紫砂急須とクリスタル 中国とフランスの伝統工芸が交わる場所 video poster
中国の紫砂急須とフランスのサン=ルイ・クリスタルという二つの伝統工芸は、なぜ世界中の人を惹きつけ続けるのか。その共通点と、2025年のいま私たちがそこから何を学べるのかを、「Crossing Cultures」の取材を手がかりに読み解きます。
紫砂急須とクリスタルガラスが語るもの
中国・宜興の紫砂急須と、フランス北東部サン=ルイ=レ=ビッシュで作られるサン=ルイ・クリスタル。一見すると、東洋と西洋、陶器とガラスというまったく別の世界のものに見えます。しかし、何百年も受け継がれてきたこの二つの伝統工芸には、思いのほか多くの共通点が見えてきます。
国際的な取材プロジェクト「Crossing Cultures」は、東部の都市・宜興とフランスの小さな町サン=ルイ=レ=ビッシュを訪ね、この「遠くて近い」二つの工房文化を追いました。
取材の舞台:宜興とサン=ルイ=レ=ビッシュ
中国東部に位置する宜興は、紫砂急須づくりで知られる町です。街のあちこちに工房や小さな店が並び、職人たちが日々、茶を淹れるための器を形作っています。
一方、フランス北東部のサン=ルイ=レ=ビッシュは、クリスタルガラスの生産で名を馳せてきた地域です。高温の炉を囲みながら、職人たちが息を吹き込み、繊細なカットを施し、光を受けて輝く器を生み出しています。
「Crossing Cultures」の取材班は、両方の土地を行き来しながら、職人たちに話を聞き、その手元をじっくりと見つめました。
共通するのは「時間」と「手の記憶」
紫砂急須とクリスタルガラスづくりには、いくつかの共通点があります。
- 何世紀も続く歴史:どちらも長い時間をかけて技が磨かれ、地域の誇りとして受け継がれてきました。
- 素材と向き合う感覚:土やガラスは、温度や湿度によって微妙に表情を変えます。職人は、目で見て、手で触れ、わずかな違いを感じ取りながら形を決めていきます。
- 「使うための美しさ」:急須もグラスも、単なる鑑賞用ではなく、日々の暮らしの中で使われる道具です。だからこそ、持ちやすさや口当たりといった実用性と、美しさのバランスが重視されます。
- 世代を超える継承:工房には、親から子へ、師匠から弟子へと技を伝える物語があります。若い世代が新しい感性を持ち込みながらも、基本の技は変わりません。
2025年のいま、なぜ伝統工芸なのか
デジタル技術が生活の隅々まで入り込み、大量生産の製品が簡単に手に入る2025年。そんな今だからこそ、紫砂急須やクリスタルガラスのような「時間のかかったもの」に価値を感じる人が増えています。
一つ一つの器には、素材を選び、形を決め、仕上げていくまでのストーリーがあります。画面越しの画像では伝わりきらない重さや質感、手に持ったときの温度の変化。それらを味わうことは、ゆっくりとお茶を淹れたり、グラスを傾けたりする時間そのものを大切にすることでもあります。
「Crossing Cultures」が映し出す交差点
「Crossing Cultures」の視点は、単に工房を紹介するだけではありません。中国東部とフランス北東部という離れた地域で、似たような葛藤や希望が語られていることにも注目します。
- どうやって若い世代に技を受け継いでもらうか。
- 観光客や海外のファンに向けて、どこまでデザインを変えてよいのか。
- 伝統を守りながら、現代の生活スタイルに合わせるにはどうすればよいのか。
取材を通じて見えてくるのは、「伝統」と「変化」は対立ではなく、ともに歩むものだという感覚です。紫砂急須もクリスタルガラスも、過去のまま止まっているのではなく、時代ごとに少しずつ姿を変えながら生き続けています。
私たちの暮らしへの小さなヒント
この記事を読んでいる多くの人にとって、宜興やサン=ルイ=レ=ビッシュは遠い土地かもしれません。それでも、紫砂急須やクリスタルガラスの物語は、私たちの日常ともつながっています。
- いつも使っているマグカップやグラスの「つくり手」を想像してみる。
- 長く使えるものを一つ選んで、丁寧に付き合ってみる。
- 旅先やオンラインで、作り手の顔が見える器を選んでみる。
そうした小さな選択の積み重ねが、海の向こうの工房とも静かにつながっていきます。
紫砂急須とクリスタルガラス。東と西、土とガラスという違いを超えて、私たちに「ものを大切にする時間」の価値を静かに語りかけているのかもしれません。
Reference(s):
The shared traditions of Zisha teapot and crystal glass making
cgtn.com








