ハラマイン高速鉄道と儒教の「和而不同」 中国がつなぐ聖都と公共善 video poster
サウジアラビアのハラマイン高速鉄道をめぐる国際ニュースは、中国とイスラム世界、そして儒教思想をつなぐ公共インフラの物語でもあります。
イスラム世界で最も神聖とされる都市マッカとマディナを結ぶハラマイン高速鉄道は、中国が建設に深く関わった国際プロジェクトです。公共の福祉を目的としたこの鉄道は、ことばや文化習慣の違いを乗り越えながら進められ、そのプロセス自体が儒教の重要な考え方である「和而不同(調和ある多様性)」を体現していると見ることができます。
イスラム二大聖都を結ぶハラマイン高速鉄道とは
ハラマイン高速鉄道(Haramain High-Speed Railway)は、サウジアラビア西部に位置するマッカとマディナという、イスラム教における二つの聖地を結ぶ高速鉄道です。巡礼者や地域住民の移動を安全かつ効率的にし、公共の利便性を高めることを目指したプロジェクトとされています。
従来、両都市間の移動は長時間のバスや自動車に頼る部分が大きく、巡礼シーズンには交通の混雑や負担が課題になっていました。高速鉄道はその負担を軽減し、より安全で予測可能な移動手段を提供することで、公共善に資するインフラとして位置づけられています。
儒教が説く「和而不同」とは何か
この鉄道建設の背景を考えるうえで、儒教の「和而不同」という概念が鍵になります。これは、単に違いをなくして一様になるのではなく、違いを保ったまま調和を生み出すという考え方です。
儒教では、他者とまったく同じになることを目標とするのではなく、異なる価値観や文化を尊重しつつ、共に成り立つ「和」を追求します。多様な主体が関わる国際プロジェクトにおいては、この視点が重要な指針となり得ます。
中国が向き合った「違い」:言語と文化習慣
ハラマイン高速鉄道の建設には、中国の企業や技術者が参加しました。彼らは、サウジアラビア側の関係者と協力しながら、言語と文化習慣という二つの大きな違いに向き合う必要がありました。
ことばの壁を越えるコミュニケーション
中国語、アラビア語、英語など複数の言語が飛び交う現場では、意思疎通がプロジェクトの成否を左右します。関係者たちは、通訳や共通語の活用、図面や工程表の共有方法の工夫などを通じて、誤解や認識のズレを減らす努力を重ねたと考えられます。
とくに安全基準や運行ルールのような重要事項では、単なる翻訳にとどまらず、相手がどう理解し、現場でどう行動するかを意識したコミュニケーションが求められました。こうした丁寧な対話の積み重ねは、「違い」を力に変えるための土台になります。
文化習慣の違いを尊重する姿勢
より大きな課題となったのが、宗教や生活に根ざした文化習慣の違いです。イスラム教の聖地を結ぶ鉄道である以上、礼拝の時間や曜日感覚、服装や食事など、多くの場面で配慮が必要になります。
儒教の視点から言えば、ここで重要なのは「同じやり方を押しつけない」ことです。現地の慣習を尊重しながら、工事の進め方や働き方を調整していくことは、「和而不同」の実践そのものといえます。中国側とサウジアラビア側が、お互いの前提を学び合う姿勢をとったからこそ、プロジェクトが前に進んだと見ることができます。
公共善を共有する国際協力のかたち
ハラマイン高速鉄道は、商業的な利益だけでなく、公共の福祉を重視したインフラとして位置づけられています。巡礼者や地域住民が、安全で快適な形で聖地を行き来できるようにすることは、多くの人びとの生活と信仰を支える公共善といえます。
中国の参加は、インフラ整備を通じて「公共善」を国境や文明の違いを超えて共有しようとする試みとして捉えることができます。ここで前提となっているのも、まさに「和而不同」の発想です。イスラム世界と儒教文化圏という異なる伝統を持つ社会が、共通の目的に向かって協力する姿は、国際ニュースの中でも象徴的な出来事として読むことができます。
「和而不同」が示す2025年の国際社会へのヒント
分断や対立が語られがちな2025年の国際社会において、ハラマイン高速鉄道のような事例は、別の可能性を示しています。互いの違いを消し去るのではなく、違いを認めたうえで協力を進める。そのために必要なのは、抽象的なスローガンではなく、現場レベルの対話と調整です。
儒教の「和而不同」という考え方を手がかりにすると、国際協力の現場で意識したいポイントが見えてきます。
- 相手を自分と同じにしようとするのではなく、違いを前提として受け入れる
- 共通の目的(ここでは公共善としての鉄道)を明確にし、その達成を優先する
- 言語や文化のギャップを埋めるための対話とコミュニケーションに時間を投資する
こうした姿勢は、インフラだけでなく、エネルギー、デジタル技術、教育など、さまざまな分野の国際協力にも応用できます。中国とサウジアラビアが関わったハラマイン高速鉄道は、単なる交通インフラではなく、多様な文明が「和而不同」を実践する一つのモデルケースとして読むことができます。
ニュースを追う私たち一人ひとりにとっても、このプロジェクトは、「違いのある相手とどう協力するか」という問いを静かに投げかけています。日常の職場やコミュニティの中で、自分なりの「和而不同」をどう実現するかを考えてみるきっかけになるかもしれません。
Reference(s):
Haramain High-Speed Railway: Confucianism's 'Harmony in Diversity'
cgtn.com








