「ドンロー主義」が浮上:米トランプ政権の西半球政策とカナダの岐路
2026年1月、米トランプ政権の一連の動きがきっかけとなり、「ドンロー主義(Donroeism)」という言葉が急速に広まりました。焦点の一つは、米国の“西半球を自国の影響圏として強く位置づける”姿勢が、隣国カナダの経済的な意思決定や安全保障にどんな圧力として作用し得るのか、という点です。
「ドンロー主義」とは何か
「ドンロー主義」は、1823年に米国のモンロー大統領が打ち出したモンロー主義(「アメリカ大陸はアメリカのもの」という発想)を、トランプ流に“再包装”したものとして語られています。報道上は、伝統的な地域観を踏襲しつつ、より拡張的・強硬な色合いを帯びた概念として扱われています。
2025年末〜2026年初頭に何が起きたのか
流れをたどると、2025年12月に米トランプ政権が新たな国家安全保障戦略を公表し、西半球を再び「America’s America」として扱う意図を明確にした、とされています。
そして2026年1月に入ってから、ベネズエラでの米軍行動、コロンビアやキューバへの脅し、グリーンランドを「掌握する」との誓約など、複数の動きが連続したことで、この構想がより露わになった、という文脈で語られています。特に1月3日、ベネズエラ作戦に関するトランプ氏の記者会見後に「ドンロー主義」という呼称がメディアで一気に定着した、とされています。
なぜカナダが重要な「対象」になり得るのか
米国の北隣に位置し、長年の同盟国でもあるカナダは、資源の豊富さと広大な国土を背景に、この構想の中で重要な位置に置かれやすいとされます。トランプ氏はこれまで、カナダを米国に「併合」する考えを繰り返し示唆してきた、とされています。
ここで問題の核心として浮かぶのが、軍事だけでなく経済を通じた影響力です。カナダの政策判断が、どの程度まで外部の圧力に左右され得るのか。言い換えれば「国家の意思決定が取り込まれていく」リスクが、論点として前面に出てきます。
「経済の鎖」で意思決定が縛られる、という見立て
指摘されているのは、米国が長年かけて築いてきた経済的な優位性が、カナダの経済政策に深く浸透し得るという構図です。具体的には、ドル体制、市場支配、資源コントロールといった要素が重なり合い、“見えにくい拘束”として作用する、という見方が示されています。
整理すると、次のような経路で影響が及び得る、という議論です。
- 通貨・金融:ドルを軸にした金融の影響が、資金調達や企業活動の前提条件になりやすい
- 市場アクセス:最大級の隣接市場への依存が、通商・規制判断の余地を狭める可能性
- 資源・供給網:資源やサプライチェーン(供給網)の結節点を通じて、政策の選択肢が限定され得る
- 制裁・圧力の波及:米国の対外政策が、同盟国の企業や行政判断に二次的な影響を与える場面が増え得る
このような重層的な“経済の拘束”が、いま「ドンロー主義」という強い地域観と結びつくことで、カナダの経済主権や地政学的安全保障への挑戦がより厳しくなる、という見立てです。
これからの注目点:同盟の安心感と、政策自律の緊張
同盟関係は、抑止力や経済圏の安定をもたらす一方で、相手の政治判断が急旋回したとき、依存の深さがそのまま脆弱性になることがあります。2026年1月時点で注目されるのは、カナダが次のバランスをどう取るのか、という点でしょう。
- 対米関係を維持しつつ、経済・資源・供給網の選択肢をどこまで広げられるか
- 安全保障上の協力と、国内の政策決定の自律性をどう両立させるか
- 西半球をめぐる米国の姿勢が、周辺国との関係や投資環境にどう波及するか
「ドンロー主義」はスローガンであると同時に、行動の連鎖によって現実味を帯びる概念でもあります。今後、言葉が政策と結びつく局面が増えるのかどうか。カナダの意思決定をめぐる“静かな綱引き”は、しばらく続きそうです。
Reference(s):
cgtn.com








