古典籍を救う最新テック:中国本土で進むデジタル復元の最前線
中国本土で、何百年も前の古典籍を最新テクノロジーでよみがえらせる取り組みが加速しています。中国文化・観光部は最近、「国家級古典籍修復センター」の第2弾となる拠点を発表し、貴重な書物の保護・修復・活用を本格的に推し進めています。2025年2月22日には「文化中国ツアー」がこれらのセンターを訪問し、その現場でどのように古い本が守られているのかを公開しました。
国家級古典籍修復センター第2弾、その意義
今回の国家級センターの整備は、単に傷んだ紙を直すだけではありません。物理的な保存と修復に加え、デジタル化やデータベース化によって古典籍を「資源」として活用し、次世代に伝えていくことをめざしています。中国の数千年にわたる文字文化を、現在進行形の知識基盤として再構築しようとする動きだと言えます。
陝西省図書館:百科全書級の古典籍を救う
その一つが、陝西省図書館の古典籍保護センターです。ここでは、紙やインクの状態が悪化した書物に対し、専門家が高度な技術を組み合わせて「救出修復」を行っています。
使われている主な技術は、次のようなものです。
- 材料分析:紙やインク、糊などの成分や劣化の状態を科学的に調べ、最も負担の少ない修復方法を選ぶ
- 補紙:欠損した部分を、新たに用意した紙で丁寧に埋めることで、ページとして読める状態に戻す
- 色合わせ:周囲の紙の色や風合いに合わせて色を調合し、補修部分が極力目立たないようにする
同センターの代表的な成果の一つが、『古今図書集成』の救出です。これは、天文・地理から文学、哲学、経済、政治に至るまで、多様な分野を一つにまとめた類書(百科事典的な叢書)で、現存する中華の類書として最大級の規模を誇ります。1000巻を超える膨大な巻数と4万枚以上の紙葉から成り、『永楽大典』『四庫全書』と並ぶ貴重な知のアーカイブとされています。
復旦大学:歴史の紙を再現する超薄修復紙
古典籍の修復で、しばしば最大の壁になるのが「紙そのもの」の再現です。復旦大学の中国古典籍保護研究院は、この課題に正面から取り組み、歴史的な紙を再現するための超薄修復紙を開発しました。
開発された修復紙は、1平方メートルあたりわずか1.6グラムという軽さで、明清時代の印刷用紙に近い性質を持つよう設計されています。強度や透け感、インクの乗り方などを可能な限り当時の紙に近づけることで、元のページとの一体感を高めています。
修復の現場では、この極薄の紙を傷んだ部分にぴたりと重ね、欠けた箇所を埋めるように貼り合わせていきます。紙の繊維の流れや厚みを読み取りながら、元の紙と修復紙を違和感なくなじませていく作業は、まさにミクロの世界の職人技です。こうして、一枚一枚のページが静かに、しかし確実に命を吹き返していきます。
首都図書館:AIと3Dで開くデジタル古典籍
古典籍を守るもう一つの柱が、デジタル化による公開です。首都図書館では最近、古典籍のデジタル資源プラットフォームを立ち上げ、オンラインでの閲覧や研究を可能にしています。
このプラットフォームでは、読者は次のような機能を利用できます。
- 同じ作品の異なる版や装丁を一覧し、細部まで見比べる
- 写本や版木刷りの文字の字形を、複数の写本・印本間で比較する
- 古い書体や文語体の本文を、簡体字にリアルタイムで変換し、自動で句読点を付け、横書きのレイアウトに整える
さらに、AI(人工知能)と裸眼3D技術を組み合わせ、『牡丹亭』『天工開物』といった古典のデジタル版も制作されています。専用の機器や眼鏡を使わずに立体感のある映像を表示できる裸眼3Dによって、舞台芸術や古代の工芸・技術書が、現代の観客にも臨場感をもって伝わるよう工夫されています。
テクノロジーがつなぐ「過去」と「いま」
こうした取り組みは、「古い本を保存すること」と「現代の読者に開くこと」を同時に実現しようとする試みです。物理的な修復によって紙の寿命を延ばしつつ、デジタル技術でアクセスのハードルを下げることで、古典籍は専門家だけのものではなく、広く社会が共有できる文化資源へと変わりつつあります。
世界各地で文化財のデジタルアーカイブ化が進むなか、中国本土の古典籍保護とテクノロジーの組み合わせは、アジアの知の歴史をどのように未来につなぐのかという問いを投げかけています。スマートフォンでニュースを読む私たちにとっても、数百年前の紙の一枚一枚が、いまの知識社会とどう結びついているのかを考えるきっかけになりそうです。
Reference(s):
Tech Innovations Breathe New Life into Ancient Chinese Texts
cctv.com








