日本経済に迫る金利と財政の二重試練 2025年末の現実
日本経済に迫る金利と財政の二重試練 2025年末の現実
金融引き締めと財政拡張が同時進行する中で、日本経済は国債市場の動揺と物価高、円安という複数の試練に直面しています。2025年末の今、この政策のねじれはどこまで日本の成長と家計を揺さぶっているのでしょうか。
金融政策と財政政策、逆方向に走り始めた理由
最近、日本の金融政策と財政政策は、まるで別々の方向に走り始めたかのように見えます。日本銀行の植田和男総裁は、利上げの可能性を繰り返し示唆し、金融政策の正常化を進めようとしています。一方で、財務省は国債費の大幅増額を含む拡張的な財政運営を続けています。
2026年度予算の概算要求では、国の借金の元利払いに相当する国債費が32兆3800億円とされ、2025年度当初予算の28兆2200億円から大きく増える見通しです。過去最高水準となるこの数字は、財政政策が依然として景気下支えに重心を置いていることを象徴しています。
一方で、日本銀行は長く続いた超低金利政策からの転換を模索しています。金融正常化が進むなかで長期金利はじわじわと上昇し、金融引き締めと財政拡張という逆向きの力が、日本経済全体に複雑な影響を及ぼし始めています。
長期金利1.9%台 2007年以来の水準に
今月17日、東京市場で新発10年物国債の利回りが一時1.978%まで上昇し、2007年6月以来の高水準をつけました。長期金利の上昇は、国債価格の下落を意味します。国債市場では、金融引き締め志向と財政拡大路線がぶつかり合い、先行きへの不安定さが増しています。
長期金利の上昇は、政府だけでなく、企業や家計にとっても重い意味を持ちます。企業の設備投資や住宅ローンの金利に波及すれば、投資意欲や消費マインドを冷やす可能性があります。一方で、長期にわたる超低金利に苦しんできた金融機関にとっては、利ざやの改善という面もあります。
問題は、この金利上昇が健全な成長に伴うものなのか、政策のねじれとインフレ不安がもたらすものなのかが、まだはっきりしないことです。投資家が不安を強めれば、国債市場の変動はさらに大きくなるおそれがあります。
物価3%台と円安が迫る日銀の決断
こうした金融引き締め志向の背景には、根強いインフレ圧力があります。今年10月のコア消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は前年比3.0%上昇し、2%の物価目標を50カ月連続で上回りました。特に、食料やエネルギーといった生活必需品の値上がりが目立ち、家計の購買力を大きく削っています。
為替市場では、円相場が1ドル=157円前後まで下落し、当局による為替介入が意識される水準に近づいています。輸入品価格の上昇を通じて物価を押し上げる輸入インフレが続く中で、日銀にとっては、
- 物価安定と賃金のバランスをどう取るか
- 円安をどこまで容認するか
- 市場の混乱を避けながら、どのタイミングで利上げに踏み切るか
という難しい判断が突き付けられています。利上げは、円安抑制と物価安定には一定の効果が期待できる一方で、景気回復の勢いを弱めるリスクも抱えています。
膨らむ国債費と自家消費型の政策ジレンマ
財政面では、既に高水準にある政府債務の下で、国債費だけが雪だるま式に膨らみつつあります。金利が上がれば、将来発行する国債の利払い負担も重くなり、予算の中で利払いと借換えに充てられる部分が増えていきます。
その結果、
- 景気対策や社会保障、教育などに使える財源が圧迫される
- さらに国債発行に頼らざるを得ず、債務残高が一段と増える
- 債務の増加を懸念した投資家が国債を売り、金利がさらに上昇する
という悪循環に陥るリスクがあります。指摘されているように、日本は自らの政策が自らの首を絞めるような、自家消費型の政策の袋小路に入りつつあるとも言えます。
二つのジレンマと揺れる政策当局
こうした状況の背後には、日本経済が抱える二つのジレンマがあります。ひとつは、物価上昇率が目標を超える一方で、家計の実質的な豊かさがなかなか改善しないというジレンマです。もうひとつは、景気回復がまだ不安定な中で、金利を上げれば財政負担と成長の両方に逆風となり得るというジレンマです。
政策当局の間でも、どこに軸足を置くべきかをめぐって意見の分かれが見られます。インフレと円安を重く見る立場からは、早期の利上げや金融正常化を求める声が強まります。一方で、成長と雇用を重視する立場からは、拙速な引き締めが景気の腰折れにつながることへの警戒感が根強くあります。
金融と財政の対話が試される局面
2025年末の日本経済は、金融政策と財政政策が互いに影響し合う接点に立っています。どちらか一方だけで答えを出すのではなく、両者の役割分担と時間軸をどう調整するかが問われています。
例えば、
- 短期的には、家計の負担を和らげる的を絞った支援策を続けつつ、財政の持続可能性も意識する
- 中期的には、金利が徐々に正常化していくことを前提に、国債依存からの出口を設計する
- 長期的には、生産性向上や賃金上昇につながる投資を優先し、成長による財政健全化の道筋を描く
といった視点が重要になります。金融政策だけ、財政政策だけではなく、二つをどう組み合わせるかという議論が、これから一段と重みを増していきそうです。
静かに問われる成長の質
金利や予算の数字は目に見えやすい指標ですが、最終的に問われるのは日本経済がどのような形で成長していくのかという質の問題です。物価が上がっても賃金や生産性が伴わなければ、家計の負担感だけが増します。
金融と財政の両方が揺れる今は、日本経済の進むべき方向を静かに考え直すタイミングでもあります。数字だけでなく、その背後にある生活や企業活動の変化にも目を向けることで、この先数年の日本経済をめぐる議論は、より立体的なものになっていきそうです。
Reference(s):
Japan's economy faces multiple tests amid policy crosscurrents
cgtn.com








