カナダの文化遺産保護のいま:サンタナ・キンテロ教授が語る3つの課題 video poster
カナダの文化遺産保護の現場で何が起きているのか。2025年末のいま、国際ニュースとして見ておきたいテーマです。
カールトン大学(カナダ・オタワ)教授で文化遺産保存の第一人者、マリオ・サンタナ・キンテロ氏に、newstomo.comの記者・楊艶(Yang Yan)が最近オンラインでインタビューを行いました。
インタビューでは、カナダの文化遺産サイトが直面する課題、高度なデジタル技術の活用、そして若い世代をどう巻き込むかという3つのテーマが中心になりました。本記事では、そのポイントを日本語で整理し、国際ニュースとしての文脈も交えて紹介します。
国際的な文化遺産保護の専門家、サンタナ・キンテロ氏とは
サンタナ・キンテロ氏は、カナダのカールトン大学で教鞭をとる文化遺産保存の専門家です。同大学のCarleton Immersive Media Studio(CIMS)にも所属し、没入型メディアを用いた文化遺産の記録・可視化に取り組んできました。
国際的には、文化遺産の保存と保護を目的とする組織である国際記念物遺跡会議(ICOMOS)の元事務局長を務めたほか、ICOMOSと国際写真測量・リモートセンシング学会(ISPRS)の下にある委員会CIPAの名誉会長でもあります。CIPAは、歴史的建造物や遺跡をデジタル技術で記録し、守ることに特化した専門組織です。
1. カナダの文化遺産サイトが直面する課題
インタビューではまず、カナダにおける文化遺産保護の課題が議論されました。カナダのように広大で多様な地域を抱える国では、都市部の歴史的建造物から自然と結びついた遺産まで、守る対象もリスクも多岐にわたります。
世界各地の文化遺産保護と同様に、次のような点がしばしば論点になります。
- 開発や観光とのバランスをどう取るか
- 限られた予算や人材で、どの遺産から優先的に保全するか
- 現地コミュニティの生活や価値観と、保護のルールをどう調整するか
文化遺産は単なる古い建物ではなく、コミュニティの記憶やアイデンティティと深く結びついています。そのため、残すか壊すかの二択ではなく、地域の人びとが納得できる形でどう未来につなぐかが問われています。
2. デジタル技術が変える文化遺産保護
今回のインタビューの大きなテーマの一つが、高度なデジタル技術を文化遺産の保存・保全にどう生かすかでした。サンタナ・キンテロ氏が所属するCIMSも、こうしたデジタル技術の活用の最前線に立つ研究組織です。
近年、文化遺産の分野では、次のような技術が注目されています。
- レーザースキャナーやフォトグラメトリ(写真測量)による高精度な3D計測
- バーチャルリアリティ(VR)や拡張現実(AR)による没入型の見学体験
- デジタルアーカイブによる、災害や事故に備えたバックアップ
こうした技術は、目に見える形を残すだけでなく、建物の構造や劣化状況を分析したり、修復前後の状態を比較したりする際にも役立ちます。また、現地に行けない人でもオンラインで遺産にアクセスできるようにすることで、守ることと伝えることを同時に進める手段にもなります。
3. 若い世代をどう文化遺産保護に巻き込むか
サンタナ・キンテロ氏との対話では、若い世代の参加をどう広げるかも重要な論点となりました。文化遺産を未来へ引き継ぐには、次の世代に関心と責任感を育てることが欠かせません。
近年は、従来の講義型の学びだけでなく、よりインタラクティブな方法が模索されています。
- ゲーム感覚で参加できるデジタルコンテンツやアプリ
- 学生や地域の若者による、VR・動画制作などの共同プロジェクト
- SNSを通じて、身近な建物や風景の価値を共有するキャンペーン
文化遺産を遠い昔のものとしてではなく、自分の生活とつながるものとして体験してもらえるかどうかが、若い世代を巻き込む鍵になりつつあります。
国際ニュースとしての意味:カナダの経験から考える
今回のオンラインインタビューは、カナダという一つの国の事例を通じて、文化遺産保護の普遍的な課題を浮かび上がらせるものでもあります。
気候変動や自然災害、武力紛争や急激な観光増加など、文化遺産を取り巻くリスクは世界規模で高まっています。そうしたなかで、国境を越えて知見を共有し、デジタル技術や教育の力をどう生かすかは、2025年現在の重要なテーマです。
サンタナ・キンテロ氏のような専門家が取り組むカナダでの実践は、日本を含む他の国や地域にとっても、多くの示唆を与えてくれます。文化遺産を守ることは、どんな未来を残したいかを社会全体で考えることでもあります。
通勤時間の数分でも、自分の住む街や旅先で出会う建物や景観を、少し違う目で見てみる。そんな小さな視点の変化が、文化遺産をめぐる国際ニュースを自分ごととして捉える第一歩になるのかもしれません。
Reference(s):
Canadian professor discusses challenges in heritage protection
cgtn.com








