MEET CHINAが映す中国の今 デジタル経済と地方創生 video poster
デジタル経済、先端科学、スマート農業、そして文化と観光を軸にした「ビューティー経済」。シリーズ番組「MEET CHINA」のエピソード46は、いま中国各地で進むこうした変化を一つの物語として映し出しています。本記事では、その内容を日本語でかみくだきながら、2025年の中国社会のトレンドとして読み解きます。
ライブ配信が「仕事」になる:中国のデジタル経済最前線
エピソードの冒頭では、ライブコマース(ライブ配信とネット通販を組み合わせた手法)が生み出す新しい働き方に焦点が当てられています。カメラと照明、スマートフォンさえあれば、若い人たちが全国の視聴者に向けて商品を紹介し、その場で販売できる時代になりました。
番組が強調するのは、単なる売上の伸びではなく「質の高い雇用」がどれだけ生まれているかという点です。デジタルプラットフォームを通じて、これまで選択肢が限られていた地域の若者も、時間や場所にしばられない職を得やすくなっています。
外国人記者が現場を取材し、こうしたデジタル職業が次のような変化をもたらしていると伝えています。
- 通勤不要の柔軟な働き方が広がりつつあること
- カメラの前に立つ人だけでなく、撮影や編集、運営など多様な職種が生まれていること
- 地方に住む若者でも、全国規模の市場につながれること
数字だけでは見えにくい「働き方の選択肢」が広がっている様子は、日本の読者にとっても、自国のデジタル経済を見直すヒントになりそうです。
SFが現実に:空中に浮かぶインタラクティブ・ホログラム
次に紹介されるのは、物理学者・韓東澄(Han Dongcheng)氏の挑戦です。中国科学技術大学で光学を研究してきた彼は、「空中に映像が浮かび、触れるように操作できる」インタラクティブなホログラム技術を実用化しました。
スタート地点は、大学図書館の片隅に設けた小さな「作業スペース」でした。そこから研究チームを率い、空中映像技術を発展させ、いまでは世界トップクラスの仕様を持ち、量産も可能な製品へと育て上げています。
映画の中だけの存在だった「宙に浮かぶディスプレー」は、いまや現実のものとなり、触れることなく操作できるインターフェースとして活用が広がりつつあります。衛生面に配慮した操作が求められる場や、演出効果が重視される展示空間など、応用範囲は広そうです。
理科系の研究が、そのまま新しい産業と雇用につながっていくプロセスを追うことで、番組はイノベーションの裏側にある地道な積み重ねも浮き彫りにしています。
羊の顔をAIが識別:上海・崇明区のハイテク牧羊
三つ目のテーマは、伝統的な畜産と最新技術の組み合わせです。上海市の崇明区では、古くから続く羊の飼育に、顔認識などのデジタル技術が導入されています。
羊一頭一頭の顔を識別し、健康状態や成長の記録をデータとして管理することで、飼育の効率と品質の両方を高めようという取り組みです。ヤギの繁殖についても、科学的な知見に基づく高度な方法が採り入れられています。
こうした「スマート畜産」は、単に作業を楽にするだけでなく、農業や畜産を持続可能な産業としてアップグレードする試みでもあります。中国の農村地域にとって、技術と伝統を両立させながら質の高い成長を目指す一つのモデルといえるでしょう。
浙江省・徳清県 「ビューティー経済」で進む農村振興
最後の舞台は、中国東部・浙江省の徳清県です。ここでは自然環境と文化資源を生かした「ビューティー経済」が、農村の活性化を支えています。
番組が伝えるのは、たとえば次のような取り組みです。
- 漢服(中国の伝統衣装)の工房が村にでき、住民が職人やスタッフとして働けるようになったこと
- かつて人がほとんど住んでいなかった「空き村」が、高付加価値の民宿エリアとして生まれ変わっていること
- 自然の景観と文化体験を組み合わせた観光が、新しい収入源になっていること
ただ観光客を増やすのではなく、地域の文化や景観そのものに価値を見いだし、住民の生活の質も高める――。徳清県の事例は、地方創生が課題となっている多くの国や地域にとって、参考になる視点を提供しています。
共通するキーワードは「伝統を壊さず、更新する」
エピソード46に登場する四つの物語は、分野も地域も異なります。しかし、そこには共通するメッセージが見えてきます。それは、伝統や既存の産業を否定するのではなく、テクノロジーや新しい発想を通じて「更新」していくという姿勢です。
ライブコマースは、商いの形を変えつつも「人と人とのやり取り」をオンラインで拡張しています。ホログラム技術は、未来的なインターフェースでありながら、人が情報に触れる体験そのものを豊かにします。スマート畜産とビューティー経済は、長く受け継がれてきた農業や村の暮らしに、新たな価値を重ねています。
日本に暮らす私たちにとっても、次のような問いを投げかけてくれる内容ではないでしょうか。
- 「良い仕事」とは、収入だけでなく何で測るべきか
- テクノロジーは、地域の文化や自然とどう共存しうるのか
- 地方を元気にするために、どの資源に光を当てるべきか
国際ニュースを日本語で追うことは、単に海外の出来事を知るだけでなく、自分たちの社会を見つめ直す鏡にもなります。中国の各地で進むこうした試みを、2025年のアジア全体の文脈の中でどう位置づけるか。読者一人ひとりの視点が試されています。
Reference(s):
cgtn.com








