習近平氏が描く中国「第15次5カ年計画」 技術と人を軸にした成長戦略
習近平氏が描く中国「第15次5カ年計画」
2026~2030年を対象とする中国の「第15次5カ年計画」の策定が進むなか、習近平国家主席がどのような方向性を示しているのか。本記事では、そのポイントを国際ニュースとして日本語で分かりやすく整理します。
70年以上続く「5カ年計画」、いまなぜ注目か
中国の5カ年計画は、1950年代から続く中長期の経済・社会発展の基本設計図です。現在策定が進む第15次5カ年計画は、2026~2030年の5年間を対象とし、中国の今後の発展方向を左右する重要な文書になります。
北京の人民大会堂で行われた中華人民共和国成立76周年記念のレセプションで、習近平国家主席は、第15次5カ年計画の目標や任務、戦略的措置をしっかりと計画し、着実に実行するよう呼びかけました。計画の実現を通じて、「社会主義現代化の基本的実現」に向けた決定的な前進を図ることが狙いだとしています。
第15次5カ年計画は、第14次・第15次・第16次という3つの5カ年計画を通じて、2035年までに社会主義現代化を基本的に実現するという、中国共産党第20回全国代表大会(2022年)で示された長期目標の中核に位置づけられています。
発展と安全を両立させる戦略的優先課題
習氏は今年、計画づくりに向けて各地で戦略的な指示を出してきました。4月に東部の上海を視察した際には、第15次5カ年計画期間における経済・社会発展をテーマにした座談会を主宰し、「自らのことをしっかりと行い、高水準の対外開放を揺るぎなく拡大していかなければならない」と強調しました。
同時に、変化する国際環境に適応し、中国の発展にとっての戦略的優先課題を的確に把握する必要性も指摘。「発展と安全の双方をより重視し、国内外のリスクと課題を総合的に評価すべきだ」と述べました。
7月30日には、中国共産党中央政治局会議を主宰し、第15次5カ年計画の提案などを審議する第20期中央委員会第4回全体会議(4中全会)を10月に開催することを決定しました。この会議では、新たな「発展理念」の全面的な実行、「安定の中で前進を求める」という基本方針の堅持、新たな発展パラダイム(発展の枠組み)の加速的な構築などが確認されています。
キーワード1:新質生産力と技術主導の成長
第15次5カ年計画で特に重視されるとみられているのが、「新質生産力」と呼ばれる新しいタイプの生産力です。これは、高度な技術、イノベーション、人材などを土台にした質の高い生産力であり、「高品質な成長」を支える原動力と位置づけられています。
上海の座談会で習氏は、2026~2030年に向けて、中国の発展は技術革新によってけん引され、その基盤には実体経済があると述べました。そのうえで、次のような方向性を打ち出しています。
- 伝統産業の構造転換と高度化を包括的に推進する
- 新興産業を積極的に育成・発展させる
- 将来の産業を見据えた先行投資を行い、現代的な産業体系の構築を加速する
また、国家全体のイノベーション体制を強化することも重要な課題とされています。具体的には、多様な主体のイノベーション意欲を高め、世界の科学技術の最前線に焦点を合わせること、基礎研究と独自の技術開発を継続的に強化し、重要な中核技術や先端技術で突破口を切り開くことが掲げられています。
こうした新質生産力を支える「基盤」と「戦略的な支え」として、教育・科学技術・人材を一体的に強化することも強調されました。北京の中国社会科学院・習近平経済思想研究センターの張弛副主任は、CGTNへの論評で、新質生産力の発展を戦略的優先事項と位置づけることで、中国の新たな成長エンジンと競争優位の方向性がより明確になると述べています。
キーワード2:人を中心にした政策づくり
第15次5カ年計画の策定では、「人民中心」のアプローチも打ち出されています。中国共産党は、重要な政策決定の前に、草の根レベルでの調査や意見聴取を行う伝統を持ちますが、今回もその姿勢が示されています。
5月20日から6月20日まで実施されたオンラインの意見募集キャンペーンでは、約311万件の提案が寄せられました。中国メディアグループ(CMG)の特設コーナーなどを通じて幅広い分野から意見が集まり、社会サービスからインフラ整備に至るまで、多様なテーマがカバーされたとされています。
寄せられた声の一例として、次のような提案が紹介されています。
- 事故防止のため、要介護の高齢者を見守るAIツールの活用を進めてほしい
- 身近に利用できる体育館やバドミントンコート、プールなどのコミュニティ施設をもっと整備してほしい
- 科学技術立国を支える人材を育てるため、科学の普及教育を一層重視してほしい
習氏はこのキャンペーンに関する指示の中で、市民から多くの貴重な意見や提案が寄せられたと評価し、関係部門に対して、第15次5カ年計画の策定にしっかりと反映するよう求めました。また、各級の党委員会と政府機関に対し、人々の生活をより深く理解し、その声に耳を傾け、より良い生活への期待に応えるよう、広く意見を集めることを呼びかけています。
2035年の「現代化」に向けたこれからの焦点
第15次5カ年計画は、2035年までの社会主義現代化の実現に向けた折り返し地点となる計画です。現在(2025年末時点)、中国は新質生産力の育成と、人を中心にした政策づくりという二つの柱を掲げながら、具体的な目標や施策の議論を進めています。
日本を含む周辺国や企業にとっても、中国の5カ年計画はサプライチェーンや技術協力、気候変動対策など、多くの分野に影響を与えうる重要な国際ニュースです。今後、計画の中身がさらに具体化していく中で、次のような点が注目されます。
- 新質生産力の育成が、どの産業分野でどのような形で進められるのか
- 教育・科学技術・人材戦略がどの程度一体的に推進されるのか
- 人々の意見を取り入れる仕組みが、政策の優先順位にどう反映されるのか
第15次5カ年計画の策定プロセスや中身を追いかけることは、中国経済の行方だけでなく、アジア・世界の構造変化を読み解くうえでも重要になっていきます。引き続き、その動向を丁寧にフォローしていく必要があるでしょう。
Reference(s):
President Xi Jinping charts course for China's 15th Five-Year Plan
cgtn.com








