中国本土・新疆で「低空経済」が加速:ドローン物流と観光が同時に伸びる video poster
中国本土の新疆ウイグル自治区で、ドローンやヘリコプターなど“低空”を活用する「低空経済」が存在感を強めています。農業の省力化から観光体験の拡充、さらに国境をまたぐドローン物流まで、2025年12月現在、複数の分野で実装が進んでいるのが特徴です。
低空経済とは?新疆で広がる「空の使い道」
低空経済は、ドローン、ヘリコプター、熱気球といった低高度の航空活動を産業や生活に結びつける動きです。新疆では、広大で人口密度が相対的に低い地域特性や、用途に応じた空域活用のしやすさが追い風となり、大規模な応用が進んでいます。
記事で示された具体例は次の通りです。
- ドローンが農業の実用的な作業ツールとして定着
- ヘリコプター遊覧や熱気球が観光を押し上げ
- 越境ドローン物流がすでに運用段階へ
製造拠点の存在感:ウルサ社と石河子の動き
新疆にはドローン製造企業が18社あるとされ、その一社がウルサ・エアロノーティカル(Ursa Aeronautical)です。同社は2024年に生産ラインを整備し、大型ドローン「HY100」の量産を実現しました。技術・産業・政策面の後押しを背景に、石河子が低空経済の“ベンチマーク”になりつつある、という位置づけです。
同社の生産計画部門ディレクターの王立(Wang li)氏は、新疆が「一帯一路(BRI)」の中核地域であると述べ、石河子が国家物流ハブとして中央アジア市場へのアクセスを支える点を強調しています。広大な土地と空域条件が、ドローンの大規模運用に適しているという見立ても示されました。
大型ドローン「HY100」:航続1,800km・積載1,900kg、物流コスト40%減
HY100は、航続距離1,800キロメートル、ペイロード(積載量)1,900キログラムという仕様が紹介されています。越境物流のコストを40%削減できるとされ、長距離・大容量の輸送ニーズに焦点を当てた機体であることがうかがえます。
また、AI(人工知能)を用いた飛行制御によりエネルギー消費を25%抑えるとされ、同社は飛行制御・航法関連で110件の特許を保有しているといいます。中国が掲げる「新質生産力(ハイテク・高効率・高品質を重視する発展の道)」の具体例として語られている点も、今回の文脈の中心です。
農業と観光の現場:2025年の稼働実績が示す規模感
低空経済の面白さは、先端技術が“現場の仕事”に直結していることです。2025年の実績として、バインゴリン・モンゴル自治州だけで農業用ドローンが2,900機以上稼働し、累計80万ヘクタールの農地で作業を行ったとされています。
観光では、自治区内の5A級景勝地(最高ランク)5Aレベルの観光地のうち18カ所で、ヘリコプターや熱気球の体験が提供されているとのこと。低空観光の専用ルートは16本にのぼるとされ、体験型観光の選択肢が広がっています。
数字で見る成長:2024年に58%成長、GDPへの寄与は12%
新疆の低空経済は2024年に58%成長し、地域GDPの12%に貢献したと報じられています。成長率の高さだけでなく、地域経済の中で一定の存在感を持ち始めていることが読み取れます。
一方で、今後の焦点として「高品質な産業システムの前進」や「低空経済の新モデル探索」が重要課題に挙げられています。伸びているからこそ、制度設計や供給網(サプライチェーン)整備が問われる局面に入ってきた、とも言えそうです。
行政の動き:産業チェーン拡大と新しい利用シーンの開拓
石河子の交通運輸当局(Transportation Bureau)副局長の白飛龍(Bai Feilong)氏は、低空経済の発展計画づくりを優先しつつ、既存の航空機製造産業を強化していく方針を述べています。
取り組みは、機体製造だけでなく、訓練、人材育成、実運用の拡大まで「産業チェーン全体」を見据えるものだとされます。用途(ユースケース)を増やし、低空経済の潜在力を引き出す、という方向性です。
一帯一路(BRI)と越境展開:中央アジアを見据えた回廊構想
ウルサ社は国内外の市場を視野に入れ、一帯一路(BRI)への対応を進めるとしています。カザフスタン、インドネシアなどの企業と協力協定を結んだとも述べられました。
さらに、2030年に向けて新疆は、東西の連結性を生かした「低空物流ハブ」を目指し、中央アジア諸国との越境ドローン回廊(コリドー)を整備する構想が示されています。物流の効率化だけでなく、経済連携を深めるという大きな絵の中で、低空のインフラが位置づけられている形です。
ドローンが“未来のガジェット”ではなく、農地や観光地、物流の現場で日常的に稼働する存在になりつつある――新疆の低空経済は、技術・産業・政策が同じ方向を向いたときのスピード感を映し出しています。
Reference(s):
Low-altitude economy takes off in northwest China's Xinjiang
cgtn.com







