自民党総裁に高市早苗氏就任へ 初の女性首相とアベノミクスの行方
与党・自民党の総裁選で高市早苗氏が新総裁に選出され、日本初の女性首相が誕生する見通しとなりました。アベノミクス路線を掲げる高市氏の経済政策は、日本経済と金融市場にどんな影響を与えるのでしょうか。
高市早苗氏とは アベノミクス継承を掲げる新リーダー
高市氏は神戸大学で経営学を学んだ後、政界入りした経済通の政治家です。故・安倍晋三元首相の側近として知られ、長年にわたりアベノミクスを支持してきました。
今回の総裁選でも、高市氏は次のようなスタンスをはっきり示しています。
- 物価高で圧迫される生活を下支えするための歳出拡大
- 家計の負担軽減を狙った減税
- 日銀による利上げに対する批判的な姿勢
アベノミクスは、積極的な財政出動と大胆な金融緩和でデフレからの脱却を目指した一連の政策を指します。高市氏はこの路線を基本的に引き継ぎつつ、「責任ある積極財政」を掲げている点が特徴です。
日銀との距離感 金融政策への「政治介入」はあるか
野村総合研究所(Nomura Research Institute)のエグゼクティブ・エコノミスト、タカヒデ・キウチ氏は、高市氏のスタンスについて「政府が金融政策の大きな方向性を決めるべきだとする、伝統的なリフレ派の考え方に立っている」と分析します。
そのうえで、次のようなリスクを指摘します。
- 政府が日銀の政策運営に影響を及ぼそうとする可能性がある
- 市場で10月の利上げがかなり織り込まれている中でも、日銀が利上げを先送りする展開もあり得る
- 理由は、もし利上げがうまくいかなければ、かえって政治からの介入を招きかねないため
日本銀行の独立性は、日本の金融政策運営の大きな柱です。一方で、物価や賃金の動きが生活実感と直結するなか、政治側が日銀に対してどこまでメッセージを出すのかは、今後の重要な注目点になります。
成長分野への投資 半導体・AI・宇宙・防衛がキーワード
りそなホールディングス(Resona Holdings)のストラテジスト、ヒロキ・タケイ氏は、高市氏の経済政策の焦点として「成長重視」を挙げています。具体的には、次のような分野が恩恵を受ける可能性があるとみています。
- 半導体関連
- 人工知能(AI)
- 宇宙関連産業
- 防衛力の強化
- インフラや防災を含む国土強靱化
高市氏が自民党初の女性総裁となったこと自体も、「変化」を象徴するサインとして投資家に受け止められる可能性があります。タケイ氏は、もし構造改革への期待から海外の投資家が日本株を現物で買い進めれば、株式市場は中長期的に緩やかな上昇トレンドに入る余地があると指摘します。
ただし、短期資金が先物取引を中心に株価を押し上げるだけの相場になれば、反動も大きくなりやすいとし、「相場の質」を見極める必要があるとも警告しています。
「責任ある積極財政」と財政健全化の両立は可能か
日本総合研究所(The Japan Research Institute)のチーフエコノミスト、トモヒサ・イシカワ氏が注目するのは、高市氏が掲げる「責任ある積極財政」というキーワードです。
イシカワ氏は、この方針が次の二つを同時に達成できるのかどうかを問いかけます。
- 日本経済の成長力の底上げ
- 膨らんだ財政赤字の改善(財政健全化)
これまでよりも財政健全化への配慮が強まることに期待を示しつつも、高市氏が赤字国債の発行も選択肢だと述べている点を踏まえ、「アベノミクスの延長線上にある財政拡張リスクには引き続き注意が必要」と指摘します。
また、財政拡張が続くほど、日銀にとっては利上げが難しくなる面もあるとみています。
一方で、イシカワ氏は次のような条件が満たされれば、市場への影響はプラスに働き得ると評価します。
- 財政支出が単なるばらまきではなく、高成長が見込める分野に重点配分されること
- その結果として、株価が押し上げられつつ、過度な円安を招かないバランスが保たれること
家計と投資家が押さえたい三つの視点
高市政権が本格始動すれば、家計と投資家は何に注目すべきでしょうか。現時点で見えているポイントを三つに整理します。
1. 生活コストと税負担の行方
高市氏は、物価高への対応として歳出拡大と減税の両方を示唆しています。短期的には家計の負担軽減が期待できる一方、中長期的には財政の持続可能性や将来の増税リスクも視野に入れる必要があります。
2. 日銀との関係と金利・為替
政府と日銀の距離感は、金利の水準だけでなく円相場にも影響します。日銀が予定している利上げのタイミングやペースがどう変化するのか、それに対して市場がどう反応するのかは、住宅ローンや企業の資金調達コストにも跳ね返ります。
3. 成長分野への資金配分
半導体、AI、宇宙、防衛、国土強靱化などに重点投資が行われれば、日本経済全体の成長力向上が期待されます。ただし、どの分野にどの程度の規模と期間で予算がつくのかは、今後の政策パッケージを見ないと判断できません。
個人投資家にとっては、「どのテーマが一時的なブームで、どれが中長期の成長ストーリーなのか」を見極める目が問われる局面になりそうです。
これからの日本経済をどう見るか
高市氏の掲げるアベノミクス継承路線と積極財政は、短期的には景気と市場を下支えする効果を持つ一方で、財政や金融政策の自由度を削りかねない側面もあります。
日本経済の持続的な成長には、財政・金融だけでなく、労働市場改革や規制緩和、デジタル化といった構造改革も欠かせません。新政権がどこまで「成長戦略」に踏み込めるかが、日本の将来を左右する重要なポイントになります。
初の女性首相となる見通しの高市氏のもとで、日本経済はどのような針路を取るのか。今後発表される内閣人事や最初の経済対策、そして日銀との対話の中身を冷静に見ていくことが求められます。
Reference(s):
Japan ruling party picks Takaichi as new leader, 'Abenomics' in focus
cgtn.com








