デジタル貿易が広げる国際ビジネス:杭州・世界デジタル貿易博のインパクト
2025年9月末に杭州で開かれた第4回世界デジタル貿易博(Global Digital Trade Expo, GDTE)は、154の国と地域から1,800社超が参加し、国際参加者が2024年比で54%増えるなど、デジタル貿易の存在感の高まりを象徴するイベントとなりました。デジタル技術を軸にした新しい貿易の姿は、中国だけでなく世界のビジネスや私たちの暮らしをどう変えていくのでしょうか。
杭州で開かれた第4回世界デジタル貿易博
第4回世界デジタル貿易博(GDTE)は、2025年9月25〜29日に杭州のコンベンションセンターで開催されました。会場には154の国と地域から1,800社を超える企業が集まり、国境を越えたデジタル貿易の最新トレンドやビジネスモデルが紹介されました。
国際参加者は2024年と比べて54%増加し、短期間で大きく規模を拡大しています。世界的にデジタル経済が拡大するなかで、デジタル貿易が中国の国家経済発展と国際貿易の重要な柱になりつつあることが数字からもうかがえます。
デジタル貿易とは何か
デジタル貿易とは、インターネットなどのデジタル技術を通じて国境を越えて行われる取引全般を指します。モノだけでなく、サービスやデータ、コンテンツなども含む広い概念です。
- オンラインで完結するモノの売買(越境ECなど)
- クラウドサービスやソフトウエアといったデジタルサービスの提供
- ゲーム、音楽、動画、電子書籍などのデジタルコンテンツ配信
- オンライン教育や遠隔医療など、デジタルを介した各種サービス
中国では、こうしたデジタル貿易が国家経済発展と国際商取引の重要な構成要素になりつつあります。企業や消費者は、デジタル技術を活用することで、新しい商機やサービスモデルを生み出しやすくなっています。
中国と世界に広がるビジネスチャンス
デジタル貿易は、従来の貿易の前提だった「距離」や「物流コスト」といった制約を大きく和らげます。杭州での世界デジタル貿易博は、その最前線がどこまで進んでいるのかを示すショーケースでもありました。
企業にとってのメリット
デジタル貿易は、大企業だけでなく中小企業にも海外市場への扉を開きます。物理的な店舗や現地法人を持たなくても、オンラインプラットフォームを通じて世界中の顧客にアプローチできるからです。
- 初期投資を抑えつつ、新興市場を含む多様な市場にアクセスしやすい
- データ分析により、顧客ニーズをきめ細かく把握し、商品やサービスを素早く改善できる
- サプライチェーン(供給網)の可視化や自動化が進み、コスト削減とリスク管理に役立つ
- 金融、物流、コンサルティングなどサービス産業の国際展開がしやすくなる
消費者にも広がる選択肢
デジタル貿易は、生活者の選択肢も大きく広げています。スマートフォン一つで、国境を越えた商品やサービスにアクセスできる時代になりました。
- 世界中の商品・サービスを比較しながら購入・利用できる
- 競争の活性化により、価格やサービスの質が改善される可能性がある
- 自宅にいながら教育や医療、行政関連サービスを受けられる機会が増える
- 多言語対応や多様な決済手段など、技術の進歩が利用のハードルを下げている
同時に浮かび上がる課題
一方で、デジタル貿易の急速な拡大は新たな課題も生み出しています。利便性を高めながら、個人情報や企業データをどう守るのか。各国・地域で異なるルールをどう調整するのか。こうした点が大きなテーマになっています。
データ保護とルール作り
デジタル貿易では、取引そのものだけでなく、膨大なデータのやり取りが発生します。そこで次のような論点が避けて通れません。
- 個人情報や企業秘密を含むデータの保護と活用のバランス
- サイバー攻撃や不正アクセスへの備えと国際協力
- 国・地域ごとに異なるデジタル貿易関連規制の調整
- クロスボーダー取引に対する税制や監督の在り方
これらの課題は、いずれか一国だけで解決できるものではありません。各国・地域が連携し、透明性の高いルールを整えていくことが、デジタル経済の持続可能な成長にとって重要です。
デジタル格差と人材の問題
もう一つの大きな論点が、デジタル格差と人材育成です。高速通信環境やデジタルスキルを持つ人や企業と、そうでない人との間で格差が広がるリスクがあります。
- インフラ整備が進んでいない地域とそうでない地域の間のギャップ
- デジタルリテラシー教育の有無による世代間・地域間格差
- 中小企業や個人事業主がデジタル化に乗り遅れるリスク
デジタル貿易の恩恵を広く社会で共有するためには、教育や職業訓練を通じて人材育成を進めることが欠かせません。
政府・企業・社会の連携がカギ
杭州での世界デジタル貿易博のような場は、政府、企業、社会がそれぞれの立場から課題を持ち寄り、解決の方向性を探るプラットフォームにもなり得ます。持続可能なデジタル経済と国際貿易の繁栄には、次のような連携が求められます。
- 政府:デジタルインフラの整備、透明性の高いルール作り、国際的な協調の推進
- 企業:サイバーセキュリティやコンプライアンスへの投資、中小企業やスタートアップとの連携強化
- 大学・研究機関・市民社会:デジタルスキル教育の拡充、倫理やガバナンスに関する議論の深化
こうした協力が進むほど、デジタル貿易はより安全で、より多くの人に開かれた仕組みになっていきます。
日本の読者にとっての意味
今回の世界デジタル貿易博は、中国本土に限らず、アジア全体でデジタル経済が加速していることを示す出来事でもあります。日本企業にとっても、サプライチェーンやサービス、コンテンツビジネスを含め、デジタルを通じた新しい連携の可能性が広がっています。
- 自社の製品・サービスがデジタル貿易を通じてどの市場に届き得るかを考える
- デジタル貿易やデータ流通をめぐる国際的なルール作りの動きをフォローする
- 個人としても、デジタルスキルや国際感覚をアップデートし続ける
国境を越えて拡大するデジタル貿易は、すでに私たちの日常や仕事のあり方を大きく変えつつあります。杭州での世界デジタル貿易博は、その変化のスピードとスケールを象徴する出来事でした。今後も各国・地域の連携が進むかどうかが、デジタル経済の持続可能な成長と、より公平で開かれた国際貿易の実現を左右していきます。
Reference(s):
Digital trade expands beyond boundaries, generating opportunities
cgtn.com







