中国南部・広州の金漆木彫 住まいを飾ってきた千年の工芸
中国南部・広州で1000年以上にわたって受け継がれてきた伝統工芸「金漆木彫」。きらびやかな金と漆で飾られた木彫は、かつて人々の住まいや礼拝の場を彩り、いまは広州省立博物館に収められた歴史の証しとなっています。
南中国の住まいを飾った「金漆木彫」とは
中国南部の広州で人気を集めてきた金漆木彫は、木材を細かく彫り込んだあと、漆を塗り、金で仕上げる装飾技法です。繊細な彫刻とまばゆい金色が組み合わさり、住宅の梁や欄間、家具、祭壇などに取り付けられることで、日常空間そのものを一つの美術作品のように見せてきました。
ただの飾りではなく、吉祥を呼び込む動物や植物、故事を題材にした場面などが刻まれ、家族の願いや地域の信仰を映し出す役割も担っていました。こうした意味づけが、長い年月にわたって人々に愛されてきた理由の一つといえます。
唐から明・清へ 1000年以上続く歴史
金漆木彫が姿を現したのは、今からおよそ1000年以上前の唐代とされています。その後、明代から清代にかけて技法や意匠が大きく発展し、広州を中心に最盛期を迎えました。
当時の広州では、金漆木彫は次のような場面で広く使われていたとされています。
- 住宅の玄関や室内空間を飾る欄間や屏風
- 寺院や祠など、礼拝の場に置かれる祭壇や装飾板
- 婚礼や祝祭を彩るための仮設の飾り
豪華な木彫は、単に富の象徴というだけでなく、家を守る、祖先を敬うといった価値観を目に見える形にする装置でもありました。家の中に刻まれた物語を眺めることは、暮らしながら歴史や信仰に触れることでもあったのです。
広州省立博物館に収められた「住まいの記憶」
現在、広州省立博物館には、こうした金漆木彫の遺品が数多く収集されています。いずれも何百年も前に作られた作品でありながら、当時の工芸技術の高さと、日常空間へのこだわりをいまに伝えています。
かつては家々の壁や屋根の一部だった木彫が、博物館に収められることで美術品として見直されるようになりました。展示室で一つひとつのモチーフを眺めていくと、そこに暮らしていた家族の姿や、祈りを捧げる人びとの時間が静かによみがえってくるようです。
デジタル時代に考えたい装飾と暮らしの関係
2025年のいま、私たちの住まいを彩るものは、量産されたインテリアやデジタル画面が中心になりつつあります。その一方で、金漆木彫のように、時間と手間をかけて作られた装飾が長い歴史を生き延びてきた事実は、何を大切に飾るのかという問いを投げかけます。
国際ニュースとして伝えられるのは、経済や安全保障だけではありません。中国南部・広州の住まいを飾ってきた金漆木彫の物語は、文化や暮らしの視点から世界を見つめ直すヒントにもなります。
一つの木片に込められた物語や祈りに目を向けることは、自分たちの部屋や街にどんな意味を託しているのかを考え直すきっかけにもなりそうです。遠い地域の伝統工芸を知ることは、同時に自分の足元の暮らしを見つめることでもあるのかもしれません。
Reference(s):
Gold and lacquer wood carvings adorn dwellings in south China
cgtn.com








