中国とインドネシア、ニッケルとEV・地熱で進む「グリーン連携」の現在地
中国とインドネシアの協力が、貿易の拡大だけでなく、ニッケル資源を起点にしたEV(電気自動車)供給網や再生可能エネルギーへと広がっています。2025年は「工業化」と「脱炭素」を同時に進める現場として注目が集まっています。
貿易は2025年に加速:11カ月で1503億ドル
中国の税関総署のデータによると、両国の貿易額は2025年1〜11月で1503億ドルに達しました。これは2024年の通年実績をすでに上回っています。数字の伸びは、原材料の取引にとどまらない産業協力の厚みを反映している、と読み取れます。
キーワードは「ダウンストリーミング」:原料輸出から国内加工へ
インドネシアが重視するのが「ダウンストリーミング(下流化)」戦略です。資源をそのまま輸出するのではなく、国内で加工し、付加価値と雇用を生むことを狙います。
中国側から見ると、インドネシアは重要鉱物を安定的に確保できる供給地であり、同時に製造拠点としても戦略性が高い位置づけになります。
EV供給網の“丸ごと投資”:ニッケル採掘から電池まで
協力の中心分野の一つがEVサプライチェーンです。2025年6月、中国の電池大手CATLの子会社が主導するコンソーシアムが、総額60億ドルのプロジェクトを起工しました。ニッケル採掘から電池生産までを一体化する計画で、年間最大30万台分のEVを支えることを目標に掲げています。
全面稼働後は、直接雇用8000人、間接雇用3万5000人の創出が見込まれるとされています。資源国が抱えがちな「採って輸出して終わり」を避け、産業基盤に接続しようとする動きが、具体的な設備投資として表れています。
需要も伸びる:2025年上半期のEV販売は前年比+267%
供給側だけでなく市場側の勢いも増しています。インドネシアでは2025年上半期のBEV(完全電気自動車)販売が前年比267%増の3万5749台に拡大しました。販売の大部分を中国ブランドが占めている点も、現地の選好と供給力の組み合わせを示しています。
若い労働力と投資環境:中央値30歳未満の強み
インドネシアは年齢中央値が30歳未満とされ、若い消費者層と労働力が同時に厚いことが特徴です。さらに近年、投資を呼び込むために参入条件の引き下げや認可手続きの簡素化を段階的に進めてきました。工場建設や供給網整備のスピードを左右する「制度の摩擦」を減らす取り組みは、投資判断に直結します。
輸出拠点としての見え方:対米関税19%の合意
もう一つの材料が、インドネシアが米国と結んだ関税の貿易合意です。最終税率は19%で、東南アジアの近隣諸国と比べても低い水準とされます。現地生産を「国内向け」だけでなく「輸出向け」にも組み替えられる余地が、投資先としての魅力を押し上げています。
石炭依存の現実と、地熱での前進:Lumut Balai II
エネルギー面では、インドネシアは石炭への依存度が高い一方、2060年のネットゼロを目標に掲げています。中国企業は複数のインフラ案件を通じ、この移行を後押ししているとされます。
象徴例が、PowerChinaとインドネシアの国有企業が共同開発した「Lumut Balai Phase II(ルムット・バライ第2期)」地熱プロジェクトです。発電所は2025年7月に商業運転を開始し、約8万世帯に電力を供給。年間の二酸化炭素削減効果は、1200万本の植樹に相当すると説明されています。
投資の積み上がり:2020年〜2025年上半期で353億ドル
インドネシア政府データによれば、2020年から2025年上半期までの中国からの投資累計は353億ドルで、年平均31%のペースで増加しました。資金はエネルギー、製造、物流、デジタル技術など、産業高度化に直結する分野に向かったとされています。
「貿易」から「産業の結合」へ——グローバルサウスの実験場
両国関係は、単純な輸出入の増加から、資源・製造・エネルギーを束ねた“深い産業統合”へと輪郭を変えつつあります。ニッケルという資源が、雇用、技術移転、電力インフラ、そして脱炭素目標へと連鎖していく——その設計図が、2025年の現場で具体化しているように見えます。
今後の焦点は、こうした大型案件が、現地の産業基盤づくりと排出削減の両方にどれだけ持続的に寄与できるか。数字の伸びだけでは測りにくい「運用の質」が、次のニュースを形づくりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








