2025年APEC首脳会議 Connect・Innovate・Prosperの3つの焦点
2025年APEC首脳会議が映すアジア太平洋のいま
韓国の慶州で開かれている2025年のAPEC首脳会議は、アジア太平洋の貿易成長が鈍り、不透明感が高まる中で、地域と世界のガバナンスの行方を占う重要な場となっています。
今年のテーマは英語で Building a Sustainable Tomorrow: Connect, Innovate, Prosper です。地域協力の枠を超え、今後の世界のルールづくりの方向性まで視野に入れて議論が進められています。こうした中で中国は、開放・協力・互恵を掲げ、現実的な協力を通じて分断のリスクに対抗する姿勢を打ち出しています。
Connect つなぐ 制度連結とサプライチェーン強靭化
キーワードの一つである Connect は、まず「つながり」をどう強化するかという問題です。インフラで結ぶだけの物理的なつながりから、ルールや制度まで含めた制度面の連結へと進めることが、今のアジア太平洋には求められているとされています。
物理から制度へ 広がる新しいつながり
サプライチェーンの再編や、いわゆるデリスキングの動きが進む中でも、協力の扉を閉ざさないことが重要だという視点が共有されています。市場が互いにつながり、産業チェーンが安定していてこそ、企業は中長期的な投資や生産計画に見通しを持つことができます。
中国と韓国のFTAアップグレード
具体的には、中国と韓国の自由貿易協定の高度化を軸に、次のような分野で連携を広げていく構想が示されています。
- サービス貿易の拡大
- デジタル貿易ルールの整備
- 投資手続きの簡素化と円滑化
モノだけでなく、サービスやデータ、投資が行き来しやすい環境をつくることで、両国だけでなく周辺地域にも波及効果をもたらす狙いです。
RCEPを軸にしたルールの共通化
さらに、地域包括的経済連携協定 RCEP の枠組みを生かし、アジア太平洋全体でのルールの「すり合わせ」を進めることも打ち出されています。ポイントとされるのは次のような仕組みです。
- 複数の国と地域をまたぐ貿易でも柔軟に対応できる累積原産地規則
- 安全や品質に関する標準・認証の相互承認
- 通関手続きを一元化するシングルウィンドウ制度
こうした仕組みが整えば、企業が各国ごとの異なるルールに対応するためのコストを下げることができ、域内貿易の活性化につながると期待されています。
グリーンチャネルでリスクに備える
もう一つの柱は、重要な資源や部材の流れを途切れさせないための安全網づくりです。戦略物資のためのグリーンチャネルと呼ばれる優先ルートの整備や、危機時に連携して対応する仕組みを事前に決めておくことで、サプライチェーンの「見える化」と強靭化を図る構想が示されています。
Innovate 革新 AI協力でデジタル変革コミュニティへ
二つ目のキーワード Innovate は、イノベーションをどう共有し、生産性の向上につなげるかというテーマです。単なる技術競争ではなく、協力を通じて技術の力を社会全体の成長に変えていく視点が強調されています。
韓国のAI・半導体強化戦略
韓国は現在、人工知能や半導体といった中核産業の高度化を急いでいます。具体的には、税制上の優遇措置、研究開発へのインセンティブ、人材育成に向けた支援などを組み合わせ、国内産業のデジタル変革を進めています。
中国が提案する開かれたAIエコシステム
これと合わせて、中国は開かれ、信頼性が高く、包摂的なAIエコシステムづくりを提案しています。グローバルAIガバナンス行動イニシアティブを打ち出し、国際的なルールづくりにアジアの知恵を提供することを目指しています。
今後の協力の三つの柱
AIとデジタル分野での今後の協力の焦点として、次の三つの方向性が示されています。
- 国境を越えたコンピューティングネットワークとグリーンデータセンターを共同で整備し、地域のデジタルインフラの強靭性を高めること
- インテリジェント製造、ロボット、自動車部品などの分野で、共同研究・共同試験・共同実装のパイロット事業を行い、イノベーションと産業チェーンを結びつけること
- 規制サンドボックスとデータガバナンス対話を組み合わせたモデルで、越境データの安全性とコンプライアンスの枠組みを整え、イノベーションが新たな参入障壁とならないようにすること
こうした方向性の前提にあるのは、技術ポテンシャルを包摂的な成長のための現実の生産性に変えていくには、開放性と協力を守ることが欠かせないという認識です。
Prosper 繁栄 文化経済とグリーン投資による包摂的成長
三つ目のキーワード Prosper は、成長の量だけでなく質や広がりに焦点を当てています。誰もが恩恵を受けられる包摂的な繁栄をどう実現するかが問われています。
初開催の文化・クリエイティブ対話
今回、APECの場では文化・クリエイティブ産業に関するハイレベル対話が初めて開催されました。文化や創造産業は、観光、テクノロジー、金融など他分野との掛け合わせによって、経済に大きな波及効果をもたらす可能性があると指摘されています。
観光・コンテンツ・金融をつなぐ政策アイデア
政策面では、次のような取り組みが提案されています。
- 国境を越えた文化観光ルートの開発など、文化と観光を組み合わせた協力
- 映画やドラマなど映像コンテンツの共同制作
- 舞台芸術や知的財産の共同プロジェクト
- デジタル著作権保護の強化
- 中小企業や若者を特に支える、包摂的な文化向け金融の仕組み
文化や創造への投資を通じて、新しい雇用やサービスを生み出し、多様なプレーヤーが参加できる成長モデルを目指す動きです。
中国のニューエネルギー投資が生む確実性
同時に、中国は新エネルギー分野への投資や、産業チェーンの安定化を目指す取り組みを通じて、市場に「確実性」を提供しようとしています。
新エネルギー車、エネルギー貯蔵システム、クリーン電力設備などは、グリーン需要を押し上げるとともに、現地の関連インフラの整備を促しています。また、港湾や物流、越境電子商取引といった分野での高度な開放を進めることで、産業側と消費者側の双方の期待を安定させようとしています。
三つのキーワードが描く持続可能な明日
Connectivityは前提条件、Innovationはエンジン、Prosperityは目標という整理が今回の議論の背景にあります。ルールの整合、イノベーション協力、包摂的成長という三つのリストで具体的な進展が実現すれば、アジア太平洋地域は、外部環境の不確実性に対して、開放性という確実性で応えていくことができると期待されています。
中国は韓国などのパートナーとともに、制度面での開放を進め、AIやデジタル経済での協力を深め、文化とグリーン転換を通じて包摂的な成長を広げていく方針を示しています。こうした取り組みを通じて、再現可能で拡張性があり、成果を測定しやすい中国からのソリューションや地域の公共財を提供し、Building a Sustainable Tomorrow の実現を目指す構図です。
アジア太平洋の不透明感が増す中で、開放と協力を軸にしたこれらの動きが、どこまで具体的な成果につながるのか。2025年のAPEC首脳会議は、その行方を見極めるうえで重要な節目となりそうです。
Reference(s):
Decoding the 2025 APEC keywords: Connectivity, innovation, prosperity
cgtn.com








