20時間の遠距離通院に終止符 南部ペルーにAntiplano Hospital誕生 地域医療に新たな希望 video poster
ペルー南部で、多くの人が手術のために20時間以上かけて病院へ向かい、ときにはボリビアとの国境を越えなければならなかった現実に、2025年いま、新しい選択肢が生まれました。地域に専門医療を届ける「Antiplano Hospital」です。
20時間かけて手術へ──これまでの現実
南部ペルーの山岳地帯や農村部では、最も近い大きな病院まで20時間以上かかる人たちが少なくありませんでした。必要な手術や精密検査を受けるには、夜明け前に出発し、バスを乗り継ぎ、舗装されていない道路を長時間かけて移動する。さらに高度な医療が必要な場合は、隣国ボリビア側の病院に行くしかない人もいました。
こうした状況は、この地域に暮らす何百万人もの人々にとって、長年続く「当たり前」でした。体調が悪くても受診をあきらめる、家族の付き添いが難しく治療を先延ばしにする──そんな選択を強いられてきました。
地域に届いた新しい病院「Antiplano Hospital」
こうした現実を変えようと、南部ペルーに新たに建設されたのが「Antiplano Hospital」です。この病院は、単なる新設施設ではありません。地域の人々の強い思いと、海外からの支援を含む「ローカルとグローバルの協働」が結びついて生まれたプロジェクトです。
Antiplano Hospitalでは、これまで遠くまで出向かなければ受けられなかった外科手術や専門診療を、住民の生活圏の中で受けられるようにすることを目指しています。移動時間が大幅に短縮されることで、患者の負担はもちろん、付き添う家族の時間的・経済的負担も軽くなります。
病院の誕生により、この地域では次のような変化が期待されています。
- 長距離移動なしで、手術や専門的な検査にアクセスできる
- 緊急時の対応が早まり、救える命が増える可能性が高まる
- 地域に医療職が集まり、若者の新たな雇用機会が生まれる
土地を寄付した地元のヒーロー、セサレアさん
病院建設の物語の中心にいるのが、地元の住民であるセサレアさん(Ms. Cesarea)です。彼女は、自分の土地を無償で提供するという決断を下し、病院建設の土台をつくりました。
土地は家族にとって大切な資産であり、生活のよりどころでもあります。その一部を手放すことは簡単な選択ではありません。それでもセサレアさんは、地域の未来のために土地を差し出しました。周囲の人たちは、彼女を「ローカルヒーロー」と呼び、その行動が他の住民にも大きな勇気を与えています。
地元と世界の手で建てられる病院
Antiplano Hospitalをかたちづくっているのは、セサレアさんだけではありません。工事には、地域の建設会社や職人に加え、海外から参加した技術者や専門家も関わっています。
こうした「地元と世界」のチームは、それぞれの得意分野を持ち寄りながら、地域の気候や地形に合った病院づくりを進めてきました。建物の設計や設備の選定にあたっては、「この地域の人にとって本当に使いやすい病院とは何か」という視点が重視されています。
単なる医療施設を超えた「希望の灯」
病院は、病気を治す場所であると同時に、地域社会の象徴にもなり得ます。Antiplano Hospitalは、まさにその典型的な例と言えます。
長年、医療アクセスの制約に直面してきた人々にとって、この病院は「やっと自分たちの地域にも目が向けられた」という実感をもたらしています。そこには、困難な環境の中でもあきらめずに行動してきた住民の粘り強さと、それを支えた国内外のパートナーシップが、目に見えるかたちになって表れています。
病院の開院は、医療そのものだけでなく、教育や地域経済にも波及効果をもたらす可能性があります。医療分野で働きたい若者が地域にとどまる理由になり、周辺で小さな商店やサービスが生まれるきっかけにもなり得ます。
国際ニュースとして見る、南部ペルーの地域医療
遠隔地の医療アクセスの課題は、南部ペルーだけの問題ではありません。世界各地の農村・山間地域、そして日本でも、似た構図が見られます。人口減少や高齢化が進む地域で、「どこまで医療を届けられるのか」は、多くの国と地域が向き合っている問いです。
Antiplano Hospitalの物語は、次のような視点を私たちに投げかけています。
- インフラや制度が整っていない地域でも、住民の主体的な行動が変化の起点になり得ること
- 土地提供や資金、専門知識など、異なるかたちの「資源」を持つ人々が協力することで、大きなプロジェクトが動き出すこと
- 国境を越えた連携が、地域の課題解決に新しい選択肢をもたらすこと
私たちがこのニュースから学べること
newstomo.comの読者の多くは、都市部で暮らし、日常的に医療機関にアクセスできる人が多いかもしれません。それでも、南部ペルーの小さな病院の話は、決して遠い世界の出来事ではありません。
自分の時間やスキル、あるいは声を上げることそのものが、誰かの「アクセス」を変える力になり得る──Antiplano Hospitalをめぐる人々の選択は、そんなヒントを静かに伝えてくれます。
20時間かけて国境を越えなくても、必要な医療にたどり着ける未来。その一歩が、南部ペルーの地でいま、現実のものになりつつあります。
Reference(s):
cgtn.com








