敦煌莫高窟の壁画に描かれた五台山・仏光寺とは?
中国北部の山西省にある五台山と、千キロ以上離れた敦煌の莫高窟。そのあいだを結ぶ鍵の一つが、莫高窟の壁画に描かれた五台山と仏光寺です。本記事では、この仏教聖地どうしをつなぐ壁画の意味を、日本語で分かりやすく整理します。
五台山:文殊菩薩の「ホーム・シュライン」
五台山は、中国北部の山西省に位置する山岳信仰の中心地で、知恵を象徴する菩薩・文殊菩薩(マンジュシュリー)の聖地とされています。仏教の世界観のなかで、文殊菩薩は「智慧の菩薩」として学問や思索を守護する存在とされてきました。
その文殊菩薩の「ホーム・シュライン(本拠の聖地)」として、五台山は長く崇敬を集め、多くの人びとが教えと知恵を求めて山を訪れてきたとされています。
唐代に栄えた五台山の仏教文化
唐の時代、五台山には各地から多くの高僧や要人が集まりました。仏教が急速に発展したことで、山中には数多くの寺院が建立され、五台山一帯は大きな宗教都市のような姿になっていきます。
寺院の増加は単なる建築ラッシュではなく、次のような意味をもっていました。
- 仏教教義の学びの場が増えたこと
- 文殊菩薩への信仰が広範囲に浸透したこと
- 権力者や知識人が信仰を通じて交流する舞台になったこと
五台山はこうして、信仰・学問・政治が交差する、唐代を代表する仏教拠点の一つとなっていきました。
千キロ離れた敦煌莫高窟に描かれた五台山
五台山からおよそ1,000キロ以上離れた地点にあるのが、シルクロードの要衝・敦煌の莫高窟です。数多くの石窟と壁画で知られる莫高窟のなかには、五台山を生き生きと描いた壁画が存在し、その中に名高い仏光寺の姿も描かれています。
遠く離れた敦煌で、なぜ五台山と仏光寺が描かれたのでしょうか。そこには、次のようなメッセージが読み取れます。
- 五台山が唐代の人びとにとって、遠方にまで知られる有名な聖地だったこと
- 莫高窟の壁画が、単なる装飾ではなく、「地図」や「案内図」のような役割も果たしていたこと
- 仏教の教えと巡礼ネットワークが、広大な地域をつないでいたこと
仏光寺が象徴するもの
壁画に描かれている仏光寺は、五台山ゆかりの寺院として名高い存在です。文殊菩薩の聖地に建つ寺院として、仏光寺は五台山そのものの象徴でもあります。
莫高窟の壁画に仏光寺が描かれていることは、五台山の信仰が具体的な建物のイメージと結びついて、見る人の心に強く訴えかけていたことを示しています。巡礼に出られない人であっても、壁画を通して五台山の雰囲気や信仰のイメージを共有できたと考えられます。
壁画が教えてくれる「距離を超えるつながり」
五台山と莫高窟の距離は1,000キロ以上とされていますが、信仰とイメージの世界では、その距離は壁画によって縮められていました。
この壁画から見えてくるポイントを整理すると、次のようになります。
- 地理を超えるネットワーク:遠く離れていても、聖地どうしは信仰と情報の流れで結ばれていたこと
- 視覚メディアとしての壁画:文字だけでなく、絵によって信仰や教えが伝えられていたこと
- 知恵への憧れ:文殊菩薩の聖地を描くことは、知恵や学びへの憧れを共有する行為でもあったこと
2025年の私たちへの問いかけ
いま、世界各地で文化遺産や仏教美術への関心が高まっています。五台山と敦煌莫高窟を結ぶ壁画の存在は、2025年の私たちに次のような問いを投げかけているようにも見えます。
- 私たちは、どのような「知恵」を求めて旅をし、情報を共有しているのか
- デジタル技術が発達した現代において、壁画のような「ビジュアルな物語」をどう生かせるのか
- 異なる地域と文化を、対立ではなく学び合いの関係として結ぶ視点を持てているか
五台山の仏光寺を描いた敦煌莫高窟の壁画は、歴史の一場面であると同時に、距離や時代を超えた「つながりの作り方」を静かに教えてくれる存在でもあります。スマートフォンで世界中の情報に触れられる今だからこそ、この壁画に込められた視線に、改めて耳を傾けてみる価値がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








