G20ヨハネスブルグ「不平等危機」 民主主義への影響を専門家が警告
富の不平等が世界の民主主義と社会の安定を揺るがす「緊急事態」だとする報告書が、南アフリカ・ヨハネスブルグでのG20首脳会議に合わせて公表されました。国際ニュースとしてのG20日本語ニュースを通じて、この「不平等危機」が何を意味するのかを整理します。
不平等は「世界的な緊急事態」 G20首脳に向けた警鐘
専門家らは火曜日、世界の富の不平等が民主主義と社会の結束を脅かす「世界的な緊急事態」だと警告し、南アフリカで開かれるG20首脳会議に向けて、各国首脳に対策を求めました。
提案の中心となっているのは、「国際不平等パネル(仮称)」の設置です。これは、地球温暖化のリスクや影響を分析し、解決策を提示してきた国連の「気候変動に関する政府間パネル」をモデルにした仕組みで、不平等問題に特化した国際的な専門家パネルを新たに設けようという構想です。
スティグリッツ氏ら6人の専門家委員会が報告書
今回の報告書をまとめたのは、ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ氏が率いる6人の専門家委員会です。報告書は、ヨハネスブルグでのG20サミットに向けて作成されたもので、各国の首脳に対し、不平等対策を国際議題の中心に据えるよう呼びかけています。
スティグリッツ氏は声明で「世界には気候の緊急事態があることは理解されている。今こそ、不平等の緊急事態に直面していることも認識すべきだ」と強調しました。不平等は「不公平」なだけでなく、「社会の結束を損ない、経済と政治にとっても問題だ」とも述べています。
数字で見る世界の不平等 「4人に1人が食事を抜く」
報告書は、現在の不平等の深刻さをいくつかの数字で示しています。
- 世界の4人に1人が、定期的に食事を抜いている。
- 一方で、世界の富豪の資産は歴史上最高水準に達している。
さらに、2000年から2024年の間に生み出された新たな富のうち、世界の上位1%の人々が41%を手にしたと指摘します。その中で、世界の下位50%に回ったのは、わずか1%にとどまりました。
つまり、ごく一部の富裕層に富が集中する一方で、多くの人が日々の食事にも苦労しているという構図が浮かび上がっています。このギャップを報告書は「不平等危機」と呼び、放置できない水準だと警告しています。
「不平等は民主主義をむしばむ」 報告書が示すメカニズム
報告書は、不平等が単に所得や資産の問題にとどまらず、民主主義そのものを揺るがしていると分析します。
不平等が進むと、次のような影響が生じると指摘しています。
- 政府や議会などの「制度」への信頼が失われる。
- 政治的な対立が先鋭化し、社会が分断されやすくなる。
- 所得の低い人々や社会的に弱い立場にある人々の政治参加が減少する。
- さまざまな形の社会的緊張が高まり、衝突のリスクが増す。
報告書によると、世界の8割以上の国で、世界銀行の定義する「高い不平等」がみられます。こうした国々は、民主主義の後退を経験する確率が他の国の7倍に上るとされています。
不平等は、選挙制度や言論の自由といった形式的な民主主義の仕組みだけでは解決できない、より深い構造的な問題だというのが、報告書のメッセージです。
「国際不平等パネル」構想とは何か
専門家委員会が提案する「国際不平等パネル」は、不平等に関する包括的な知見を集約し、各国政府の政策づくりを支えることを目指すものです。
このパネルは、次のような幅広いテーマを分析対象とするとしています。
- 土地所有の偏り
- 租税回避や税逃れの実態
- その他、各国社会に存在するさまざまな不平等の構造
こうした分析結果を各国の政策決定に活用してもらうことで、データにもとづく議論を促し、不平等是正に向けた国際的な連携を強める狙いがあります。
スティグリッツ氏らは、気候変動対策で専門家パネルが果たしてきた役割と同じように、不平等についても「科学的根拠にもとづく共通理解」をつくる仕組みが必要だと訴えています。
G20ヨハネスブルグ会議と南アフリカの役割
南アフリカは、G20の議長国を務める初のアフリカの国です。G20は19カ国にアフリカ連合(AU)と欧州連合(EU)を加えた枠組みで、世界の国内総生産(GDP)の約85%、国際貿易の約75%、世界人口のおよそ3分の2を占める国と地域が参加しています。
米国のドナルド・トランプ大統領は、11月22〜23日に行われる首脳会議には出席しない意向を示していましたが、その一方で、南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領は、不平等に関する報告書を高く評価しました。
ラマポーザ大統領は、この報告書を「より大きな平等に向けた青写真」と表現し、南アフリカが議長国として、不平等問題を国際議題の中心に据えたいとしています。また、「不平等への対処は、私たちの世代が避けて通ることのできない課題だ。この報告書は、それを減らすために私たちが取りうる慎重で現実的なステップを示している」と述べました。
これから問われるもの 「格差」をどう扱うか
今回の議論は、不平等をめぐる国際ニュースであると同時に、各国社会がどのような民主主義を維持していくのかという問いでもあります。
世界の1%が新たな富の4割を手にし、4人に1人が食事を抜いているという現実は、数字以上の重さを持ちます。報告書が示すように、不平等を放置することは、社会の信頼や政治参加、そして民主主義そのものの基盤を揺るがす可能性があります。
G20ヨハネスブルグ会議に向けて突き付けられた「不平等危機」というキーワードは、各国の政策だけでなく、一人ひとりの暮らしや価値観にも関わるテーマです。国際社会がどのような形で不平等対策に取り組むのか、今後の議論が注目されます。
Reference(s):
cgtn.com








