敦煌壁画でたどる唐代建築 莫高窟172窟の宮殿世界
敦煌壁画でたどる唐代建築の世界
敦煌の壁画は、古代の建築や都市の姿を今に伝える貴重な「ビジュアル資料」です。世界の動きや国際ニュースに関心を持つ読者にとっても、歴史の中の空間デザインを知ることは、今を考えるヒントになります。本記事では、その中でも唐代(618〜907年)の建築が鮮やかによみがえる莫高窟172窟に注目し、その魅力をコンパクトに紹介します。
莫高窟172窟に描かれた壮麗な宮殿群
莫高窟172窟の8世紀の壁画には、唐代の建築技術と美意識が凝縮された壮大な宮殿コンプレックスが描かれています。複数の建物が連なり、門や回廊、楼閣がひとつの世界を形づくるようすが、一枚の壁面の中に緻密に構成されています。
観る人は、絵の前に立つだけで「宮殿の中庭に足を踏み入れた」ような感覚をおぼえます。これは、単なる装飾ではなく、空間全体を体験させようとする意図的な構図づくりだと考えられます。
唐代建築の「立体感」をどう描いたのか
この壁画が印象的なのは、唐代建築のボリューム感や奥行きが、平面の壁の上にありありと再現されている点です。屋根の重なり、建物どうしの前後関係、通路の広がりなどを巧みに配置することで、立体的な都市空間が伝わってきます。
現代の私たちが「パース(遠近法)」と呼ぶような感覚が、絵師たちの優れた空間把握能力として表現されていると言えるでしょう。
「空間認識力」が物語るもの
莫高窟172窟の宮殿壁画は、「remarkable spatial awareness(優れた空間認識)」という言葉で語られることがあります。一つひとつの建物はシンプルな線と色で描かれながら、全体としては複雑で生き生きとした都市景観として成立しています。
これは、絵師たちが現実の建築空間をよく観察し、その構造を頭の中で再構成できていたことを示しています。同時に、鑑賞者が絵の中を視線で歩き回れるような「物語性のある空間設計」を意識していたとも考えられます。
敦煌壁画を「歴史資料」として読む
敦煌の唐代壁画は、装飾としての美しさだけでなく、当時の建築スタイルや都市のイメージを知る手がかりにもなります。文字だけではつかみづらい建物のスケール感や配置関係が、視覚的にわかるからです。
もちろん、壁画は理想化された世界であり、現実の街並みをそのまま写したものとは限りません。それでも、当時の人びとが「美しい宮殿」「理想の都市」をどうイメージしていたのかを読み解くヒントとして、非常に価値の高い資料だと言えます。
デジタル時代にどう楽しむか
モバイル端末で高精細な画像を拡大しながら観察すると、柱の一本一本、屋根の曲線、窓の配置など、唐代建築の細部が驚くほどクリアに見えてきます。短いスキマ時間でも、ひとつの壁画の中に潜り込むような鑑賞体験ができます。
敦煌壁画に描かれた唐代の宮殿世界は、現代の都市づくりやデザインを考えるうえでも、空間のつくり方や「人が集う場」のイメージについて新たな視点を与えてくれます。過去の絵の中に、未来の都市のヒントを探してみるのもおもしろいかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








