中国唐代木造建築の宝、佛光寺東大殿 深山が守った古刹の物語 video poster
中国の深い山あいにたたずむ古刹・佛光寺。その東大殿は、中国に現存する中で最大の唐代木造建築とされ、静かな鐘の音とともに、長い時間の層をいまに伝えています。本記事では、この建築の魅力と、深山がどのようにしてこの「建築宝物」を守ってきたのかを、日本語でわかりやすく整理します。
中国の唐代木造建築「佛光寺東大殿」とは
佛光寺東大殿は、中国で現存する唐代木構造の建物の中で、最大規模とされています。木造建築が火災や戦乱、改築によって失われやすいことを考えると、その存在自体がきわめて貴重です。
堂内外には唐代ならではの落ち着いた均整と量感が漂い、その「唐韵」の雰囲気が訪れる人を静かに包みます。建物全体の姿、屋根の反り、柱の太さや間隔などが、控えめでありながら力強いリズムをつくり出しています。
深山が守った建築の「宝箱」
「深山がこの建築宝物をどのように庇護してきたのか」。こうした問いが生まれるほど、佛光寺は人里離れた環境にあります。
交通の便が限られていた時代、このような深山の寺は、次のような意味で建築を守る「盾」の役割を果たしてきました。
- 戦いや大規模な都市開発の波を受けにくい
- 頻繁な改築・増改築の対象になりにくい
- 地元の人びとによって、信仰の場として静かに守られ続ける
こうして、佛光寺東大殿は、唐代の木造建築の姿を比較的よく保ったまま現代まで伝えてきたと考えられます。
梁思成が山を越えてたどり着いた「唐代の面影」
佛光寺東大殿の価値を広く知らしめた存在として、建築学者・梁思成の名が語られます。彼は仲間とともに、この建築の「瑰宝」を求めて山々を越え、深い谷をわたりながら現地を訪れました。
ようやく東大殿と対面したとき、一行を圧倒したのは、まさに「唐韵遗风」、すなわち唐代の気配を色濃く残すたたずまいでした。堂のプロポーション、屋根の量感、柱と梁の組み方……細部に至るまで、後世の建物とは違う独特の雰囲気が漂っていたと伝えられています。
「本当に唐代か?」重ねられた検証
現存最大の唐代木構造といっても、その年代がすぐに確定したわけではありません。佛光寺東大殿の「唐代建築としての身元」は、何度も検討・認証が重ねられてきました。
専門家たちは、
- 構造の特徴や比例関係
- 柱や梁、斗栱のつくり方
- 残された記録や伝承
などを手がかりに、時代を絞り込んでいきました。その結果、東大殿は唐代の木造建築として位置づけられ、その価値があらためて認識されることになりました。
唐代斗栱が見せる「美」と「理性」
佛光寺東大殿を語るうえで欠かせないのが、木構造を支える要となる「斗栱(ときょう)」です。斗栱とは、柱と屋根のあいだで木材同士をかみ合わせ、荷重を分散させるための組み物で、中国の伝統建築を特徴づける要素の一つです。
佛光寺の東大殿では、この斗栱が唐代らしい「美」と「理性」を体現しているといわれます。
- 一つ一つの部材が無理なく組み合わさり、構造的に合理的である
- 横から見たときの段差や張り出しが、リズミカルで美しいシルエットをつくる
- 全体のバランスがとれており、装飾的でありながら過度に派手ではない
単に屋根を支える技術ではなく、「美しいからこそ丈夫であり、丈夫だからこそ美しい」という、技術と美意識の両立が見て取れます。古代の大工や工房が、経験と理性を総動員して設計と施工を行っていたことが、斗栱から読み取れるのです。
2025年、デジタル空間で出会う佛光寺
この建築を紹介する中国語の文章には、「数字特展入口」という案内も添えられていました。つまり、デジタル技術を使って佛光寺東大殿の細部をオンラインで体験できる特別展が用意されているということです。
2025年のいま、文化財や歴史的建築をデジタルで記録し、誰もが画面からアクセスできるようにする取り組みは、世界各地で進んでいます。佛光寺東大殿もまた、深山に守られてきた建築でありながら、デジタル空間を通じて国境や距離をこえて共有される存在になりつつあります。
佛光寺東大殿が私たちに投げかける問い
佛光寺東大殿の物語は、単なる「すごい古建築」の話にとどまりません。そこからは、現代を生きる私たちへの問いも見えてきます。
- 技術と美意識をどう両立させるか――唐代斗栱の「美と理性」は、現代のデザインやエンジニアリングにも通じるテーマです。
- どのように文化財を守るか――深山という環境が果たした役割は、今日の都市計画や保存政策を考えるヒントにもなります。
- デジタルとリアルをどうつなぐか――現地に行けない人がオンライン特展で体験しつつ、実際の場所の価値も尊重するバランスが問われます。
静かな鐘の音が響く古刹から、最先端のデジタル特展まで。佛光寺東大殿は、過去と現在、山中の現実空間とオンライン空間をゆるやかにつなぐ存在として、2025年の私たちに多くの気づきを与えてくれます。
Reference(s):
cgtn.com








