二胡がつなぐ二つの世界:オランダ人バイオリニストの上海音楽留学記 video poster
リード:オランダ出身のバイオリニスト、アナスタシア・フリードマンさんが、約8000キロ離れた上海へ二胡を学びに渡りました。二つの弦楽器が結ぶ東西の対話から、音楽と文化の新しい可能性が見えてきます。
オランダから上海へ、二胡を追いかけて約8000キロ
2025年現在、アナスタシア・フリードマンさんは上海音楽学院(Shanghai Conservatory of Music)で二胡を学んでいます。出発点はヨーロッパのオランダ。そこから約8000キロの距離を移動し、中国の大都市・上海で新しい音楽の旅を続けています。
彼女はもともとバイオリンを演奏してきましたが、二胡という中国の伝統的な弦楽器に魅了され、その音色を本格的に極めたいと考えるようになりました。現在は、バイオリンと二胡の両方に通じる演奏家として、自らの技術をさらに磨いている段階です。
二胡とバイオリン――二つの弦がつなぐ東西
フリードマンさんの物語は、単なる「外国人が二胡を習う」という話にとどまりません。西洋のバイオリンと、中国の二胡。この二つの弦楽器を自由に行き来できるからこそ、東西の音楽がどのようにつながり合うのかを、実際の演奏を通じて探ることができます。
音色の違いと、共通する「歌ごころ」
二胡は二本の弦を弓でこする構造を持ち、人の声に近いと言われる柔らかな音色が特徴です。一方、バイオリンは四本の弦を持ち、西洋クラシック音楽の中心的な楽器として発展してきました。構造も音楽史も異なりますが、「弓で弦を鳴らし、歌うように音を紡ぐ」という点では共通しています。
二胡ならではの繊細なポルタメント(音を滑らかにつなぐ表現)や、バイオリンの持つダイナミックな音量と音域の広さ。フリードマンさんは、その両方を体の中に取り込みながら、どのように組み合わせれば新しい音の世界が生まれるのかを日々実験しているといえるでしょう。
楽器を通じて見える「東洋」と「西洋」
二胡の伝統的なレパートリーには、中国の風景や物語、人々の感情を描いた作品が多く含まれます。一方で、バイオリンの名曲は、ヨーロッパの歴史や思想、宗教観と深く結びついてきました。どちらの楽器も、単なる「音」ではなく、文化や価値観を背負った存在です。
その両方を演奏できるフリードマンさんは、東洋・西洋という枠を越えて、「同じフレーズでも楽器や文脈が変われば聴こえ方はどう変わるのか」「二胡で西洋の旋律を弾くと何が起きるのか」といった問いを、自分の演奏で確かめているはずです。そこには、教科書では学べない生きた国際交流が広がっています。
上海での学びがひらく、新しい音の発見
上海音楽学院で学ぶという選択は、単に高い指導を受けるためだけではなく、現地の音楽文化の中に自分を置くという意味もあります。教室でのレッスン、仲間との合奏、街にあふれる音楽イベント――そうした日常の一つひとつが、二胡とバイオリンの両方を知るフリードマンさんにとって「新しい発見」の連続になっていると考えられます。
異なるバックグラウンドを「強み」に変える
オランダで育ち、西洋音楽を土台に持つ演奏家が、中国の伝統楽器を専門的に学ぶ。そこには、言葉や習慣、音楽の感じ方の違いなど、さまざまなギャップもあります。しかし、それらは必ずしも「壁」ではなく、表現の幅を広げるための大きなヒントにもなります。
二胡とバイオリンという二つの世界を行き来することで、フリードマンさんは「どちらか一方に合わせる」のではなく、自分だけの音楽的なアイデンティティを形づくりつつあります。そのプロセスこそが、彼女にとっての最大の学びといえるかもしれません。
上海という都市がもたらす刺激
多様な文化が行き交う上海は、国際的な音楽家にとって格好の実験の場でもあります。伝統と現代が同時に存在する環境の中で、二胡の古典的な魅力と、バイオリンを通じて培ってきた表現力とをどう組み合わせるか。フリードマンさんは、その問いに日々向き合いながら、音の可能性を広げています。
二胡が映し出す、これからの国際交流のかたち
フリードマンさんの旅路は、グローバルな時代における「文化交流」の一つの姿を示しています。国境を越えて学び合うことは、もはや特別なエピソードではなく、2025年の今を生きる多くの人にとって身近な選択肢になりつつあります。
その中で、二胡とバイオリンという二つの楽器が果たす役割は小さくありません。楽譜や言語が違っていても、音楽を通じて共有できる感情や物語があります。フリードマンさんのように、遠く離れた土地へと一歩を踏み出す個人の決断は、国と国、人と人の距離を静かに縮めていきます。
私たちがニュースとしてこの物語に触れるとき、「もし自分なら、どの文化や表現と向き合ってみたいか」と問い直すきっかけにもなるでしょう。二胡とバイオリンがつなぐ二つの世界。その交差点から生まれる音は、これからの国際社会における対話のヒントを、やわらかく伝えてくれているようです。
Reference(s):
One erhu, two worlds: A Dutch violinist's transcultural journey
cgtn.com








