唐三彩が現代に蘇る 1300年の三色釉が放つ新しい魅力
唐代に花開いた三色の釉薬をまとう陶器「唐三彩」が、21世紀のいま、伝統工芸と現代デザインをつなぐ中国文化の象徴として静かな注目を集めています。2008年に中国の国家級無形文化遺産リストに登録されて以降、その技法と表現は新たな世代によって受け継がれ、アップデートされ続けています。
3月1日に放送された番組「Culture China Tour」では、視聴者を河南省洛陽市へと案内し、この古い工芸が持つ現在進行形の魅力を紹介しました。洛陽博物館の専門展示室には、中国各地から訪れる人びとが足を運び、1300年以上前の色彩と形に見入っています。
唐三彩とは何か:三色が語る唐代の美意識
唐三彩は、唐代に栄えた三色の釉薬を特徴とする陶器です。黄色・緑・白を基調とした低温の釉薬が使われ、焼成の過程で釉薬が溶け合い、流れるような色のにじみを生み出す点に個性があります。
「三彩」という言葉は、文字通りには「三つの色」を意味しますが、古典中国語では「三」という数字に「多様で豊かな」というニュアンスも含まれます。そのため、三彩という名には、実際の色数以上に、豊かな色世界へのイメージが重ねられています。
唐三彩の題材は、人や動物、日常の器まで幅広く、人々の暮らしぶりと当時の国際性を伝えます。
- 華やかな衣装をまとった女性像からは、唐代の美意識やファッションの感覚が伝わる
- 馬やラクダの像は、シルクロードを通じた唐代の盛んな対外交易を象徴する存在として知られる
- 壺や皿などの器物には、実用品としての機能と鑑賞物としての美が同居している
こうしたモチーフを通じて、唐三彩は単なる工芸品を超え、当時の社会や文化の断片を現在に伝えるメディアのような役割も果たしています。
洛陽で出会う唐三彩:博物館がつなぐ過去と現在
番組「Culture China Tour」が訪ねた河南省洛陽市は、唐三彩の魅力を立体的に感じられる場所です。洛陽博物館には唐三彩の専用展示室が設けられ、日々、多くの来場者が三色の釉薬に彩られた像や器を見つめています。
来場者が見上げるのは、堂々とした体つきの馬やラクダの像、柔らかな表情をたたえる人物像、そして生活の道具としても使われた器の数々です。ガラス越しに並ぶ作品は、かつての唐の都の空気やシルクロードを行き交った人びとの姿を、想像の中で呼び起こします。
現地を訪ねることが難しい人にとっても、番組やオンラインで洛陽の展示が紹介されることで、唐三彩は身近な「国際ニュース」として日本語で触れられる存在になりつつあります。
30以上の工程が生み出す「流れる色」
唐三彩の制作は、決して一朝一夕にできるものではありません。原料の選定から粘土による造形、窯での焼成にいたるまで、30を超える工程が積み重なっています。
- 原料の選定:土や釉薬に使う素材を見極める
- 粘土での成形:人や動物、器の形を丁寧にかたどる
- 窯での焼成:釉薬が溶け、色が流れ合う決定的なプロセス
焼成の段階では、釉薬が高温で溶け出し、隣り合う色同士が自然に流れ込むことで、境界のあいまいなグラデーションが生まれます。この「計算しきれない色の流れ」こそが、唐三彩ならではの表情です。
同じ配合の釉薬を使っても、窯の状態や作品の置き方によって仕上がりが微妙に変わるため、ひとつとして同じ作品は生まれません。そこに、工芸とアートのあいだを行き来する唐三彩の魅力があります。
無形文化遺産登録がもたらした「復興」の追い風
2008年に唐三彩の焼成技術が中国の国家級無形文化遺産リストに登録されてから、伝統の継承だけでなく「どう現代とつなぐか」という問いが、より強く意識されるようになりました。
登録を機に、新しい世代の職人たちが唐三彩に関心を寄せ、伝統技法を学びながら、現代の素材や技術も取り入れています。その結果、生み出される作品は、歴史的な本物らしさと、現代の感覚に合うデザイン性をあわせ持つものになってきました。
唐三彩が、過去を保存するためだけの「古いもの」ではなく、現在もアップデートされる「生きた文化」だという見方が、こうした動きから浮かび上がります。
新たな表現「三彩釉画」の登場
近年の試みの中でも象徴的なのが、「三彩釉画」と呼ばれる表現です。これは、従来の釉薬の色数を広げながら、中国の水墨画の要素を取り入れたものとされています。
三彩釉画では、釉薬の流れやにじみを、絵画的な構図や筆致の感覚と組み合わせることで、唐三彩の器や像を「キャンバス」のように扱います。水墨画のような余白や濃淡のリズムと、ガラス質の釉薬がつくる光沢ある色面が重なり合うことで、古い技術から新しいイメージが立ち上がります。
こうした試みは、伝統への敬意を保ちながらも、表現の幅を広げることで、唐三彩を現代の暮らしやインテリアにもなじみやすい存在へと変えていく可能性を秘めています。
なぜ今、唐三彩なのか:グローバル時代の意味
唐三彩は、唐代の国際的な交流と、現在のグローバルな文化の動きを重ねて考える手がかりにもなります。シルクロードを象徴する馬やラクダ、異国風の衣装をまとった人物像は、古代の人・モノ・文化の往来を静かに物語っています。
一方で、無形文化遺産として再評価され、新しい技術やデザインと結びつく流れは、「伝統を守る」と「現代にひらく」を両立させようとする、現代中国文化の姿を映し出しています。
唐三彩をめぐって考えてみたいこと
- 1300年前に生まれた工芸が、なぜ今も人びとを惹きつけ続けているのか
- 伝統をそのまま保存するだけでなく、「三彩釉画」のように創造的に発展させる意義は何か
- 洛陽博物館やテレビ番組、オンライン配信などを通じて、地域の文化がどのように広く共有されうるのか
唐三彩の物語は、一見すると遥か遠い唐代の話のようでいて、実は「過去の遺産をどう未来につなぐか」という、現代の私たちにも共通する課題そのものです。ニュースや国際文化を日本語で追いかける中で、こうした古くて新しい工芸の動きに目を向けることは、自分たちの暮らし方や価値観を考え直す小さなきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
Reviving Tang Sancai: Ancient Tri-Colored Glazed Pottery Shines Anew
cctv.com








