長寿の科学を読む:『アウトリブ』が示す新しい医療と老いの向き合い方 video poster
長寿の「科学とアート」を読む:『アウトリブ』が映す医療の転換点
2025年の今、「長く、そして健康に生きるにはどうすればいいのか」という問いは、世界共通の関心事になっています。長寿と健康寿命をテーマにした書籍『Outlive: The Science and Art of Longevity』(以下『アウトリブ』)を通じて、医療の現場からその問いに向き合おうとしているのが、United Family Healthcareの創業者ロバータ・リプソンです。
彼女が登場したオンライン番組「PAGE X」では、『アウトリブ』を手がかりに、人類の長寿への飽くなき探求と、現代医療がいま迎えつつある静かなパラダイムシフトが語られました。
病気になってから治す医療から、「老い」と闘う医療へ
人類は歴史を通じて、長生きする方法を探し続けてきました。『アウトリブ』が描き出すのは、その探求が「病気の治療」中心の発想から、「老化そのものに向き合う」発想へと移りつつあるという視点です。
リプソンは、これまでの医療が、がんや心疾患、脳卒中といった「目に見える病気」が現れてから対応する、いわば「後追い型」のモデルだったと指摘します。その一方で、長寿の科学は、老化のプロセスをより早い段階でとらえ、身体のごく小さな単位である細胞レベルから介入しようとする考え方にシフトしつつあります。
この視点に立てば、高血圧や糖尿病といった生活習慣病は、「年をとれば誰もが通る道」ではなく、本来は早い段階の介入によって避けうる変化として捉え直すことができます。
細胞レベルで老化に挑むとはどういうことか
番組で紹介された『アウトリブ』の特徴の一つは、老化を単なる「年齢」ではなく、体内で起きている連続的な変化の積み重ねとして描いている点です。細胞レベルへの介入とは、こうした変化が大きな病気として現れる前の段階で、できるだけ早く軌道修正していくアプローチです。
たとえば、日々の生活の中で蓄積する小さなダメージを放置せず、睡眠や食事、運動、ストレス管理などを通じて、細胞の状態を安定させていく。検査やモニタリングも、「病気を見つけるため」だけでなく、「老化のスピードを把握するため」に活用する。こうした考え方が、『アウトリブ』のいう「科学とアート」としての長寿の一端といえます。
医療現場から見る長寿:ロバータ・リプソンの視点
United Family Healthcareを立ち上げたリプソンは、患者と長期的に向き合う医療の重要性を訴えてきました。『アウトリブ』を通じて語られるのは、「症状が出てから病院に行く」のではなく、「健康なうちから、未来の自分のために医療をどう使うか」という発想です。
これは、医師と患者の関係にも変化を求めます。医療者が一方的に治療方針を決めるのではなく、患者自身が自分の体と老化について学び、具体的な行動を選び取っていく。そのプロセスを支えるパートナーとして医療が機能するとき、長寿はより現実的な目標になっていくといえます。
オンライン番組「PAGE X」が果たす役割
リプソンの『アウトリブ』紹介は、さまざまな分野のゲストが「お気に入りの一冊」を取り上げるオンライン番組「PAGE X」の一コマとして行われました。番組では、ゲストが選んだ本の一節を手がかりに、その本が示す考え方や背景を語り合い、視聴者と共有していきます。
世界各地の知的な著作にオンラインでアクセスしやすくすることで、読者や視聴者に「読書の魅力を再発見してもらう」ことも、この番組のねらいの一つです。ニュースと読書をつなぎながら、医療や哲学、文化など多様なテーマへの入口を提供しているといえるでしょう。
日本の私たちにとっての「アウトリブ的」な生き方
『アウトリブ』やリプソンのメッセージは、日本で生活する私たちにとっても他人事ではありません。超高齢社会を迎えた日本では、「長く生きる」だけでなく、「最後まで自分らしく生きる」健康寿命が大きなテーマになっています。
番組で語られた長寿の考え方は、次のような小さな実践にもつながります。
- 「年齢が上がれば病気は当たり前」という思い込みを、一度疑ってみる
- 睡眠・食事・運動・メンタルケアを、「今のため」だけでなく「10年後の自分への投資」として考える
- 定期的な検査やチェックを、「怖いから避ける」のではなく、「老化のサインを早く知るためのツール」として捉える
- 本や番組をきっかけに、自分の健康観や人生観をアップデートし続ける
長寿は「ゴール」ではなくプロセス
『アウトリブ』が教えてくれるのは、長寿が単なる「ゴール」ではなく、日々の選択と学びの積み重ねだということです。老化に立ち向かう最前線の医療の動きと、それをわかりやすく伝えようとする「PAGE X」のような試みは、2025年を生きる私たちに、「どう生きたいか」を考え直すきっかけを与えてくれます。
ニュースや本を通じて世界の知に触れることは、情報収集にとどまらず、「自分の未来のつくり方」を静かに見直す時間にもなります。スマートフォン一つで長寿の最新の考え方にアクセスできる今、どんな視点を自分の中に取り入れるかが、これからの生き方を大きく左右していきそうです。
Reference(s):
PAGE X: Unlocking the secrets of longevity through 'Outlive'
cgtn.com







