米家具業界団体、トランプ政権の新関税に警戒 小売1,400社に打撃懸念
アメリカの家具業界を代表する団体が、トランプ米大統領による新たな関税方針に強い懸念を示しています。家具やキャビネットに最大50%の関税が課される可能性があり、小売店と消費者の双方に影響が出ると警告しています。
トランプ政権の「家具・キャビネット関税」とは
全米の家具小売業者を代表する団体「ホーム・ファーニシングス協会(Home Furnishings Association)」は、会員となる約1,400社に対し、新しい関税についての警戒を呼びかけました。協会は公式サイトに掲載した書簡の中で、関税が各社のビジネスに「直接的な影響」を与え得ると指摘しています。
トランプ米大統領は、国家安全保障上の理由を挙げて、特定の家具やキャビネット(収納家具)に対し、30〜50%の追加関税を課す方針を表明しました。発表によれば、この関税は2025年10月1日から適用される予定とされています。
家具小売1,400社が抱く3つの不安
協会の書簡は、「家具小売業者にとって、この関税は課題であると同時に、多くの疑問を突きつけている」として、主に次のような懸念を示しています。
- ① 価格上昇と需要減少のリスク
関税による仕入れコストの増加分は、最終的に消費者価格に転嫁せざるを得ない可能性があります。協会は、家計が引き締まる中での値上げは、家具需要を冷やしかねないと警告しています。 - ② 仕入れ先や商品構成の見直し圧力
小売各社は、どの仕入れ先からどの商品を調達するかといった調達戦略や、どの商品を主力として販売していくかという販売戦略の再検討を迫られるおそれがあります。 - ③ 対象範囲が見えない不透明感
今回の関税では、どこまでの品目が「関連製品」とみなされるのかが明確ではありません。特に木製家具や、いわゆるケースグッズ(チェストやキャビネットなどの収納家具)が対象に含まれるかどうかで、影響の大きさが大きく変わると協会は指摘しています。
すでに家具価格はインフレ率を上回るペース
アメリカの家具価格は、関税とは別にすでに上昇傾向にあります。米労働統計局が2025年9月11日に公表したデータによると、8月の家具価格は全体のインフレ率を上回るペースで上昇しました。
特に、リビングルーム、キッチン、ダイニング向けの家具の物価は、季節調整後で前月比0.7%の上昇となり、3カ月連続で全体のインフレ率を上回りました。こうした状況下で新たな関税が加われば、消費者の負担増や買い控えにつながる可能性があると業界はみています。
「関税で生産は戻らない」現場からの懐疑
トランプ米大統領は、国内製造業の再活性化を掲げ、これまでも家具に関税を課す考えを示してきました。しかし、現場の声は必ずしも賛同一色ではありません。
高級デザイン家具や照明などを扱う大手卸売企業アイヒホルツのデニス・ヘンドリックス副社長は、業界紙の取材に対し、関税によって大規模なソファなどの張り地家具の生産がアメリカに戻ると期待するのは「願望に過ぎない」と語りました。
同氏は、人気商品の多くはすでにアメリカ市場向けに展開しているとした上で、「問題は、誰がその需要を満たす生産を担うのかだ」と指摘。大量生産に対応できる工場や労働力が必要だが、それがすぐに整うとは限らないと懸念を示しました。「最終的には、お客様により高い価格を支払ってほしいとは思っていない」とも述べ、関税が消費者価格を押し上げることへの危機感をにじませています。
「どんなゲームか分からない」戦略が立てにくい企業
アメリカの家具メーカー、ジョフラン(Jofran Inc.)のジョン・ミランダ副社長も、SNSへの投稿で現在の状況を「白いボールだけを渡されて、ゲームプランと守備戦略を考えろと言われているようなものだ」と表現しました。
どのスポーツなのか、サッカーなのか、野球なのか、ビリヤードなのか、ゴルフなのかも分からず、ルールも頻繁に変わり得る中で、企業が長期的な戦略を描くのは難しい――。ミランダ氏の比喩は、関税の対象範囲や運用が見通せないことで、企業の意思決定がいかに不安定になっているかを物語っています。
日本の読者にとっての意味
今回のアメリカの家具関税をめぐる議論は、日本を含む他の国や地域の消費者や企業にとっても無関係ではありません。経済安全保障や産業政策を理由とした関税は、
- 消費者物価の押し上げ
- 企業のサプライチェーン戦略の見直し
- 中長期的な投資判断の不透明化
といった形で、広く影響を及ぼしうるからです。
アメリカの家具業界団体や企業が示したのは、「国内産業保護」と「消費者・小売りの負担増」という二つの価値の間で、どのようなバランスを取るべきかという問いです。今後、関税の対象範囲や適用の運用がどのように明確になっていくのか、そして小売各社が価格設定や調達、販売戦略をどう変えていくのかが、注目されます。
日々の暮らしの中で選ぶソファやテーブルの価格の裏側には、こうした政策決定と企業の判断があります。ニュースを通じてそのつながりを意識してみると、国際ニュースが少し身近に感じられるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com







