絹で描く中国の伝統織物Kesi──「painting in silk」の世界
中国の伝統的な絹織物の芸術であるKesiは、まるで絵画を描くように糸で表現することから、英語で「painting in silk」とも呼ばれます。何世紀にもわたって受け継がれてきたこの技法は、一枚ごとに異なる物語と圧倒的な手仕事の細かさをたたえています。
Kesiとは何か──絵画のような絹のアート
Kesiは、中国で育まれてきた伝統的な織物の芸術です。特徴は、織物でありながら、完成した作品がまるで一幅の絵画のように見える点にあります。絹糸が丁寧に織り込まれ、絵の具ではなく糸によって線や面が描き出されていきます。
一つ一つの作品には、細部までこだわり抜いた職人の技が込められています。遠くから眺めると絵画のように見え、近づいて初めて、無数の絹糸が織り重なっていることが分かる──そんな視覚的な驚きも、Kesiならではの魅力です。
独自の「cut weft」技法が生む精緻な表現
Kesiを語る上で欠かせないのが、「cut weft」と呼ばれる独特の技法です。この技法によって、糸はただ布地を作るためだけでなく、線や陰影、質感を描き分けるための表現手段となります。
結果として、Kesiの作品には次のような特徴が生まれます。
- 絵画のように細部まで描き込まれたイメージ
- 滑らかなグラデーションや陰影が感じられる質感
- 一枚ごとに高度な熟練を要する、密度の高い仕上がり
「織る」と「描く」の境界を揺さぶるこの表現は、織物の技術でありながら、絵画や彫刻と同じレベルの芸術性を感じさせます。
孔雀、鶴、馬、虎──生き物がいきいきと浮かび上がるデザイン
Kesiには、多彩なモチーフが登場します。なかでも印象的なのは、生き物を描いたデザインです。
- 優雅に羽を広げる孔雀
- 静かに立つ気高い鶴
- 躍動感あふれる馬
- 遊ぶように動き回る虎
これらのモチーフは、単に写実的に描かれるだけではありません。Kesiならではの柔らかな線と、絹糸の光沢が組み合わさることで、どこか穏やかで気品のある雰囲気が生まれます。
動物たちは力強さと同時に、静けさや優美さもたたえています。見る人は、その一瞬のしぐさやまなざしから、物語や感情を思い浮かべることができるでしょう。
「柔らかさ」と「なめらかさ」がつくるKesiの世界観
Kesiの作品には、共通して「柔らかく、優雅」という印象があります。これは、絹糸ならではの光沢と、色同士が自然に溶け合うように配置されていることによるものです。
滑らかな絹の糸が途切れなく続いているように見えるため、色の境目があまり強調されず、全体として穏やかで美しい調和が感じられます。激しいコントラストで主張するのではなく、静かに、しかし確かに目を引きつける──そんな視覚体験を与えてくれます。
デジタル時代にどう味わうか
スクリーン越しの画像に慣れた私たちにとって、糸一本一本を積み重ねて作られたKesiの世界は、時間と手間を感じさせる存在でもあります。そこには、すぐに消費される情報とは対照的な、ゆっくりと積み上げられた美しさがあります。
国際ニュースや世界の文化に関心を持つ読者にとって、Kesiは中国の伝統を知る手がかりであると同時に、「ものをじっくり見る」という体験を思い出させてくれるアートでもあります。孔雀や鶴、馬や虎といったモチーフを通じて、絹で描かれた静かな物語に耳を傾けてみるのもよさそうです。
Reference(s):
cgtn.com








