中国、WTO交渉で新たな特別優遇求めず 開発重視の改革へ転換点 video poster
中国が世界貿易機関(WTO)の交渉で「新たな特別優遇は求めない」と表明し、2025年12月現在、この動きが国際貿易ルールの行方をめぐる重要なニュースとなっています。本稿では、この方針の中身と背景、今後の争点を整理します。
中国が表明したWTO交渉での新方針
中国は9月下旬、WTOの現在および将来の交渉において、新たな特別かつ異なる待遇(Special and Differential Treatment、S&DT)を求めない方針を発表しました。S&DTとは、途上国メンバーに認められてきた柔軟な措置や移行期間などを指す概念です。
この発表について、中国商務部(日本の経済産業省に相当)で国際貿易代表を務める李成鋼氏は記者会見で、「国内と国際の両方の要因を踏まえた重要な政策表明だ」と述べました。
李氏は、中国が新たな特別優遇を求めないとしつつも、今回の決定は多角的貿易体制を守り、グローバル発展イニシアチブやグローバル・ガバナンス・イニシアチブを推進するためのものであり、貿易と投資の自由化・円滑化に強い推進力を与え、世界経済ガバナンス改革に「前向きなエネルギー」を加えると強調しました。
この方針は、中国の李強国務院総理が、国連総会第80会期に合わせて開かれたグローバル発展イニシアチブのハイレベル会合でまず明らかにしたものとされています。
「最大の途上国」という立場は変えない
一方で、李氏は中国の立場そのものが変わったわけではないこともはっきりさせています。中国は依然として「世界最大の途上国」であり、この地位は変わっていないと述べました。
そのうえで、中国は今後も開発途上のWTOメンバーの権利を守りながら、世界貿易の自由化とWTO改革を推し進めていくとしています。つまり、新たな特別優遇を自ら求めない一方で、途上国全体の発言力や利益を守る役割は維持するというスタンスです。
変わらない3つの柱と「開発」重視のWTO改革
中国商務部の世界貿易機関司を率いる韓勇氏は、今回の方針転換があっても、中国のWTO交渉における3つの基本姿勢は変わらないと説明しています。
- 中国のWTOにおける「途上国メンバー」としての地位は変わらないこと
- 途上国メンバーの正当な権利を守る決意は変わらないこと
- 貿易・投資の自由化と円滑化を促進する姿勢は変わらないこと
韓氏はまた、WTO改革のプロセスでは「開発」を中核に据えるべきだと強調しました。今回の決定は、南北問題と呼ばれる先進国と途上国の溝を埋める一助となり、開発を軸にしたルールづくりを後押しするものだと位置づけています。
中国は今後、投資円滑化や電子商取引(デジタル貿易)に関する新しいルールづくりを推進し、全メンバーと協力してWTOの多角的貿易体制を強化していく方針です。
国際貿易ルールにとって何を意味するのか
今回の表明は、WTOの交渉構図にいくつかの変化をもたらす可能性があります。最大の途上国メンバーである中国が、新たな特別優遇を求めないと宣言したことで、他のメンバーからは「より積極的に責任を分担する意思表示」と受け止められる面もあるでしょう。
同時に、中国は途上国としての地位と役割を維持するとしており、開発を重視したWTO改革を求める途上国メンバーにとっては、引き続き重要なパートナーであり続ける可能性があります。
交渉の具体的な中身はこれからですが、投資やデジタル貿易といった成長分野で、どのようなルールがどのペースで整備されるのかは、世界経済の行方に直結するテーマです。
読者が押さえておきたいポイント
2025年12月時点で見える論点を、最後にまとめます。
- 中国は「途上国」としての地位を維持しつつ、新たな特別優遇は求めないというハイブリッドな立場を選んだ
- WTO改革では「開発」を中心に据えるべきだというメッセージを発し、南北間の溝を埋める役割を自認している
- 投資円滑化や電子商取引など新分野のルールづくりで、中国がどのように多角的貿易体制を支えていくかが今後の焦点になる
多国間の貿易ルールが揺れるなかで、今回の中国の決定は、開発と自由化をどう両立させるのかという古くて新しい問いを投げかけています。WTO交渉の次の一歩を見守るうえで、重要な文脈として押さえておきたい動きと言えます。
Reference(s):
cgtn.com








