海南自由貿易港で全島特別通関へ 中国の高水準な対外開放はどこまで進むのか
中国・海南自由貿易港(Hainan Free Trade Port、海南FTP)で、今月18日に全島を対象とする特別通関制度が始まります。中国の高水準な対外開放の象徴とされるこの取り組みが、物流や投資、旅行などにどんな変化をもたらすのかを整理します。
12月18日に始まる「島全体が特別通関エリア」
執筆時点(12月8日)から約10日後の12月18日、海南自由貿易港では島全体を対象とした特別通関運用が正式にスタートする予定です。11月上旬に海南FTPに関する業務報告を受けた習近平国家主席は、この特別通関の開始を「高水準の対外開放を拡大し、開かれた世界経済を促進するうえでの画期的な措置」と評価しました。そのうえで、生産要素の越境移動をより円滑にし、市場志向・法治・国際化された第一級のビジネス環境づくりを進めるよう求めています。
ゼロ関税を先取りした「祥泰口」号
制度開始を前に、海南国際船舶登録局は、セミサブ型作業船「祥泰口(Xiang Tai Kou)」の裸用船登録(ベアボートチャーター登録)を完了させました。リベリアから裸用船方式でチャーターされたこの船は、海南のゼロ関税政策の対象となり、輸入関税と用船料にかかる付加価値税が免除されます。その結果、企業側は1,000万元(約140万ドル)を超えるコストを直接削減できたとされています。
この船は、中国で初めてゼロ関税の裸用船輸入船として洋浦港の船隊に正式編入されました。1件のケースではありますが、企業にとって制度の具体的なメリットが目に見える形で示されたと言えます。今後始まる島全体での特別通関は、こうした恩恵を受ける事例をさらに広げ、高水準の対外開放を加速させることが期待されています。
「第一線」「第二線」で区分する新しい通関モデル
島全体が特別通関エリアとなった後、海南では「第一線はより自由に、第二線は適切に管理、島内は自由な流通」という新しい監督モデルが導入されます。これは、中国本土全体の税関制度の枠組みを維持しつつ、海南をより開放的な通商ハブとして位置づける仕組みです。
- 第一線:海南FTPと海外地域との境界。貨物はより自由かつ便利に出入りでき、多くの品目でゼロ関税や通関手続きの簡素化が適用されます。
- 第二線:海南FTPと中国本土の他地域との間。通常の税関管理を維持しつつ、制度に沿った形で貨物が持ち込まれます。
- 島内:海南島内では、貨物や生産要素(人材・資本・技術など)が自由に流通することを目指します。
国家発展改革委員会の王昌林・副主任は7月の記者会見で、海南FTPと海外との境界が「第一線」となり、ここを通過する貨物のゼロ関税品目の割合が従来の21%から74%へ大きく拡大すると説明しました。さらに、海南で30%以上の付加価値が生じた輸入品は、中国本土に持ち込む際に関税が免除されるとしています。また、全国的には禁止または制限されている一部の品目についても、海南ではより開放的な政策が適用される見通しです。
投資、サービス、人の往来――広がる「開放の窓」
海南は、この機会を生かしてさらなる発展を目指しています。過去5年間で、実際に導入された海外からの投資額は1,025億元に達し、年平均14.6%のペースで増加しました。投資元は176の国・地域に及び、特別通関が始まることで、こうした流れに一段と弾みがつくと見込まれています。
物流面では、8つの港が第一線の主要な入口として機能し、条件を満たす輸入品について迅速な通関を可能にします。一方、10の第二線の港が、海南から中国本土に入る貨物を管理します。貨物の種類や流れに応じて役割を分担することで、貿易の自由化と安全管理の両立を図る狙いがあります。
人の往来でも、開放拡大が予定されています。現在、85の国からの旅行者に対しビザなしで海南への入境が認められていますが、特別通関の開始後は、この対象国の拡大や、より柔軟で魅力的な滞在条件の導入が検討されています。観光だけでなく、ビジネスや国際会議など多様な目的での訪問を想定した動きと言えます。
サービス分野では、海南は越境サービス貿易に関する「ネガティブリスト方式」の試行を進めています。ネガティブリストとは、「リストに載っている分野だけを制限し、それ以外は原則自由」とする規制の枠組みです。海南では、金融、医療、教育などの重点分野で、海外からの投資家に対して国内企業と同等の扱い(ナショナル・トリートメント)を与える方針が打ち出されています。
洋浦港の拡張と「改革の実験場」としての海南
こうした制度面の整備と並行して、海南自由貿易港の物流拠点である洋浦港の拡張も進んでいます。海南港航国際港口集団(Hainan Port and Shipping International Port Group)生産運営センターの杜成才・副総経理は、「20万トン級のバースを新たに2カ所整備し、58本の航路ネットワークを拡充することで、貨物の流れを改善し、海南の製品を世界市場とより良く結びつけていく」と話しています。
清華大学の経済学者・李稲葵氏は、中国が今後、きわめて重要な市場開放の段階に入るとの見方を示し、海南は特別通関エリアとして、より広い経済改革を試行する「実験場」になると指摘しています。海外企業や技術を受け入れる中国の「さらに開かれた扉」において、海南が中心的な役割を担うと評価しています。
日本の読者が押さえておきたいポイント
日本を含む海外の読者にとって、海南自由貿易港の動きは次の点で注目に値します。
- サプライチェーンの選択肢:ゼロ関税や通関の円滑化により、アジア域内の生産・物流ネットワークの一つの拠点として海南を活用する動きが広がる可能性があります。
- サービス・観光分野:ビザなし入境の拡大や滞在条件の緩和により、観光やビジネス出張で海南を訪れやすくなることが期待されます。
- 制度改革の行方:ネガティブリスト方式や特別通関制度で実現した仕組みが、中国本土の他地域にも広がるかどうかは、今後の中国経済や対外開放の方向性を考えるうえで重要な指標となりそうです。
12月18日に始まる海南自由貿易港の全島特別通関は、中国の対外開放政策の「次のステージ」を占う試金石と位置づけられます。制度の運用状況や企業・旅行者の受け止め方を丁寧に追いながら、そのインパクトを継続的に見ていく必要があります。
Reference(s):
cgtn.com







