国際ニュースを日本語で:中国の伝統と現代を結ぶCGTN『The Vibe』4つの物語
中国の伝統と現代をつなぐCGTN『The Vibe』2024年12月13日回
国際ニュースや中国の文化を日本語で知りたい人に向けて、2024年12月13日に放送されたCGTNの番組『The Vibe』が取り上げた四つの物語を整理して紹介します。農耕祭祀、伝統刺繍、万里の長城、西部の野生動物保護という、いずれも中国本土の「いま」を映し出すテーマです。
4つの物語に共通するキーワード
今回の『The Vibe』が伝えたのは、単なる観光案内ではなく、「伝統をどう守り、どう更新するか」という課題でした。番組で紹介されたのは次の四つです。
- 北京・先農壇:農耕文化と王朝儀礼の記憶を伝える農業祭祀の祭壇
- シェン刺繍:女性中心の世界で、継承者が性別の壁を越えて挑む伝統工芸
- 万里の長城・西端の嘉峪関:およそ六百年にわたり自然と人為の試練に耐えてきた関所
- 四川のレンジャー:スナブノーズドモンキーが故郷から消えないよう一生をかけて守る姿
それぞれ内容は異なりますが、「遺産を残す」と「現代に合う形に変える」のバランスをどう取るか、という共通の問いが見えてきます。
先農壇:北京に残る農耕と王朝儀礼の記憶
まず紹介されたのが、北京にある先農壇です。ここは農業にまつわる祭祀が行われてきた場所であり、王朝の儀礼と中国の農耕文化の象徴として番組で描かれています。
豊かな農業生産は、どの時代も社会の基盤です。先農壇のような場所は、単に古い建物というだけでなく、「食べて生きる」という人間の営みと、それを支えてきた信仰や儀礼を思い出させます。2025年のいま、食料安全保障や持続可能な農業が世界的な課題となる中で、こうした歴史的空間の意味は軽くありません。
シェン刺繍:女性の領域だった工芸に新しい担い手
二つ目の物語は「シェン刺繍」です。長く女性が担い手だった刺繍の世界で、その伝統を受け継ぎつつ、性別の壁を越えて活躍する継承者が登場します。
番組では、この継承者が古くから伝わる技法を守りながら、現代的な感性を取り入れた新しいデザインに挑戦している様子が紹介されています。伝統工芸は「古い」「日常から遠い」と見られがちですが、デザインや用途を更新することで、若い世代にも届く文化へと変わり得ることを示しています。
また、女性中心だった場に別の性別の継承者が入ることは、単に「珍しい」話ではありません。働き方やジェンダー観が多様化する2020年代の中国本土社会の変化を映す事例としても読み取ることができます。
嘉峪関:西の果てで六世紀を耐え抜いた万里の長城
三つ目は、万里の長城の西の端に位置する嘉峪関です。ここは自然環境の厳しさと、人間によるさまざまな影響という「二重の試練」に六世紀以上さらされてきた場所として紹介されました。
風雨や砂嵐などの自然の力に加え、時代ごとの開発や観光など人の活動も、文化財には少なからぬ負荷を与えます。番組は、そうした中で嘉峪関を守り、伝えていこうとする人々の姿を通じて、「遺産を残すことの難しさ」と「それでも守る意味」を問いかけています。
観光資源として注目される一方で、過度な利用で傷つけてしまっては本末転倒です。長城の西端という象徴的な場所だからこそ、保全と活用のバランスをどう取るかは、2025年の今も続くテーマだと言えるでしょう。
四川のレンジャー:スナブノーズドモンキーと共に生きる
四つ目の物語は「Soul of Sichuan」と題したドキュメンタリーで、四川の山林で活動するレンジャーに焦点を当てています。彼は、鼻の短いサルの仲間であるスナブノーズドモンキーが、故郷から姿を消さないよう、一生をかけて守り続けてきました。
番組は、長年にわたる地道なパトロールや、生息地を守るための取り組みを追いかけます。華やかな都市の映像ではなく、静かな森と、そこに暮らす野生動物、そしてそれを見守る一人の人間の物語です。
生物多様性の保全は、国際ニュースでも繰り返し取り上げられるテーマです。四川の山奥での活動は、世界の環境政策の大きな議論とは遠く見えるかもしれませんが、実際にはそうした一つひとつの現場の積み重ねが、地球規模の変化を支えています。
日本からこの物語をどう読むか
先農壇、シェン刺繍、嘉峪関、スナブノーズドモンキーのレンジャー。一見ばらばらに見える四つの物語ですが、その根底には次のような共通点があります。
- 伝統や自然を「守る」だけでなく、「いまに生かす」視点を持っていること
- 個人の情熱や職業倫理が、地域や社会全体の財産を支えていること
- 文化財保護や環境保護が、国際ニュースの大きなテーマとつながっていること
2025年のいま、日本でも各地で伝統行事の担い手不足や、地域の自然環境の維持が課題になっています。中国本土の現場を伝えるこの番組は、隣国の話であると同時に、私たち自身の社会を見つめ直すヒントにもなりそうです。
国境を越えて共有されるのは、ニュースとしての事実だけではありません。伝統をどう受け継ぎ、どんな未来につなげていくのかという、静かな問いそのものが共有されているのだと感じさせる構成でした。
Reference(s):
cgtn.com








