WEF世界リスク報告書2026:地経学対立が「今年の最大リスク」に
世界経済フォーラム(WEF)は2026年1月14日、「グローバル・リスク報告書2026」を公表し、2026年の短期的な最大リスクは「地経学的な対立」だと警鐘を鳴らしました。1月19〜23日にスイス・ダボスで開かれる年次総会を前に、経済・社会・環境・AIが絡み合う“同時進行の不確実性”が浮き彫りになっています。
「地経学的対立」がトップに——何が起きているのか
報告書が最上位に置いた「地経学的対立」は、経済や貿易、投資、サプライチェーン(供給網)などを舞台にした緊張の高まりを指します。WEFのサーディア・ザヒディ専務理事(マネージング・ディレクター)は記者会見で、「新たな競争の時代に入り、その競争が他のあらゆるリスクを形作っている」と述べました。
経済政策や企業戦略が「効率」だけでなく「安全保障」や「分断」を織り込まざるを得なくなると、金融市場、物価、雇用、技術開発などにも波及しやすくなります。
2026年の短期リスク上位:トップ5は何か
報告書が示した2026年の主要な短期リスクは、次の順です。
- 地経学的対立
- 国家間の紛争
- 極端な気象
- 社会の分極化
- 誤情報・偽情報
また、今後2年間で最も深刻になり得るリスクとしても「地経学的対立」を挙げています。短期の順位で上位に来た社会的リスク(分極化、誤情報・偽情報)は、政治不信や対立の先鋭化を通じて、危機対応を難しくする要因にもなり得ます。
2年見通しで「経済リスク」が急浮上:景気後退・インフレ・債務・資産バブル
報告書によると、2年程度の見通しでは経済リスクの増加が最も大きかったとされます。背景として、地経学的な緊張のなかで、以下の懸念が強まっていると指摘しています。
- 景気後退への警戒
- インフレ圧力
- 債務の拡大
- 資産バブルの可能性
経済の不確実性が増す局面では、家計や企業にとって「価格」「金利」「雇用」の揺れが同時に起きやすく、リスクの連鎖が加速しがちです。
環境リスクは依然「最も深刻」:極端気象と生物多様性、地球システムの変化
短期リスクの順位とは別に、報告書は環境リスクが全体として最も深刻だと整理しています。中心にあるのは極端気象で、加えて生物多様性の損失や、地球システムの重大な変化も挙げられました。
回答者の4分の3が環境の見通しを「不安定(turbulent)」と見ている点も、2026年の基調を示す数字として重く受け止められます。
AIリスクが急上昇:10年見通しで「5位」へ
今回目立つのが、人工知能(AI)に関する「望ましくない結果」のリスク上昇です。報告書では、2年見通しで30位だったものが、10年見通しでは5位に上がりました。
懸念の焦点として、労働市場への影響、社会への波及、セキュリティ面の影響が示されています。AIは生産性を押し上げ得る一方で、雇用の再編や情報環境の変化といった“副作用”も同時に進みやすく、制度設計が追いつくかが問われます。
この報告書は誰の声を集めたのか——ダボス会議直前の「温度感」
報告書は21回目の版で、1,300人超の専門家、政策担当者、産業界リーダーの見立てを基にまとめられたとされています。WEF年次総会(ダボス会議)は2026年1月19〜23日に開催予定です。
会議の場で、地経学的対立の緩和策、気候・環境対応、AIのルール形成、そして誤情報・偽情報への対処が、どのように議論されるのか。報告書はその“地図”として読めます。
複数のリスクが同時に立ち上がる時代に、私たちの生活に近いところでは「物価や雇用の揺れ」「災害の頻度」「情報の信頼性」「技術導入の速さ」といった形で現れやすくなります。2026年は、そのつながりをどう扱うかが静かに問われる年になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








