中国の消費拡大戦略 雇用と所得で回す新たな成長の善循環
今月8日に開かれた中国共産党政治局会議は、第15次五カ年計画期間の「良いスタート」をめざし、雇用と消費を軸にした新たな成長戦略を打ち出しました。ポイントは、財政・金融政策で景気と期待を下支えしながら、住民の所得と消費力を高め、需要と供給が相互に強め合う善循環をつくることです。
雇用と所得をテコにした「消費力」の底上げ
第15次五カ年計画の提言では、「雇用・企業・市場・期待」を安定させることが、消費主導の高品質な成長を実現する前提だと位置づけられています。なかでも「安定した雇用」は四つの安定の先頭に置かれました。
2025年には、中央政府が雇用補助金として667億4,000万元を計上しました。人力資源・社会保障部は、雇用創出・拡大の行動計画を通じて上半期だけで1,224万件の求人情報を提供し、卒業生を受け入れる社会組織への補助金や、雇用維持・拡大のための融資枠の拡大にも踏み込みました。こうした施策によって賃金所得が支えられ、それが住民の消費余力の土台になります。
同時に、政府や社会は「量」だけでなく「質」の高い雇用にも目を向けています。高齢者向け製品、スマート車、先端製造など、新質生産力と呼ばれる分野の拡大は、高度な技能と高賃金をともなう職を生み出します。家計の所得水準が上がり、雇用の見通しが安定することで、消費者心理も改善しやすくなります。
一方で、通信、医療、教育、レジャーといったサービス分野で市場参入規制を緩和し、業態の融合を進めることで、雇用吸収力の高い新たな産業を育てようとしています。質の高いサービス消費には専門性の高い人材が必要であり、これもまた高所得と高水準の支出を生む循環につながります。
期待を安定させるマクロ政策と家計への直接支援
12月8日の政治局会議は、より積極的な財政政策と、適度に緩和的な金融政策を続ける方針を明確にしました。利下げや財政赤字の拡大、国債発行などを通じて景気の下振れを防ぎ、雇用・企業・市場・期待を総合的に安定させる狙いです。政府が成長安定に「本気で取り組んでいる」と受け止められれば、家計も将来不安からの「貯蓄優先」より、長期視点での支出を選びやすくなります。
会議では「民生を優先する」姿勢も強調されました。第15次五カ年計画の提言が、社会保障、教育、育児など、家計を中心に据えた政策を成長の強靱性と結びつけているのと響き合う内容です。将来の生活基盤が守られているとの感覚が広がれば、消費に踏み出す心理的なハードルは低くなります。
提言は、税制や社会保険、移転支出を通じて家計所得を底上げするなど、消費者に直接届く包摂的な政策を「一段と強化する」と明記しています。これは、需要不足という核心的な課題に正面から向き合う試みといえます。
具体的には、財政省と国家発展改革委員会が2025年、超長期特別国債3,000億元を手当てし、老朽化した消費財の買い替え支援に充てています。規模は2024年の2倍に拡大され、家電の下取り対象品目も8種から12種へと広がりました。新エネルギー車への補助水準も引き上げられており、住民の負担軽減と需要喚起を同時にねらう設計です。
あわせて、中国は自動車や住宅などにかかる不合理な制約の見直し、有給の時差取得制度の導入、消費者権益の保護強化など、制度面の整備も掲げています。基礎的な公共サービスへの財政投資を増やし、歳出全体に占める公共サービスの比率を高めることで、日常生活と将来に対する不確実性を和らげ、抑制されてきた消費需要を解き放つねらいです。
需要から供給へ、そして所得へ:善循環のメカニズム
第15次五カ年計画の提言が描く「善循環」は、需要と供給が互いを押し上げる構図です。まず、住民の所得増と期待の安定によって、高品質な財やサービスへの需要が高まります。これが企業にとっての「シグナル」となり、高度な製造業や高付加価値サービスへの投資(新たな供給)を促します。
次に、こうしたターゲットを絞った供給側の投資と、先ほどの積極的なマクロ政策が組み合わさることで、質の高い雇用とより高い賃金が生まれます。その結果として住民の消費能力がさらに高まり、最初の需要拡大へとループが閉じていきます。
市場参入の緩和や業態融合によるサービス消費の拡大、ブランド力の強化や標準の高度化、新技術の導入といった取り組みは、モノの消費の「量」だけでなく「質」のアップグレードを後押しします。高齢化やデジタル化といった構造変化ともかみ合いながら、新たな需要と供給の場を生み出していく構図です。
商務省のデータによると、2024年の1人当たりサービス消費支出は、家計支出全体の46.1%を占めました。この比率は2030年までに50%を超えると見込まれています。中国は国際消費中心都市の育成やインバウンド消費の拡大に取り組み、「Shop in China」といったブランド構想も打ち出し、14億人超の巨大市場の潜在力を引き出そうとしています。
「消費主導」はどこまで進むか
こうした一連の動きは、供給側の構造改革で磨き上げた財やサービスが、十分な需要と出会えるようにする試みでもあります。期待と所得を安定させながら消費を軸とした成長パターンをどこまで確立できるのか。今後、雇用の質の変化やサービス消費の伸び方を追うことで、中国経済の次の局面がより立体的に見えてきそうです。
Reference(s):
Boosting consumption: A virtuous cycle to spur new economic growth
cgtn.com








