中国のグリーン・低炭素発展が加速 世界最大のカーボン市場の現在地
気候変動対策が世界共通の課題となる中、中国のグリーン・低炭素発展が新たな段階に入っています。最近、金曜日に開かれた記者会見で、生態環境相のHuang Runqiu氏は、中国が世界最大のカーボン市場を運営しており、すでに国内排出量の約6割をカバーしていると明らかにしました。
石炭火力発電や鉄鋼といった高排出の産業で超低排出化が進む一方、自主的な温室効果ガス排出量取引や、製品ごとのカーボンフットプリント管理の仕組みづくりも加速しています。その結果として、大気や水環境の質は着実に改善しつつあるといいます。
世界最大のカーボン市場がカバーするもの
Huang氏によると、中国のカーボン市場は現在、国全体の温室効果ガス排出量のおよそ60パーセントを対象としています。カーボン市場とは、企業などにあらかじめ排出枠を割り当て、排出量が枠を下回った企業は余剰分を売却し、上回った企業は不足分を購入する仕組みです。
この仕組みによって、
- 排出削減に成功した企業には経済的なインセンティブが生まれる
- 排出削減コストの低いところから優先的に削減が進む
- 全体として同じ削減量でも、社会全体の負担を小さく抑えやすい
といった効果が期待されます。排出量の6割を市場メカニズムの下に置くという規模は、グリーン・低炭素経済を進める上で大きな意味を持つ数字です。
石炭火力と鉄鋼で進む超低排出アップグレード
同じ記者会見では、具体的な設備の改造状況についても説明がありました。これまでに、合計11億2000万キロワットの石炭火力発電設備と、9億5000万トンの粗鋼生産能力が、全工程または主要プロジェクトで超低排出へのアップグレードを完了しています。
石炭火力発電は、これまで長く電力供給の中核を担ってきた一方で、二酸化炭素や大気汚染物質の排出源でもあります。その設備が大規模に超低排出仕様へと改造されていることは、
- エネルギー供給を維持しつつ排出削減を図る
- 一度に大量の排出削減効果を見込める分野から手を付ける
という現実的なアプローチを示すものと言えます。
鉄鋼業でも同様に、膨大な生産能力が対象となっています。鉄鋼はインフラや製造業の基盤となる一方、高エネルギー消費産業の代表格でもあります。この分野で超低排出化が進むことは、産業構造そのものの転換にもつながっていきます。
自主的排出量取引とカーボンフットプリント
中国では、制度としてのカーボン市場に加え、自主的な温室効果ガス排出量取引市場も立ち上がっています。これは、法的な義務の対象外となっている主体も含め、企業や団体が任意に排出削減プロジェクトに参加し、その削減量を取引できる仕組みです。
さらに、製品ごとのカーボンフットプリント管理体系の構築も加速しているといいます。カーボンフットプリントとは、原材料調達から製造、輸送、使用、廃棄に至るまで、製品のライフサイクル全体でどれだけ温室効果ガスが排出されたかを可視化する考え方です。
こうした仕組みが整ってくると、
- 企業は自社製品の排出量を具体的な数字として把握しやすくなる
- 消費者や取引先が、環境負荷の低い製品を選びやすくなる
- サプライチェーン全体での排出削減が進みやすくなる
といった変化が期待されます。市場メカニズムと情報の見える化を組み合わせることで、規制だけに頼らないグリーン・低炭素経済への移行を目指していることがうかがえます。
大気と水の質は着実に改善
こうした政策の積み重ねにより、生態環境の質も改善傾向にあると報告されています。直近のデータでは、空気の質が良好な日の割合は前年より1.7ポイント増え、水質が比較的良好とされる地表水の割合も、前年に比べて0.7ポイント上昇しました。
ポイントの差だけを見ると小さく感じられるかもしれませんが、国全体を対象とした指標で数値が改善するということは、
- 特定の地域だけでなく広い範囲での改善が進んでいる
- 一時的な要因ではなく、構造的な変化が始まりつつある
ことを示している可能性があります。日常的に空気の澄んだ日が増えることや、水環境が安定して改善していくことは、暮らしの質の向上にも直結します。
第14次五カ年計画の目標達成へ、自信と次のステップ
Huang氏は、第14次五カ年計画で掲げられた生態環境の改善目標についても、達成への自信を示しました。この計画期間を好成績で締めくくるとともに、次の5年間に向けた確かな土台を築きたいとしています。
五カ年計画は、エネルギー政策や産業構造の方向性を中期的な視点で定める枠組みです。グリーン・低炭素発展をそこに組み込み、カーボン市場や超低排出化、カーボンフットプリント管理といった具体的な施策で支えていく流れは、長期的な温室効果ガス削減と経済発展を両立させるための試みだと言えます。
市場メカニズムを活用しつつ、環境基準や技術改良も同時に進めるアプローチは、各国や各地域でも関心が高まっています。エネルギー構成や産業構造が異なれば、最適な組み合わせは変わってきますが、大きな排出源から計画的に手を付けるという考え方は、多くの場所で共通するテーマになりつつあります。
中国のグリーン・低炭素発展の動きが、今後どのように深まり、周辺地域や世界の気候変動対策とどのように結び付いていくのか。今回示された数字は、そのプロセスの現在地を映し出す一つのスナップショットと言えそうです。
Reference(s):
cgtn.com







