしょうか。
Reference(s):
Blocking Chinese innovation hurts the West: Web Summit founder
cgtn.com








