宋・元代の味を現代に再現 研究者が挑む110の歴史料理 video poster
宋代と元代の人びとは、どんなものを食べ、どんな味を楽しんでいたのでしょうか。研究者のXu Liさんは、古い文献を読み解きながら110種類の歴史料理を再現し、失われた味と食文化を現代によみがえらせています。
何百年も前の「日常の味」に迫る試み
今回の研究の舞台は、中国史の中でも文化や都市生活が大きく発展した宋代と元代です。Xu Liさんは、当時の人びとの食卓を知るために、詩や随筆、料理書などの古文書を長年かけて読み込み、そこに記された料理を一つひとつ現代のキッチンで再現してきました。
再現された料理は110品にのぼります。華やかな宴席料理から、日常の家庭料理まで幅広く含まれており、「歴史の中の食生活」を立体的に思い浮かべる手がかりになっています。
古文書をレシピに変える:研究の進め方
古い文献に残された料理の記述は、現代のレシピのように分量や手順が細かく書かれているとは限りません。「少々」「ほどよく」といった表現や、当時の常識を前提とした簡略な説明が多く、Xu Liさんはそこから材料や火加減、調理時間を推測していきました。
- 複数の文献を照らし合わせて材料や調理法を補っていきます
- 現在手に入る食材で、できるだけ当時に近いものを選びます
- 味見を重ね、文献中の表現や比喩と合う味を探っていきます
こうした試行錯誤を通じて、文字情報だった「歴史の料理」は、実際に香りと味を持つ一皿としてテーブルの上に戻ってきました。
印象的な一皿たち:カニ入りオレンジと梅の花の菓子
カニを詰めたオレンジ
なかでも目を引くのが、オレンジの中身をくり抜き、その器にカニの身を詰めた料理です。柑橘のさわやかな香りと、海の旨味が重なる一皿は、見た目も華やかで、宴席を飾るごちそうだったと考えられます。果物と海産物を組み合わせる発想からは、当時の料理人の遊び心と技術の高さが感じられます。
梅の花のスープ菓子
もう一つの代表的な料理が、梅の花をかたどったスープ仕立ての菓子です。薄い生地や餅を梅の花の形に整え、温かい汁に浮かべることで、器の中に春の情景がそのまま再現されたような一品になります。味だけでなく、季節感や詩的なイメージを大切にしていた当時の美意識が伝わってきます。
歴史料理から見えてくるもの
こうした復元料理は、単なる「昔のグルメ紹介」にとどまりません。当時の人びとの暮らし方や価値観、技術レベルを読み解く手がかりにもなります。
- どんな食材が使われていたかから、交易や物流の広がりが見えてきます
- 味付けの傾向から、甘味や香辛料に対する好みがわかります
- 盛り付けや器の使い方から、宴席文化やもてなしの感覚が伝わってきます
歴史書の年表や政治の動きだけでは見えにくい「日常の時間」が、料理を通して具体的なイメージを持ちはじめます。
「伝統料理」は変化し続ける
私たちは「伝統料理」と聞くと、長い歴史の中で変わらず受け継がれてきたイメージを抱きがちです。しかし、宋代や元代の料理を現代の感覚で味わうと、身近な料理との共通点や、すでに失われてしまった要素の両方が見えてきます。
Xu Liさんの取り組みは、伝統とは固定されたものではなく、時代とともに姿を変えながら続いていくプロセスなのだということを、具体的な「一皿」を通して教えてくれます。いま私たちが何気なく選んでいる味も、何百年後かには「歴史の料理」として研究されるかもしれません。
忙しい日々のなか、コンビニやデリバリーで済ませがちな食事も、遠い未来から見れば貴重な文化資料になり得ます。宋代と元代の復元料理は、そんな時間のスケールで自分たちの食卓を見直してみようかと思わせるきっかけになりそうです。
Reference(s):
Researcher recreates dishes from the Song and Yuan dynasties
cgtn.com








