中国最高人民法院、国際商事法廷を強化へ 新指針と典型事例の狙い
中国の最高人民法院が、国際商事法廷の整備に向けた包括的な15本の新指針を公表しました。国際ニュースとして、外国企業や海外投資家に法的な予見可能性と安心感を示し、中国を越境ビジネスの紛争解決拠点として位置づけようとする動きです。
中国最高人民法院が新たな指針を公表
今回示された指針は、国際商事紛争を扱う制度を、構造が整い、公平で、効率的かつ利便性の高いものにすることを目標としています。いわゆる中国の特色を生かした国際商事裁判システムを構築し、世界の企業が利用しやすい場にすることが狙いとされています。
指針が掲げる主な方向性は次の通りです。
- 国際商事事件に関する管轄ルールの最適化
- 事件管理や審理プロセスの高度化
- 外国法の内容を調べ、適用するための仕組みの強化
- 国際条約や国際的な商慣行の積極的な活用
- 裁判官の専門性の一層の向上
- 国際商取引ルールを議論する機関や国際私法分野の機関との連携強化
- 最高人民法院と各地の国際商事法廷の協調的な発展の推進
最高人民法院の審判委員会メンバーである王淑梅氏は、この取り組みについて、中国を越境商事紛争の解決を選びたくなる場として位置づけるとともに、安定的で透明性が高く、予測可能なビジネス環境を支えることが目的だと説明しています。
全国に広がる国際商事法廷ネットワーク
中国は二〇一八年以降、深センと西安に最高人民法院主導の国際商事法廷を二か所設置し、さらに全国十六の中級人民法院に国際商事事件を扱う権限を付与してきました。
今回の指針は、最高人民法院レベルと地方レベルの双方における国際商事法廷の発展を、体系的に計画した初めての法的文書とされています。トップレベルの裁判所と地方裁判所が同じ方向を向いて制度設計を進めることで、利用者にとっても手続きや判断基準が分かりやすくなることが期待されます。
一帯一路関連の典型事例も公開
最高人民法院はあわせて、一帯一路構想に関連する国際商事案件から選ばれた典型事例の第五弾を公表しました。これは、複雑な越境取引に関わる当事者にとって、実務上の指針となる判例を示す試みです。
スタンバイ信用状をめぐる重要判断
公開された事例の一つでは、保証機能を持つスタンバイ信用状と呼ばれる金融商品をどのような法ルールで扱うかが争点となりました。最高人民法院は、このようなスタンバイ信用状は独立保証に関する中国のルールに基づいて判断されるべきだと初めて明確に位置づけました。
スタンバイ信用状は、国際取引において支払いや履行を担保する役割を果たすことが多く、今回の判断は国際金融取引にとって重要な法的安定性をもたらすと受け止められています。
アフリカの工事案件で見えた工夫
別の事例では、アフリカでの工事プロジェクトをめぐる紛争が取り上げられました。この案件では、国境をまたいだ証拠の収集や、専門的な技術評価をどのように行うかが大きな課題となりました。
最高人民法院は、このような課題に対して柔軟かつ創造的なアプローチを取り、越境案件であっても実効的な審理が可能であることを示したとされています。こうした運用の積み重ねが、国際商事法廷への信頼を高める要素になるとみられます。
対外戦略としての法整備
今回の指針や典型事例の公表は、中国が対外関係における法の整備を戦略的に進めている一環と位置づけられています。法制度を明確にし、具体的な司法判断を積み上げることで、国際商事司法の分野で自らの信頼性と存在感を高めようとする狙いがあります。
法律専門家たちは、中国が法制度の枠組みを整備し、分かりやすい司法判断を提供することで、国際商事紛争の解決における魅力を高め、拡大するグローバルビジネスに対する法的保護を強化しようとしていると指摘しています。
日本やアジア企業にとっての意味
中国との取引が日常的になっている日本やアジアの企業にとっても、国際商事法廷の動きは無関係ではありません。今後、中国の裁判所を紛争解決の場として選ぶかどうかは、契約交渉の重要な論点となり得ます。
企業が押さえておきたいポイントを整理すると、次のようになります。
- 契約書における準拠法や裁判管轄条項の書き方を見直す必要性
- 保証やスタンバイ信用状など金融商品の取り扱いに関する中国法の動向
- 海外プロジェクトでの証拠保全や技術鑑定に関する実務運用
- 国際条約や国際慣行が中国の裁判所でどのように参照されるかという点
こうした変化を踏まえ、企業の法務部門や顧問弁護士は、中国の国際商事法廷の制度設計や判例の流れを継続的にフォローしていくことが求められそうです。
これからの注目点
今後、国際企業が中国の国際商事法廷をどの程度選好するのか、また他の国や地域に設置された国際商事裁判所との間でどのような役割分担や競争が生まれるのかが注目されます。
越境取引が当たり前になった現在、企業にとっては、自社のビジネスがどの法体系と司法システムに支えられているのかを意識することが、リスク管理の一部になりつつあります。今回の中国の動きは、その選択肢の一つが着実に形を整えつつあることを示していると言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com







