哪吒2のアオロンを彩るドン族の大歌とは?中国アニメと伝統音楽 video poster
映画「哪吒2(Ne Zha 2)」で、西海の美しい龍の女王アオロン(Ao Run)が初めて姿を現すシーン。その背景で流れる音楽は、中国のドン族による多声合唱「Grand Song of the Dong(Kam Grand Choirs)」です。力強くも繊細な合唱が、キャラクターの存在感と物語世界をどのように深めているのでしょうか。
「哪吒2」でアオロン登場を彩るドン族の大合唱
2025年現在、多くの視聴者が注目しているアニメ映画「哪吒2」では、西海の龍の女王アオロンが登場する場面で、オーケストラではなく伝統的な民謡合唱が背景音楽として選ばれています。それが、ドン族の多声合唱「Grand Song of the Dong」、英語名でKam Grand Choirsです。
複数の声部が重なり合う独特のハーモニーは、海の深さや神秘性、アオロンというキャラクターの気高さを、言葉に頼らずに表現しているように感じられます。
Grand Song of the Dongとは何か
Grand Song of the Dongは、中国の少数民族であるドン族(Dong ethnic group)の多声民謡です。複数の村から集まった人びとが一緒に歌い、基本的に楽器は使わず、声だけで豊かな響きをつくり出します。
歌の内容は、ドン族の歴史や信仰、暮らしの習慣、そして人びとの感情を描いたものが中心です。この合唱は、ドン族の文化的なアイデンティティの核であり、コミュニティの結びつきを強める重要な役割を担っています。
文字を持たない言葉を、声で受け継ぐ
Grand Song of the Dongは、主に文字を持たないドン語で歌われます。そのため、この歌は楽譜や書き言葉ではなく、世代から世代へと口頭で受け継がれてきました。
長い時間をかけて磨かれてきたメロディーや歌詞は、祖父母から孫へと直接伝えられます。歌うこと自体が、歴史や知恵を学ぶ行為になっているのです。
物語から恋歌まで、多彩なジャンル
Grand Song of the Dongには、いくつかのジャンルがあります。たとえば、次のようなものです。
- 物語を語る「叙事的な歌」
- 男女の思いを歌う「恋の歌」
- 酒席で歌われる「酒の歌」
- 別れや弔いの場で歌われる「葬送の歌」
歌に合わせて、手拍子や足踏み、簡単な踊りが添えられることも多く、音楽と身体のリズムが一体となって場の空気をつくり出します。
こうした歌は、祭りや結婚式、葬儀など、人生の節目や地域の行事の場で歌われます。Grand Song of the Dongは、自然と調和しながら生きてきたドン族の知恵と創造性、そして共同体の一体感を映し出しています。
アオロンのシーンに込められた意味をどう読むか
では、なぜ「哪吒2」の制作側は、アオロンの登場にこの合唱を選んだのでしょうか。公式な説明がなくても、いくつかの読み解き方が考えられます。
- 複数の声が重なり合うハーモニーは、「一人ではない存在」、すなわち海や自然、精霊といった集合的な力を感じさせる。
- 楽器に頼らない人の声だけの音楽は、神話のような古い世界観や、大地とつながった感覚を呼び起こす。
- 少数民族の伝統音楽を取り入れることで、物語世界に「多様な文化が共存する」というニュアンスをさりげなく加えている。
アオロンは、西海を統べる龍の女王というだけでなく、自然や共同体を象徴する存在としても描かれている、と見ることもできます。その背景でGrand Song of the Dongが流れることで、シーン全体に厚みが増し、画面の外側に広がる文化的な世界を想像させてくれます。
2025年の視聴者にとっての楽しみ方
2025年の今、「哪吒2」のようなアニメ作品は、オンライン配信やSNSを通じて国境を越えて共有されています。そのなかでGrand Song of the Dongのような伝統音楽に触れることは、物語を楽しむだけでなく、アジアの多様な文化に出会うきっかけにもなります。
映画を見終わったあと、アオロンのシーンを思い出しながら、この合唱に耳を澄ませてみるのもおすすめです。どの声が主旋律なのか、どのように掛け合いが生まれているのかに注目すると、同じ場面でも新しい発見があるはずです。
エンターテインメントとしてのアニメと、地域の伝統文化。その二つが交わるところから、私たちの世界の見え方は静かに広がっていきます。
Reference(s):
The Kam Grand Choirs background music of Ao Run in 'Ne Zha 2'
cgtn.com








