中国「ダブル11」消費が示す新潮流 AI家電と質重視へシフト
2025年の中国の大型ネット通販セール「ダブル11」が終了し、AI搭載の冷蔵庫から中身が分からないまま購入する「ブラインドボックス」まで、幅広い商品が売れたことが分かりました。オンライン消費は、よりスマートで環境に優しく、感情に訴える商品へとシフトしつつあります。
「ダブル11」が映した中国消費のいま
「ダブル11」は、中国で毎年行われる大規模なオンラインショッピングイベントです。2025年も例年どおり、セール期間は約1カ月にわたり、11月中旬にかけて実施されました。
今年の特徴として注目されたのは、単に「安いものをたくさん買う」から、「スマート」「グリーン(環境配慮)」「気持ちに響く」商品の人気が高まっている点です。
- AI搭載の冷蔵庫などのスマート家電
- 生活を便利にするロボット製品
- 開けるまで中身が分からない「ブラインドボックス」など、ワクワク感を売る商品
こうしたラインナップが、今回の「ダブル11」で消費の勢いをけん引しました。
政策とテクノロジーが後押しする「買い替え需要」
消費の盛り上がりの裏には、中国中央政府による政策支援があります。中国は今年、消費財の買い替えを目的とした総額3000億人民元(約423億ドル)の超長期特別国債を発行し、その第4弾・最終分が新たに市場に投入されました。
この資金は、主に以下のような分野に充てられています。
- 老朽化した産業設備の更新
- 家庭用の古い家電製品の買い替え
- 古い車両などの入れ替え
狙いは、設備や家電、車を新しいものに置き換える「トレードイン(下取り・買い替え)」を進めることで、内需を底上げすることです。今年の「ダブル11」では、中国のECプラットフォームがこのトレードイン政策を積極的に活用し、消費を押し上げました。
EC大手の販売データ:AIメガネとロボットが急伸
中国の主要ECプラットフォームであるアリババ系の「Tmall(天猫)」と「JD.com(京東)」では、AI機能を備えた家電やデジタル機器の売上が大きく伸びました。
Tmall:スマートグラスは前年比25倍
Tmallでは、「ダブル11」期間中に、AIグラスやロボットなどの消費電子製品の売上が大きく伸びたとされています。新商品の投入やAI機能の搭載、各種セールプロモーションが追い風となりました。
- スマートグラスの売上は、10月30日時点で前年比25倍に拡大
- DEEP RoboticsやUBTECH Roboticsといったロボットメーカーも、売上が2ケタ成長
単価の高いハイテク製品が伸びていることは、消費者が「価格だけでなく機能や体験価値」を重視していることの表れと見ることができます。
JD.com:AI機能付き家電が倍増以上
一方、JD.comでもAI機能を搭載した家電やデジタル機器が好調でした。最新のデータによると、「ダブル11」期間中の売上は、前年同期と比べて大きく伸びています。
- AI機能付きの消費電子製品全体の売上が、前年比で2倍超
- スマートグラス:前年比346%増
- デジタルカメラ:前年比238%増
- アクションカメラ:前年比220%増
スマートグラスが最も速い伸びを示し、カメラ関連も大幅な伸びとなりました。AI技術を活用した新しい視覚体験や、日常を記録する行動に対するニーズが高まっていることがうかがえます。
中国の消費は「安さ」から「質」と「体験」へ
中国新経済研究院の朱克力(Zhu Keli)院長は、中国の消費者は進化するニーズに応える「質の高い商品」を購入する傾向を強めていると指摘しています。
特に次のようなテクノロジー製品が、主流の選択肢になりつつあるといいます。
- 家じゅうの家電や照明をつなぐスマートホームシステム
- 健康状態を常時モニタリングできるウェアラブル機器やヘルスチェック端末
今回の「ダブル11」で目立った「スマート」「グリーン」「感情に響く」商品のトレンドは、単なる一過性のセールではなく、消費の質的な変化を反映したものといえます。
ブラインドボックスのように「開ける楽しさ」や「コレクション欲」を刺激する商品が売れていることも、モノそのものだけでなく、体験やストーリーに価値を見いだす消費スタイルの広がりと重なります。
日本から見る「ダブル11」:注目すべき3つのポイント
日本の読者にとって、今年の「ダブル11」は、中国のオンライン消費がどこに向かっているのかを知るヒントになります。ポイントを3つに整理すると、次のようになります。
- 政策とECが連動した「買い替え促進」モデル
政府のトレードイン政策と、ECプラットフォームのセール戦略が結びつくことで、家電や車の買い替えを一気に進める仕組みが動いています。 - AI・ロボットなど次世代製品の急速な普及
スマートグラスや家庭用ロボットなど、かつてはニッチだった製品が、短期間で「当たり前の選択肢」に近づきつつあります。 - 価格競争から「価値・体験」競争へ
単に安さを追うのではなく、生活をどれだけ快適にするか、楽しさや安心感をどれだけ提供できるかが、選ばれる基準になっています。
これから問われるのは「持続可能な消費」のかたち
一方で、家電やデジタル製品の買い替えサイクルが速まることは、環境負荷や資源の使い方という課題とも表裏一体です。また、AI機能付きのデバイスが増えるほど、個人データの扱いやプライバシー保護も重要になります。
中国の「ダブル11」は、巨大な市場で起きている変化をコンパクトに映し出すイベントです。今年の動きは、次のような問いを私たちに投げかけています。
- テクノロジーは、私たちの生活をどこまで「賢く」できると望ましいのか
- 環境負荷と利便性のバランスをどう取るのか
- 「買うことの楽しさ」と「持続可能性」をどう両立させるのか
2025年の「ダブル11」で見えた中国の消費トレンドは、日本やアジアの他の国・地域にとっても、今後の経済や暮らしを考えるうえでの一つの鏡といえます。スマートでグリーン、そして感情に響く消費をどうデザインしていくのか。読者一人ひとりが、自分の買い物のスタイルをふり返るきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
'Double 11' shopping frenzy sparks new wave of consumption in China
cgtn.com







