国際ニュース トランプ新関税で米消費者が負担増
トランプ米大統領による新たな関税で、最も大きな負担を強いられているのは誰なのか。ゴールドマン・サックスなどの最新分析によると、その多くを米国の消費者が肩代わりしている可能性が高いとされています。本記事では、数字の内訳と物価への影響を、日本語で分かりやすく整理します。
家具・木材への新関税、負担の中心は消費者
今週火曜日に発動された家具や木材への新たな関税をめぐり、米金融大手ゴールドマン・サックスは、2025年末までに関税コストの過半を米国の消費者が負担すると試算しています。
同社の分析によると、今年末(2025年末)時点での負担割合は次の通りです。
- 米国の消費者:55%
- 米国内の企業:22%
- 海外の輸出企業:18%
- 関税回避(迂回輸入など):約5%
本来、関税は輸入品に課される税金ですが、そのコストは輸出側の企業だけでなく、輸入企業のマージン(利益)や最終的な販売価格を通じて、消費者の家計にも波及します。今回の分析は、米国の家計がすでにその「しわ寄せ」の中心に立たされていることを示しています。
来年末には消費者負担が7割に達する可能性
ゴールドマン・サックスは、2026年末(来年末)には消費者の負担割合が最大70%に達する可能性があるとも指摘しています。企業が当初は利益を削ってコストを吸収しようとしても、長期化すれば販売価格への転嫁が進み、結果として消費者価格の上昇につながる、という見立てです。
関税コストの負担構造が変化すれば、米国のインフレ動向や金利政策にも影響し、それが世界の金融市場や為替レートを通じて日本にも波及する可能性があります。
物価指標「コアPCE」への影響
ゴールドマン・サックスは、関税が米国の物価に与える具体的な影響も試算しています。分析によれば、関税の影響だけで、すでに米国のコアPCE価格指数(食品とエネルギーを除く個人消費支出デフレーター)の水準を0.2ポイント押し上げたとしています。
さらに同社は、2025年7月にかけて追加で0.16ポイント、その後8〜12月にかけてさらに0.5ポイント分の押し上げ効果が出ると見込んでいます。関税の影響を除いた基調的なインフレ率を2.4%と仮定した場合、2025年12月時点のコアPCEの前年比は3.2%に達するとの見通しです。
コアPCEは米連邦準備制度理事会(FRB)が重視する物価指標であり、この数値が高止まりすれば、金融政策の引き締めや高金利の長期化要因になり得ます。関税政策が、単なる貿易の問題にとどまらず、マクロ経済全体に波紋を広げていることが分かります。
「誰が関税を食べているのか」価格データが示すもの
実際の価格はどう動いているのでしょうか。ハーバード大学のアルベルト・カバロ教授らの研究チームは、米国の大手オンライン小売や実店舗で販売されるカーペットからコーヒーまで、35万9,148点の商品価格を追跡しています。
このデータによると、トランプ米大統領が3月初めに関税を課し始めて以降、輸入品の価格は平均で4%上昇しました。一方、米国内で生産される類似の国産品も約2%値上がりしており、関税が国内市場全体の価格にじわじわと影響している様子が浮かび上がります。
とくに、米国では代替生産が難しいコーヒーのような品目や、高い関税の対象となっているトルコなどからの輸入品で、値上がり幅が大きくなっています。ただし、価格の上昇幅は関税率そのものより小さいケースが多く、売り手側が一部コストを吸収していることも示唆されます。
海外企業はどこまで負担しているのか
一方で、米国の輸入統計(関税を含まない輸入価格)を見ると、海外の輸出企業は自国通貨に対するドル安を補うため、ドル建ての価格を引き上げる動きも見られます。これは、海外の生産者が関税を大きく吸収しているわけではなく、その一部を米国側の輸入企業や消費者に転嫁している可能性を示します。
イェール大学のシンクタンク「Budget Lab」の研究者は、ブログで、外国企業は米国の関税をほとんど吸収していないか、吸収してもごく一部にとどまっていると指摘しており、従来の経済研究とも整合的だとしています。
企業 vs. 消費者 負担の「我慢比べ」
カバロ教授は、自身の研究結果について「現時点ではコストの多くを米企業が負担しているが、徐々に消費者価格への転嫁が進み、物価には明確な上昇圧力がかかっている」と述べています。
つまり、短期的には企業が利益率を削ることで関税のショックを吸収しようとしますが、その状態が長く続けばビジネスモデルが維持できなくなり、最終的には価格引き上げという形で消費者の負担へと移っていく、という構図です。ゴールドマン・サックスの「来年末には消費者負担が7割」という試算は、こうしたメカニズムを反映した数字だと見ることができます。
日本の読者にとっての意味合い
一見すると米国内の問題に見える今回の関税ですが、日本にとっても無関係ではありません。米国のインフレが高止まりすれば、FRBの金融政策を通じて世界の金利水準やドル円相場に影響し、日本企業の輸出採算や投資計画にも揺さぶりをかける可能性があります。
今回の分析から、日本の読者が押さえておきたいポイントは次の通りです。
- 関税は「他国いじめ」ではなく、最終的に自国の消費者・企業にも跳ね返る政策であること
- 短期的には企業が負担しても、長期的には消費者物価の上昇につながりやすいこと
- 米国の物価と金利の動きは、日本の為替・株式市場や景気にも影響し得ること
関税が誰の負担になるのかという問いは、単なる米国内政の話を超え、グローバル経済の構造や、自国の生活への波及を考えるうえでも重要なテーマです。数字の裏側で何が起きているのかを読み解く視点は、これからの国際ニュースをフォローするうえで欠かせないものと言えます。
Reference(s):
U.S. consumers bearing brunt of Trump's new tariffs: analysis
cgtn.com








