米国質屋店主エバン・ケイル 第二次大戦アルバムがつないだ中国との縁 video poster
第二次世界大戦中の日本による対中国侵略を記録した一冊のアルバムが、米国の質屋店主エバン・ケイルさんを中国へと導きました。2022年にこのアルバムを在シカゴ中国総領事館に寄贈した彼は、2024年11月に中国を訪れ、天安門広場での国旗掲揚式から旅を始めています。歴史の記録と現在の出会いが交差する、この少し不思議な物語が国内外のネット上で関心を集めました。
エバン・ケイルとは誰か
エバン・ケイルさんは、アメリカで質屋を営む店主です。日々、人々が持ち込む品物と向き合う仕事の中で、彼の手元には、第二次世界大戦期の日本による対中国侵略を記録したアルバムが残されていました。
戦争の現場を記録したこうした資料は、残された側にとっても、受け取る側にとっても、重い意味を持ちます。ケイルさんは、そのアルバムを個人の手元に留めておくのではなく、中国側に託す道を選びました。
2022年、アルバムを在シカゴ中国総領事館へ寄贈
2022年、ケイルさんはこのアルバムを、アメリカのシカゴにある中国総領事館に寄贈しました。アルバムは、日本の対中国侵略の過程を記録したものとして、中国側にとっても重要な歴史資料となり得るものです。
寄贈に対して、中国側は感謝の印として、磁器製の茶器を贈りました。いわゆる国の贈答品としての性格を持つ茶器であり、一冊のアルバムを通じて、戦争の記録が国と個人をつなぐ形になったと言えます。
2024年11月、中国訪問と天安門広場の国旗掲揚式
その後、ケイルさんは2024年11月に中国を訪れました。彼の中国での最初の目的地は、北京の天安門広場でした。広場で行われる早朝の国旗掲揚式を見届けることから旅を始めた点に、彼の「過去を意識した訪問」であることがにじみます。
第二次世界大戦当時の記録を中国側に託した人物が、数年後に自ら中国の地を踏み、その象徴的な空間で国旗が掲げられる瞬間を見つめる――。そこには、歴史の記憶と現在の中国社会を、自分の目でつなごうとする意志が感じられます。
国内外のネットで広がった関心
ケイルさんの訪中は、2024年当時、中国国内と海外のインターネット上で注目を集めました。第二次世界大戦期の日本の対中国侵略を記録したアルバムを中国側に寄贈し、その後に中国を訪れるという行動は、多くのネットユーザーにとって印象的に映ったからです。
ネット上では、戦争の記憶をどう継承するか、他国の歴史とどう向き合うかといった視点から、この出来事が語られました。国同士の外交とは別に、一人の市民が歴史資料を介して関係性を築こうとする姿は、「市民による歴史の橋渡し」として受け止められています。
戦争の記録をめぐる「市民の歴史外交」
今回のエピソードが示しているのは、戦争の歴史が国家間の対立や感情だけで語られるものではない、という点です。質屋店主という、いわば生活者の立場にあるケイルさんが、アルバムを寄贈し、自ら中国の地を訪れたことは、歴史をめぐる対話の主役が必ずしも政府や専門家だけではないことを思い出させます。
第二次世界大戦の記録は、当事者世代が少なくなった現在でも、アジア各地の人びとの記憶に深く関わっています。そのなかで、一冊のアルバムが国境を越えて託されることには、次のような意味があると考えられます。
- 加害と被害の歴史を、資料を通じて具体的に見つめ直すきっかけになる
- 「知らなかった過去」を他者から受け取り、自分の問題として考える入口になる
- 市民レベルの交流が、感情的な対立を和らげる一助となり得る
今を生きる私たちへの問い
2022年の寄贈と、2024年の中国訪問という二つの出来事は、2025年の今を生きる私たちにも静かに問いを投げかけています。それは、「戦争の記憶を、次の世代にどう手渡していくのか」という問いです。
歴史資料を見つめることは、単に過去を振り返る作業ではありません。そこには、当時の加害や被害の経験を直視しつつ、現在の国際関係や、隣り合う国・地域との向き合い方を考えるヒントがあります。
エバン・ケイルさんの行動は、特別な肩書や立場がなくても、歴史との向き合い方を工夫することで、国境を越えた対話の入口を開くことができる、ということを示しているように見えます。
ニュースとしての出来事を追うだけでなく、「自分なら、どんな歴史の手触りを次の世代に残したいか」。そんな問いを、読者一人ひとりが静かに考えてみるきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
WWII album witness: The story of U.S. pawnshop owner Evan Kail
cgtn.com








