ADBチーフエコノミストが語る中国第15次5カ年計画とデジタル・グリーン成長 video poster
中国が2026~2030年を対象とする第15次5カ年計画の策定を進める中、アジア開発銀行(ADB)のチーフエコノミスト、アルバート・パーク氏が、中国経済の「これから」を独自の視点で語りました。キーワードは、高品質な成長、デジタル変革、そしてグリーンな転換です。
中国国際テレビ(CGTN)の関欣(Guan Xin)氏との単独インタビューで、パーク氏は、今後数年の中国の政策は単なる成長率の追求ではなく、「包摂的(インクルーシブ)で持続可能な高品質の発展」に重心を置くべきだと強調しました。
第15次5カ年計画が目指す「高品質な発展」とは
中国政府は近年、「新質生産力」や「高品質な発展」という言葉を繰り返し掲げています。パーク氏も、中国は成長だけでなく、包摂性や環境面を含む質の向上を重視する目標を明確に打ち出していると評価しました。
具体例として同氏が挙げたのが、電気自動車(EV)、再生可能エネルギー、人工知能(AI)といった分野です。これらは生産性向上の重要な牽引役となっており、第15次5カ年計画でも、中長期的な競争力を支える柱として位置づけられるとみられます。
同時に、中国が「開かれた経済」を維持することの重要性も強調しました。国際的なサプライチェーン(供給網)やグローバルな価値連鎖に参加することで、技術の移転や生産プロセスの改善が進み、国内の改革・イノベーションにも弾みがつくという見方です。
競争と制約の中で試される中国の比較優位
一方で、パーク氏は、他の主要経済による競争や制約が強まっている現状にも触れました。とくにハイテク分野では、中国の技術進歩を抑えようとする政策が数多く取られてきたと指摘します。そのなかで、中国が関連技術でより自立性を高めようとしていることは「理にかなっている」と述べました。
それでもADBとしては、多国間の貿易・投資を開かれた形で維持することが、世界全体、とくに貧しい国や地域により多くの機会をもたらすと考えています。パーク氏は、貿易摩擦や制裁の応酬が続けば「誰も得をしない。貿易戦争に勝者はいない」との見方を示しました。
こうした緊張が続くことを前提に、同氏は、中国が国内消費の拡大に力を入れることは、貿易不均衡を是正し、より持続可能な成長モデルに移行するうえで重要だとも指摘しました。外需だけに頼らず、内需を強化することで、外部環境の変化に左右されにくい経済構造をつくる狙いです。
気候変動とグリーン転換:世界にとっての意味
気候変動対策も、第15次5カ年計画の焦点の一つです。中国は2030年までに二酸化炭素排出のピークを実現する目標を掲げていますが、パーク氏は、これまでの排出削減の進展を評価し、「目標達成に向け順調に進んでいることは、世界にとって朗報だ」と語りました。
同氏は、排出量取引市場(カーボンマーケット)の拡大や炭素価格付けの仕組みづくりが、削減インセンティブを生み出し、グリーンファイナンス(環境配慮型の資金調達)を促すうえで重要になると説明しました。再生可能エネルギーや省エネ投資への資金の流れを太くすることで、経済成長と環境保護を両立させる構図です。
デジタル変革が支える「包摂的な成長」
パーク氏が特に力を込めたのが、デジタル化の役割です。ADBが分析した中国のデータによると、デジタル技術の導入が早く進んだ都市ほど所得の伸びが大きく、とくに低所得世帯での所得増加が顕著だったといいます。
これは、オンライン金融サービスや電子商取引、デジタル求人プラットフォームなどへのアクセスが、これまで取り残されがちだった人々の機会を広げていることを示すものです。パーク氏は「デジタルサービスへのアクセスは非常に包摂的で、貧困層の助けにもなっている」と評価しました。
そのうえで同氏は、政府にはデジタルインフラへのアクセスを保証する役割があり、医療や教育など社会的インパクトの大きい分野でAIを活用する技術の発展を後押しすべきだと述べました。都市と地方、富裕層と低所得層の間で「デジタル格差」を生まない設計が、今後のアジア全体の課題ともなりそうです。
データ保護と規制:イノベーションと安全のバランス
ただし、デジタル化やAIの急速な進展は、プライバシーやデータ安全性といった新たなリスクも伴います。パーク氏は、データ保護と規制の重要性を認めつつ、イノベーションを阻害しないよう「きめ細かいデータ・ガバナンス(統治)枠組み」が必要だと指摘しました。
各国は、技術革新と安全保障のバランスを取りながら、国境を越えるデータ流通やデジタル貿易を支えるルール作りを進める必要があります。パーク氏は、ADBがこうした分野で、地域全体の相互運用性と安全性を高めるための標準づくりを支援し得ると述べています。
2026~2030年の第15次5カ年計画は、こうしたデジタル経済とデータ・ガバナンスのあり方を具体化する重要な機会になります。中国の選択は、同国だけでなく、アジア全体のデジタル秩序にも影響を与えることになりそうです。
私たちが考えたい3つのポイント
今回のインタビューは、中国の経済運営だけでなく、アジアの将来像を考えるうえでも示唆に富んでいます。日本の読者として、次のような問いを自分ごととして捉えてみることもできそうです。
- GDP成長率だけでなく、「高品質な発展」を測るために、どのような指標やものさしが必要なのでしょうか。
- デジタル化の恩恵を、地方や中小企業、低所得層まで広げるために、どんな政策やビジネスの工夫が考えられるでしょうか。
- 安全保障や経済安全の議論が高まるなかで、開かれた貿易・投資とリスク管理をどのように両立させるべきでしょうか。
第15次5カ年計画が本格的に始まる2026年に向けて、中国の動きを追うことは、世界経済だけでなく、日本やアジアの将来戦略を考えるヒントにもなります。国際ニュースをウォッチしながら、自分なりの視点をアップデートしていきたいところです。
Reference(s):
ADB chief economist on China's path forward in 15th Five-Year Plan
cgtn.com








