古筝とジャズが出会うとき 音で語り合う国際コラボの現場 video poster
古筝とジャズが出会うとき 音で語り合う国際コラボの現場
古代中国にルーツを持つ伝統楽器・古筝と、ドラムやベースを中心とする現代ジャズ。この一見ミスマッチな組み合わせが、今、新しい音楽体験として注目を集めています。本記事では、ルーシー・ルアンさん、ヤコブ・ローランドさん、ヘンリク・ホルストさんのトリオが挑む、国境もジャンルも越えた「音の会話」を追います。
古代中国の楽器・古筝と現代ジャズの意外な組み合わせ
古筝は、古代中国に起源を持つ弦楽器で、その澄んだ響きと繊細なニュアンスで知られています。一方、ジャズはドラムやベースを軸に、即興演奏とリズムのグルーヴで展開される音楽です。
この二つを同じステージに乗せているのが、古筝のルーシー・ルアンさん、ベースのヤコブ・ローランドさん、そしてドラムのヘンリク・ホルストさんのトリオです。古筝の響きとジャズのリズムが交差するとき、そこには既存のジャンルには収まりきらないサウンドスケープが生まれます。
「音の会話」をつくるステージ
3人が目指しているのは、単なる異色コラボではありません。彼らは、自分たちの音楽を「音符でつくる会話」と表現します。互いのフレーズを投げかけ、受け取り、感情やアイデアを交換していくスタイルです。
トリオでベースを担当するローランドさんは、伝統楽器の響きがもたらす感覚をこう語ります。
「伝統的な楽器の音を聞くと、私たちにとってはとてもめずらしく、特別な場所へ連れて行かれるように感じます。だからこそ、新しいかたちで音楽を感じられるのです」と話します。
異なる楽器と背景を持つ3人ですが、その演奏は次のようなプロセスの積み重ねです。
- まず相手の音をよく聴く
- すぐに埋めず、あえて間(ま)を残す
- そこで生まれた余白に、そっと応える
彼らが気づいたのは、音楽が友情とよく似ているということでした。よく聴き、尊重し、反応することで、初めて信頼と驚きに満ちた対話が成り立つのだといいます。
「伝統の枠」にとらわれない古筝
このトリオの中で、もっとも異彩を放つのが古筝です。ルアンさんは、古筝を決して「伝統音楽だけの楽器」とは見ていません。
「これは道具にすぎません。誰がどう弾くのか、そして観客に何を届けたいのかで、楽器はまったく違うものになります」とルアンさんは語ります。
多くの人にとって、古筝やほかの伝統楽器は「決まったスタイルで演奏されるもの」というイメージが強いかもしれません。しかしルアンさんは、その枠を一度外してみようとしています。繊細なアルペジオ(分散和音)でジャズのビートに寄り添ったかと思えば、鋭いグリッサンド(弦を滑らせる奏法)でリズムセクションに挑みかかるようなフレーズも生み出します。
こうした姿勢は、伝統を壊すのではなく、伝統の可能性を拡張する試みとも言えます。楽器そのものは変わらなくても、「どう使うか」が変わることで、新しい表現の地平が開けることを、彼女は体現しています。
異なる背景の音楽が交わるとき
もちろん、異なる音楽文化を融合することは簡単ではありません。リズム感覚も、曲の組み立て方も、「当たり前」とされているルールがそれぞれ違います。3人にとっても、最初は試行錯誤の連続だったといいます。
それでも彼らは、音楽が「よく聴き、応えること」によって成り立つというシンプルな原点に立ち返りました。そこから少しずつ、古筝とジャズが自然に混ざり合うポイントを見つけていきました。
3人が探っているのは、新しいサウンドだけではありません。異なる伝統やバックグラウンドを持つ人どうしが、どのようにして共通の言葉を見つけられるのか。その一つの答えを、彼らは音楽で示そうとしています。
ルアンさん、ホルストさん、ローランドさんがともに演奏を重ねる姿は、次のことを静かに伝えているようです。
- 違いは対立の理由ではなく、会話のきっかけになりうること
- 「正しさ」よりも、「一緒に試してみる勇気」が創造を生むこと
- 伝統と現代は、どちらかを選ぶものではなく、編み合わせることができること
私たちの「聞く力」を試す音楽
アルゴリズムがおすすめするプレイリストをなんとなく流し聞きしてしまいがちな今、古筝とジャズのトリオがつくる音楽は、私たちに少しだけ「能動的に聴くこと」を促してきます。
知らない楽器の音に出会ったとき、ジャンルの名前で判断してしまう前に、「これはどんな会話なんだろう」と耳を傾けてみる。そんな聞き方を提案してくれるようなステージです。
彼らが新しいサウンドスケープを探り続けるかぎり、古筝とジャズのあいだに紡がれる物語も更新されていきます。異なる伝統と背景を持つ音楽が織り合わさり、オリジナルでインスピレーションに満ちた作品が生まれていくプロセス自体が、今を生きる私たちにとっての「国際ニュース」でもあるのかもしれません。
次にライブや動画で、見慣れない楽器とおなじみのジャンルが一緒に演奏されているのを見かけたら、その組み合わせを面白がって、少しだけ耳をすませてみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com







