金融が新質生産力を後押し 清華大学Tian Xuan氏の視点 video poster
金融は、科学技術イノベーションや新質生産力をどこまで後押しできるのか――。中国の清華大学の研究者が語ったこの国際ニュースは、アジアや日本の金融・経済の未来を考えるうえでも注目に値します。
清華大学・Tian Xuan氏「金融はイノベーションの推進力に」
清華大学の国家金融研究院(National Institute of Financial Research)の院長を務めるTian Xuan氏は、中国のニュースチャンネルCGTNのインタビューで、金融は科学技術イノベーションをより強く支えるべきだと述べました。
そのための具体的な方向性として、Tian氏は次の三つを挙げています。
- 直接金融を拡大すること
- 長期的な視点を持つ「忍耐強い資本」を育てること
- 民営企業と新質生産力を支える市場メカニズムを整えること
これは、中国経済だけでなく、世界の金融システムがイノベーションとどう向き合うべきかを示すメッセージとも受け取れます。
ポイント1:直接金融を拡大する意味
Tian氏が強調した「直接金融」とは、企業が銀行融資だけに頼らず、株式や社債の発行などを通じて、投資家から直接資金を調達する仕組みを指します。
科学技術イノベーションやスタートアップ企業は、リスクが高い一方で、成功すれば大きな成長が期待されます。そのようなリスクとリターンを分かち合うには、投資家が企業の成長を長期的に支える直接金融の役割が重要になります。
直接金融が発達すれば、銀行の貸し出しだけではカバーしきれない研究開発や新産業への資金供給がしやすくなり、新しいビジネスの芽を増やすことにつながります。
ポイント2:イノベーションを支える「忍耐強い資本」
Tian氏はまた、科学技術イノベーションを支えるには「忍耐強い資本(patient capital)」が必要だと指摘しました。これは、短期的な利益よりも中長期の成長を重視し、時間をかけて企業の価値向上を待つ資本を意味します。
とくに先端技術や新産業の分野では、研究開発に長い年月と多額の資金が必要です。成果が見えるまで時間がかかるため、すぐに利益を求める資本だけでは、企業が挑戦を続けることが難しくなります。
忍耐強い資本が十分に存在すれば、企業は短期的な業績に追われにくくなり、長期目線で大胆な技術投資や人材育成に踏み出しやすくなります。
ポイント3:市場メカニズムで民営企業と新質生産力を支える
Tian氏が挙げた三つ目の柱は、市場メカニズムの改善を通じて民営企業と新質生産力を支えることです。ここでいう新質生産力(new quality productive forces)とは、先端技術やデジタルインフラ、人材などを組み合わせ、高い生産性と付加価値を生み出す新しいタイプの生産力を指す概念です。
新質生産力を担う企業の多くは、イノベーション志向の強い民営企業です。こうした企業が成長しやすい環境を整えるには、資金調達や投資回収のルールが透明で、公平に機能する市場メカニズムが欠かせません。
例えば、健全な評価と価格形成が行われる資本市場や、失敗しても再挑戦しやすい制度設計などがあれば、民営企業はより積極的に新技術や新事業に取り組むことができます。Tian氏の提案は、こうした環境づくりの重要性を示唆しています。
日本やアジアの読者への示唆
今回の発言は中国の金融とイノベーションに関するものですが、その問題意識は日本やアジアの国々にも共通するものです。スタートアップ支援やデジタル産業の育成を掲げる地域では、資金の「量」だけでなく「質」も問われています。
読み手である私たちにとっても、次のような問いかけにつながります。
- 自国の金融システムは、科学技術イノベーションを十分に後押しできているか
- 短期志向ではなく、忍耐強い資本を育てる仕組みはあるか
- 民間の創意工夫と新質生産力を伸ばす市場メカニズムは整っているか
国際ニュースを日本語で読み解くことで、私たち自身の社会や経済のあり方を静かに見直すきっかけにもなります。SNSで意見を交わしながら、「金融とイノベーションの関係をどう設計するべきか」を周囲と共有してみるのも一つの方法かもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








