2025年アカデミー賞ブラジル映画『I'm Still Here』北京で中国プレミア video poster
2025年のアカデミー賞で国際長編映画賞を受賞したブラジル映画『I'm Still Here』が、北京で中国でのプレミア上映を迎えました。政治的な歴史を背景にしつつ、一人の女性の人生に光を当てるこの作品は、中国とブラジルの文化交流を象徴する一本として注目されています。
北京で始まった中国公開
月曜日の夜、北京で開かれたイベントで『I'm Still Here』の中国での初上映が行われました。会場には、ブラジルと中国の映画業界関係者が集まり、今年を代表する国際映画の一つを見届けました。
このプレミア上映には、現在中国の首都を国賓として訪問しているブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領の妻、ロザンジェラ・ルラ・ダ・シルバさんも出席しました。外交の場と並行して文化の交流が進む、象徴的な一夜となりました。
実在の女性を描く政治ドラマ
『I'm Still Here』は、ユニス・パイヴァという実在の女性を描いた政治ドラマです。彼女の夫であるフーベンス・パイヴァは、1970年代のブラジルで突然行方不明となり、その後も戻ることはありませんでした。
映画は、政治的な混乱の中でユニスが自分自身と家族の生活を立て直そうとする過程を丁寧にたどります。その姿を通じて、権力の圧力にさらされながらも前を向いて生きようとする一人の市民の強さとしなやかさが浮かび上がります。
ロザンジェラ夫人が語った距離と誇り
プレミアの壇上で、ロザンジェラ・ルラ・ダ・シルバさんは、この作品がブラジルにもたらした誇りと、中国で上映される意味について語りました。彼女は、作品が約1万7千キロの距離を越えて中国にたどり着いたことを強調しました。
さらに、中国全土の1万館を超える映画館で、この長く埋もれてきたブラジル現代史の一章が語られると述べ、『I'm Still Here』は世界を舞台にした物語として、いよいよ完成形に近づいたとする思いをにじませました。
中国の女優・姚晨が見たブラジル
イベントには、中国の女優・姚晨さんも登場しました。彼女は、自身が参加した映画『The Cord of Life』が2023年にサンパウロで開かれた中国映画祭で上映された経験を振り返りました。
姚晨さんは、そのときブラジルの観客と映画を通じてつながった感覚を紹介しながら、今回のプレミアに合わせて『The Cord of Life』のサウンドトラックのアナログレコードをロザンジェラ夫人に贈りました。一本の映画が、時間や場所を越えて人と人を結びつける象徴的な場面でした。
映画がつなぐ中国とブラジルの対話
姚晨さんはまた、中国とブラジルの映画人どうしの交流をもっと増やしたいと語り、互いをより深く理解し、ともに世界を見つめていくために映画の力を生かしたいと呼びかけました。『I'm Still Here』のプレミアは、その第一歩を示す場とも言えます。
こうした動きは、政治や経済のニュースとは別のレイヤーで進む国際的な対話です。スクリーンを通じて互いの歴史や感情を共有することで、数字や統計では見えにくい他国のリアリティが少しずつ見えてきます。
なぜこの物語は世界に響くのか
『I'm Still Here』が世界各地で評価されている背景には、特殊な政治状況だけでなく、家族を失った喪失感や、それでも日常を続けなければならないという普遍的なテーマがあります。観客は、ユニスの姿に自分や身近な人の姿を重ねることができます。
また、歴史の中で語られずにきた物語を、個人の視点からていねいに描き出すことは、多くの社会で共通する課題でもあります。ブラジルの一人の女性の人生を追うこの映画が、中国や他の地域の観客にも受け入れられていることは、そのことを静かに示しています。
日本の観客にとっての意味
遠いブラジルと中国の映画の話題は、一見すると日本の日常からは離れているように見えます。しかし、家族、記憶、歴史との向き合い方といったテーマは、日本に暮らす私たちにとっても身近なものです。
国際映画の動きを追うことは、海外の出来事を日本語で知るだけでなく、自分の社会や生活をあらためて見つめ直すきっかけにもなります。『I'm Still Here』をめぐる今回のニュースは、映画がまだ見ぬ世界と私たち自身を同時に映し出すメディアであることを、あらためて思い出させてくれます。
Reference(s):
Oscar-winning Brazilian movie holds Chinese premiere in Beijing
cgtn.com








