春節ガラ2025「The Pen Writes the Dragon and Snake」が描く書と武術の融合 video poster
China Media Group(CMG)の2025年春節ガラで披露された演目「The Pen Writes the Dragon and Snake」は、書道と武術という二つの伝統文化を一つのステージに融合させ、その芸術性と思想性をあらためて浮かび上がらせました。本記事では、その演出の流れと背景にある意味を、日本語で分かりやすくひもときます。
書道と武術――中国文化を象徴する二つの芸術
中国は、長い歴史の中で育まれてきた深い文化遺産を誇っています。その中でも、書道と武術は、単なる技能を超えた「芸術」と「思想」の象徴として位置づけられてきました。筆の運びに心を込める書と、身体の動きに精神を宿す武術は、ともに内面の状態を可視化する表現でもあります。
2025年の春節ガラでは、この二つの伝統が一体となり、視覚的にも哲学的にも豊かなステージとして提示されました。それが、演目「The Pen Writes the Dragon and Snake」です。
李白の詩から生まれた「The Pen Writes the Dragon and Snake」
この演目は、李白の詩「A Ballad of Cursive Script」に着想を得ています。詩の中では、草書の筆致が龍や蛇のうねるような動きになぞらえられ、その流麗さと力強さが表現されています。
ステージでは、そのイメージが視覚化されました。書の線が紙の上を走るのではなく、舞台空間を駆けめぐる動きとして立ち上がり、観客は「書かれた文字」ではなく「書くという行為」そのものを体感する構成になっています。
ドニー・イェンが導く、書と武術の出会い
演目は、武術家であるドニー・イェンが一枚の草書作品を鑑賞する場面から始まります。静かに書を見つめる姿が、これから始まる物語への入口となり、観客の視線を自然と書の世界へと導きます。
そこから舞台装置がゆっくりと変化していきます。回転する円卓が巨大な硯へと姿を変え、その上に広がる空間が「一滴の墨」を受け止める場として立ち上がります。
やがて太極拳のパフォーマーが登場し、その身体が墨そのものを象徴します。重心を低く保ちながら流れるように動く太極拳の所作が、草書の線のうねりと重なり合い、墨が紙の上を走る瞬間を身体表現として描き出していきます。
ステージの流れを3つの場面で整理すると
- ドニー・イェンが草書作品を鑑賞し、書の世界への扉を開く
- 回転する卓が硯へと変化し、舞台全体が「書の空間」に変わる
- 太極拳のパフォーマーが墨を体現し、龍や蛇のような動きで草書のリズムを描く
こうして、書道と武術はそれぞれ別の芸術として並べられるのではなく、一本の筆と一つの身体が同じリズムで動く「一体の表現」として提示されました。
テレビが映し出す「動く書」のおもしろさ
今回の春節ガラのステージは、書道を「完成した作品」ではなく、「完成に向かうプロセス」として見せる試みでもありました。筆が紙の上を走る速度、迷い、決断――その一つひとつを、武術の動きに置き換えることで、視聴者は書のダイナミズムを直感的に感じ取ることができます。
また、静止画では伝わりにくい草書の魅力を、カメラワークや照明といったテレビならではの手法と組み合わせることで、より多くの人に届く形に翻訳しているとも言えます。伝統文化を「遠いもの」にしない工夫が、ステージ全体に散りばめられていました。
私たちに投げかけられる三つの問い
この演目は、華やかなパフォーマンスであると同時に、私たちに次のような問いも投げかけているように見えます。
- 伝統とは何か:形を守ることだけが伝統なのか、それとも新しい表現と結びつきながら受け継がれていくものなのか。
- 身体と言葉の関係:筆で書く「ことば」と、身体で表現する「動き」は、どのように響き合うのか。
- メディアの役割:テレビという場は、古くから続く芸術を現代の観客にどのように見せ直すことができるのか。
2025年の春節ガラで披露された「The Pen Writes the Dragon and Snake」は、書道と武術という二つの象徴的な文化を通じて、こうした問いを静かに投げかけるステージでもありました。ニュースとしてこの演目を振り返ることは、私たち自身の文化との向き合い方を考え直すきっかけにもなります。
Reference(s):
Spring Festival Gala celebrates artistry of calligraphy, martial arts
cgtn.com







