ベトナム・ハノイのタートルタワー 伝説とARでよみがえる湖上の物語 video poster
ベトナムの首都ハノイにあるホアンキエム湖。その穏やかな水面の真ん中に立つ小さな塔、タートルタワーが、いま拡張現実(AR)を通じて新しい姿を見せています。伝説の舞台と最新テクノロジーが重なり合うこの試みは、国際ニュースとしても「観光とデジタル」の未来を考えさせてくれます。
ハノイの静かな湖に浮かぶ「タートルタワー」
ホアンキエム湖の中央に、ひときわ目を引く建物として立っているのがタートルタワーです。にぎやかな都市空間の中で、湖の上にぽつんと浮かぶように見えるその姿は、ハノイを訪れる人の記憶に残る風景となっています。
水面に映る塔のシルエットはシンプルですが、そこには物語と歴史を感じさせる重みがあります。タートルタワーは、単なる観光スポットではなく、ある伝説と深く結びついた場所として語り継がれてきました。
黄金の亀と皇帝レ・ロイ 剣をめぐる伝説
伝説によると、この湖では皇帝レ・ロイと「黄金の亀」をめぐる物語が語られています。物語の中で、皇帝レ・ロイは不思議な力を宿した剣を手にしていました。その剣は、大きな力を持つ「魔法の剣」として人々に知られていたとされています。
そしてある時、このホアンキエム湖で黄金の亀が姿を現し、皇帝レ・ロイの剣を湖へと持ち帰ったと伝えられています。タートルタワーは、まさにその「剣が亀によって返された場所」と結びつく象徴的な存在として、湖の真ん中に立ち続けています。
事実かどうかを超えて、こうした伝説は、その土地に住む人々にとっての記憶やアイデンティティを形づくる物語として機能しています。湖に浮かぶ塔を見上げるとき、そこには単なる建物以上の意味が重なって見えてくるのです。
ARが古い建築を「いま」のスクリーンに連れ出す
このタートルタワーをテーマに、拡張現実(AR)を活用した動画も制作されています。ARとは、現実の風景にデジタル映像を重ねて表示し、目の前の世界を「拡張」する技術です。スマートフォンやタブレットの画面越しに、現実と仮想が同時に見えるのが特徴です。
タートルタワーのAR動画では、画面の中で湖上の塔が立体的に立ち上がり、普段の写真や映像よりも「その場に近い」感覚で眺められるような表現が試みられています。静かな湖と塔の姿に、伝説の気配が重なっていくような体験を、手元のデバイス上で再現しているのです。
このようなAR表現は、例えば次のような点で価値を持ちます。
- 遠く離れた場所からでも、タートルタワーとホアンキエム湖の雰囲気に触れられる
- 文字だけではイメージしにくい「黄金の亀と剣」の伝説を、視覚的に感じ取れる
- 歴史や文化に関心の薄い人にも、直感的で楽しい入り口を用意できる
2025年のいま、世界各地の文化遺産や歴史的スポットが、こうしてARなどのデジタル技術を通じて新たな「見られ方」を獲得しつつあります。タートルタワーの試みも、その流れの中に位置づけることができます。
スマホ世代の「旅」と文化体験のアップデート
日常的にスマートフォンで情報を集める世代にとって、旅や観光のスタート地点は、もはや空港や駅ではなく、手元の画面です。タートルタワーのような海外の文化的な場所も、まずはSNSや動画、そしてARコンテンツを通じて「知る」ことが増えています。
こうしたデジタル体験には、少なくとも二つの意味があります。
- 実際に行く前に、その場所の物語や雰囲気を理解し、現地訪問をより充実させる「予習」になる
- 今すぐ現地に行けない人にも、その土地の文化や伝説に触れる機会を広げる
もちろん、湖の風や街のにおい、雑踏の音など、現地に立ってこそ感じられるものもあります。それでも、タートルタワーのAR動画のような試みは、「いつか行ってみたい」という気持ちを育て、世界との距離を少しだけ縮めてくれる手段になり得ます。
伝説とテクノロジーが出会う場所としてのタートルタワー
ホアンキエム湖にたたずむタートルタワーは、黄金の亀と皇帝レ・ロイの剣をめぐる伝説の舞台として、長く語り継がれてきました。そこにARという新しい技術が重なったことで、湖上の静かな塔は、世界中のスクリーンの中で再び息を吹き返しつつあります。
伝説の物語をどう伝えるか。歴史ある建物をどう未来へ受け渡すか。その答えの一つとして、タートルタワーとARの組み合わせは、「古いもの」と「新しいもの」を対立させるのではなく、重ね合わせる可能性を示しています。
スマホでニュースや動画をチェックする私たちの日常の中に、遠い国の湖に浮かぶ小さな塔の物語が、そっと入り込んでくる。そのささやかな変化こそが、デジタル時代の国際ニュースの面白さなのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








