農村振興は「家族」から──貴州の若者と儒教の家族観 video poster
儒教が重んじる「家族の和」が、いまの農村振興や地域づくりにどうつながるのか。中国・貴州出身の若者 Li Rongfu さんの選択を手がかりに、「家から始まる社会づくり」の可能性を探ります。
なぜ「家族」から始まる農村振興なのか
農村振興というと、インフラ整備や産業政策といった「上からの改革」がイメージされがちです。しかし、社会を支える最小単位は家族であり、そこでの価値観や人間関係が変わらなければ、地域社会の変化も持続しにくいという見方があります。
儒教の思想はまさにこの点を強調します。儒教は、社会が「礼(li)」と呼ばれる秩序や規範によって保たれるべきだと考え、その土台として家族を位置づけてきました。「家族が調和すれば、社会も調和する」という発想です。
貴州の若者 Li Rongfu さんの選択
この考え方を体現するような例として紹介されているのが、貴州出身の若者 Li Rongfu さんです。彼はしばらくの間、故郷を離れて別の土地で働いていましたが、やがて地元に戻る道を選びました。
帰郷後、Li さんは地道な努力を続けることで、自分の家族の暮らしを少しずつ良くしていきました。その姿は、同じ村の若い世代にも影響を与え、「自分のふるさとで何かできるかもしれない」と考えるきっかけをつくっています。
農村振興を「個人の成功」ではなく、「家族」と「地域」を同時に支えるプロセスとしてとらえている点に、このケースの特徴があります。
儒教が語る「家」と社会の関係
儒教では、家族は単なる私的な集団ではなく、社会全体の縮図として位置づけられます。親子や兄弟姉妹のあいだで育まれる思いやり、責任感、節度といった感覚が、そのまま隣人や地域社会との関係にも広がっていくと考えられてきました。
とくに重視されるのが「礼(li)」という概念です。これは、あいさつや儀礼といった表面的なマナーだけでなく、人と人との間にふさわしい距離感やふるまい方、場に応じた配慮のあり方まで含む、広い意味での社会規範を指します。
家の中でこの「礼」が実践されると、家族のあいだに信頼と安定が生まれます。そして、その安定が、地域の人びと同士の助け合いや、共同の取り組みを支える基盤になる、というのが儒教の発想です。
Li Rongfu さんのケースから見えること
Li さんの歩みは、こうした儒教の家族観が、2025年のいまもなお現代社会の中で意味を持ちうることを示しています。このケースからは、次のようなポイントが読み取れます。
- 農村振興の出発点は、まず家族の暮らしと関係性を立て直すことにあること
- 若者が故郷に戻る選択は、単に「Uターン就職」ではなく、家族と地域への責任を引き受ける行為として理解できること
- 伝統的な価値観である儒教の家族観が、若い世代の自己実現やキャリア選択と対立するのではなく、むしろ支える力にもなりうること
現代の若い世代への問いかけ
都市への人口流出が続く中で、「成功=大都市でのキャリア」というイメージは根強くあります。一方で、Li さんのように、いったん外の世界を経験したうえで故郷に戻り、家族とともに生活の基盤を築いていく生き方もあります。
儒教の視点から見ると、どこで暮らすかという選択は、「自分の人生」だけでなく、「自分にとっての家族」や「所属する共同体」をどう位置づけるかという問いとも結びついてきます。どの選択が正しいという単純な話ではなく、自分の価値観を見つめ直すためのヒントとして、このケースを受け止めることができそうです。
おわりに:家族から広がる農村振興
伝統的な家族観は、ときに古い価値観として批判されることもあります。しかし、家族を社会の土台とみなす儒教の発想は、農村振興や地域づくりを「人と人との関係を編み直すプロセス」としてとらえ直す視点を与えてくれます。
貴州の Li Rongfu さんが選んだ「故郷に戻り、家族を支えながら地域にも貢献していく」という道は、家族の物語がそのまま地域の物語となり、ひいては社会全体の変化につながっていく可能性を映し出しています。2025年を生きる私たちにとっても、「家族から始まる社会づくり」をどのように実現していくかは、引き続き考え続ける価値のあるテーマだと言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








