中国第14次五カ年計画の最終年 対外開放はどう経済を押し上げたか
2025年は、中国の第14次五カ年計画(2021〜2025年)の最終年です。この計画で掲げられた大きな柱の一つが、より広く、より深く、より包括的な「対外開放」を進め、高度な開放型経済システムを築くことでした。
中国の対外開放は、自国の成長を支えるだけでなく、アジアや世界経済全体にどのような影響を与えているのでしょうか。本記事では、国際ニュースとして注目される主な政策と、その意味を整理します。
第14次五カ年計画のゴールと「ハイレベルな開放」
2025年7月、中国商務部は第14次五カ年計画の進捗に関する記者会見を開き、王文涛商務部長が過去数年の成果を説明しました。王部長は、中国が「ハイレベルな対外開放」のペースを加速させ、互恵的な協力の枠組みを広げてきたと強調しました。
第14次五カ年計画では、開放の質を高めることが明確な目標として示されています。単に市場を開くだけでなく、制度やルールの面でも国際基準と整合的な仕組みを整えることが重視されています。
投資ネガティブリスト縮小と製造業全面開放
開放政策の象徴的な取り組みが、「ネガティブリスト」の縮小です。ネガティブリストとは、外国企業の投資が制限される分野の一覧を指し、リストにない分野は原則自由に投資できるという仕組みです。
ここ数年で、このリストは段階的に短くなり、2025年1月時点では対象分野が93から29へと大幅に削減されました。これは、より多くの分野で外国企業の参入が可能になったことを意味します。
さらに、中国は2024年11月1日に製造業分野へのアクセス制限をすべて撤廃し、製造業を完全に開放しました。自動車や機械、ハイテク製品など、幅広い製造業で海外企業がより自由に活動できる環境が整いつつあります。
サービス産業のパイロット開放:通信からバイオまで
製造業に加えて、通信やインターネット、教育、文化、医療といったサービス分野でも、段階的な開放が進んでいます。
とくに注目されるのが、付加価値通信サービスのパイロット開放です。中国は2024年10月、北京、上海、海南、深圳で外国企業の参入を拡大する試行プログラムを開始しました。2025年3月までに、すでに13社の海外企業がこの分野での事業許可を得ています。
中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した際、10ある付加価値通信サービスのうち4分野の開放を約束していましたが、現在は自主的に8分野へと拡大しています。デジタル経済の拡大とともに、通信やインターネット関連サービスへのアクセス拡大は、海外のIT企業にとっても重要な意味を持ちます。
ビジネス環境の改善:外資への「同等待遇」を強化
投資規制の緩和と並行して、中国は外国企業に対するビジネス環境の改善にも力を入れています。その柱となっているのが、2019年に施行された外商投資法です。
外商投資法は、知的財産権の保護を強化し、外資系企業に対する「国民待遇(国内企業と同じ扱い)」の徹底を掲げています。これにより、外国企業が中国市場で事業を行う際のルールの透明性や公平性を高める狙いがあります。
商務部によると、2024年には外資系企業との円卓会議を15回開催し、370件以上の課題を解決したとされています。現場の声を聞きながら制度運用を調整することで、ビジネス環境の細部を整えていることがうかがえます。
また、家電や自動車、電子機器などを買い替える際に補助を行う「以旧換新(トレードイン)」政策も進められています。この政策は国内企業だけでなく海外ブランドにも公平に適用され、多くの外国人居住者も補助の対象となっています。消費の底上げと企業支援を同時に図る取り組みです。
RCEPとアフリカ:国際ルールに沿った制度開放
中国の開放政策は、国内の投資規制だけでなく、国際貿易ルールとの整合性を高める「制度的開放」にも広がっています。その代表例が、地域的な包括的経済連携(RCEP)です。
中国は2020年11月にRCEPに署名し、協定は2022年1月に発効しました。RCEPの中で中国は最大の経済規模を持つメンバーであり、その実施において重要な役割を果たしています。
RCEPの枠組みの下で、中国はシンガポール企業に対して平均92%の関税削減を提供し、日本の工業製品についても86%の品目で段階的な関税撤廃を約束しています。日本企業にとっても、市場アクセス改善という形で関心の高いポイントと言えるでしょう。
また、中国はASEAN諸国に対して農産品市場を開放し、今後5年間で1500億ドル相当の農産物を輸入する計画を示しています。投資面では、2023年のRCEPメンバーへの対外直接投資(非金融)が前年より26%増加し、世界全体の投資成長を上回る伸びとなりました。
さらに、中国は2025年7月、外交関係を有する53のアフリカ諸国から輸入する全ての品目に対して、全関税ラインでゼロ関税を適用すると発表しました。これは、主要な発展途上国であり、かつ主要な経済大国として初めての試みとされています。
第15次五カ年計画に向けて:何が注目ポイントか
中国の指導部は、たびたび「中国は決して対外開放のドアを閉ざさない」と述べ、開かれた中国が不確実性の高い世界経済に活力を与え、各国に新たな機会を生むと強調しています。
2026〜2030年の第15次五カ年計画の議論が進む中で、中国は次のような方向性を掲げています。
- 市場アクセスのさらなる拡大:どの分野で規制緩和を進めるか
- 国際ルールとの一体化:RCEPなどを通じた通商ルールの整合性強化
- 新興分野での協力:デジタル、バイオなど先端分野における協力枠組み
こうした流れは、中国の現代化を支えるだけでなく、アジアやアフリカを含む世界の経済成長とも密接に結びついています。日本を含む各国の企業や投資家にとっても、中国の開放戦略がどの分野でどの程度進むのかを丁寧に見極めることが、今後のビジネス戦略を考える上で重要になりそうです。
第14次五カ年計画の最終年を迎え、中国は「高水準の対外開放」を次の五年間へどのようにつなげていくのか。その歩みは、今後も国際ニュースとして注視すべきテーマと言えるでしょう。
Reference(s):
China's 14th Five-Year Plan: How opening up boosts the economy
cgtn.com








