米政府閉鎖3週目、連邦判事がトランプ政権の大量解雇計画を差し止め
米連邦政府の一部閉鎖(政府閉鎖)が3週目に入り、職員の給与や生活への不安が高まるなか、連邦裁判所がトランプ政権による大量解雇計画を差し止めました。航空、観光、住宅、食料支援まで影響が広がっており、米経済全体へのリスクが意識されています。
連邦判事が大量解雇を一時差し止め「政治的動機の疑い」
カリフォルニア州の連邦地裁判事スーザン・イルストン氏は水曜日、政府閉鎖中に数千人規模の連邦職員をレイオフ(解雇)しようとしたトランプ政権の計画を差し止める判断を示しました。
判事は、政権側が人員削減に必要な法的手続きを踏んでおらず、担当当局が権限を超えていると指摘しました。また、ドナルド・トランプ大統領、副大統領のJD・バンス氏、予算局長ラッセル・ヴォート氏らの発言を引用し、この解雇計画が民主党側を不当に狙い撃ちしたものだと見なされかねない、と懸念を示しています。
今回の判断は暫定的な差し止めですが、「政治的動機に基づく解雇ではないか」という視点から、今後の訴訟と政権の対応に大きな制約を与える可能性があります。
政府閉鎖3週目、現場で起きていること
今回の米政府閉鎖は、すでに3週目に突入しています。政府閉鎖とは、議会で予算が成立せず、一部の政府機関が業務や支払いを大幅に縮小せざるを得ない状態を指します。
報道によると、現在は次のような影響が顕在化しています。
- 1万3,000人以上の管制官が、満額ではない給与で勤務を続けている
- 5万人規模の運輸保安局(TSA)職員も、同様に部分的な給与しか受け取れていない
- 対立が続けば、今月後半の支給では給与がまったく支払われない可能性もある
こうした状況から、病欠連絡が増え、全米で数千便規模のフライト遅延が発生しているとされています。航空業界団体は、安全運航に支障が出かねないと警戒感を強めています。
米航空業界団体「エアラインズ・フォー・アメリカ」のクリス・スヌヌCEOは、インタビューで「本当に厳しくなるのは、おそらく今から1週間半ほど先、最初の『給与ゼロ』の明細が届くときだ」と述べ、3週間を超える政府閉鎖が航空システム全体に深刻な負担を与えると警告しました。
観光と住宅市場にも広がる「じわじわ型」の影響
影響は航空だけではありません。首都ワシントンでは、博物館や動物園、主要な観光施設の閉鎖が相次ぎ、訪れた観光客の予定が大きく狂っています。観光業界にとって、書き入れ時のシーズンに打撃となりかねません。
住宅市場にも不透明感が広がっています。不動産サービス大手レッドフィンの分析によると、アメリカ人の17%が、住宅や自動車などの大きな買い物を延期しているといいます。先行きへの不安が、消費マインドを冷やしている格好です。
レッドフィンのチーフエコノミスト、ダリル・フェアウェザー氏は、政府閉鎖の長期化で住宅購入を見送る人が増えることで賃貸市場の需要が高まり、「賃貸住宅の家賃が上昇する可能性がある」と指摘する一方、「家計の負担増という意味で、住まいの『手ごろさ』が失われていくことも問題だ」と話しています。
食料支援にも危機、約700万人がリスクに直面
さらに深刻なのが、低所得層を支える食料支援への影響です。女性・乳幼児向けの栄養補助を行う「WIC(女性・乳児・子ども向け特別栄養補助プログラム)」に頼る約700万人が、政府閉鎖の長期化により支援の打ち切りリスクに直面しているとされています。
現場のフードバンク(食料配布団体)では、最近になって初めて利用する人が目に見えて増えているといいます。給与の遅れや将来への不安が、これまで自力で生活を維持してきた人たちをも支援の現場へと押し出している構図です。
米経済への損失は1日150億ドル規模に
財務長官のスコット・ベッセント氏は、水曜日の発言で政府閉鎖による経済的損失が「1日あたり約150億ドル」に上るとの試算を示しました。これは単なる一時的な停滞ではなく、「米経済の筋肉を削り取り始めている」とまで表現し、議会に対し早期の合意を強く求めました。
この「1日150億ドル」という数字は、個人消費の減速、観光や航空の落ち込み、行政サービス停止による民間活動の遅延など、複数の要因が積み重なった結果とみられます。閉鎖が長引けば、企業や家計のマインド悪化を通じて、より広範な景気の冷え込みにつながる可能性があります。
何が今後のカギになるのか
今回のニュースから、今後の焦点として次のようなポイントが見えてきます。
- 司法判断の行方:連邦判事による差し止め決定が最終的にどう確定するのか。政治的動機が疑われる解雇計画に対し、司法がどこまで歯止めをかけるのかが問われます。
- 給与支給の「ゼロ明細」前に合意できるか:航空業界が警告するように、最初の給与ゼロが現実になれば、職場離脱やサービス低下が一気に加速するリスクがあります。その前に、政権と議会が妥協点を見いだせるかが重要です。
- 生活支援策の継続性:WICをはじめとする食料支援や、低所得層向けの安全網をどこまで維持できるのか。最も弱い立場にある人たちへの影響をどう抑えるかが問われています。
政府閉鎖は、ときに「政治の駆け引き」として語られがちですが、実際には、空港の職員や観光業者、住宅購入を考える家族、そして食卓を守ろうとする人々の、きわめて日常的な暮らしを直撃します。米国の政治的な対立の先にあるのは、数字だけでは測れない生活の変化であり、その波紋は世界経済や国際市場にもじわじわと伝わっていく可能性があります。
日本を含む海外の投資家や企業にとっても、米政府閉鎖の長期化は、為替や株式市場、サプライチェーンに影響し得るテーマです。ニュースを追う際には、「政府と議会の力比べ」だけでなく、その背後にある生活と経済の変化にも目を向けておくことが、これからの判断材料になりそうです。
Reference(s):
Judge blocks Trump's layoff plan as U.S. shutdown enters third week
cgtn.com








