米判事、トランプ政権のハーバード留学生禁止を差し止め 何が争点か
米マサチューセッツ州の連邦地裁判事が、トランプ政権によるハーバード大学の留学生受け入れ禁止措置を一時的に差し止める命令を延長しました。世界から学生が集まる名門大学と政権の対立は、米国の高等教育と移民政策の緊張を象徴する出来事となっています。
判事が差し止めを延長 何が起きたのか
2025年5月29日(現地時間の木曜日)、米マサチューセッツ州にある連邦地方裁判所で、アリソン・バロウズ判事がトランプ政権の新たな留学生政策に対する仮差し止め命令(Temporary Restraining Order:TRO)の効力を延長しました。問題となっているのは、ハーバード大学が海外からの留学生を受け入れることを狙い撃ちにした政策です。
この政策では、米国土安全保障省がハーバード大学の「学生・交流訪問者プログラム(Student and Exchange Visitor Program)」における認証を取り消し、大学が国際学生を新たに受け入れられないようにする内容が含まれていました。TROの延長により、この措置は当面の間、執行が停止されることになります。
裁判所文書によると、当事者双方は今後、より長期の効力を持つ「予備的差止命令」の文言について、共同もしくは別々に案を提出します。その上で、バロウズ判事が最終的な予備的差止命令を出すまで、現状を維持することが決まりました。つまり、少なくともこの段階では、ハーバード大学は従来どおり留学生を受け入れることができます。
5月に何があったのか:対立のタイムライン
5月22日:留学生受け入れ資格の撤回
対立の発端は2025年5月22日でした。米国土安全保障省は、ハーバード大学の学生・交流訪問者プログラムの認証を取り消すと発表します。これは、学生ビザ制度の下で大学が留学生を受け入れるために必要な資格であり、その撤回は事実上、ハーバードが国際学生を新たに受け入れできなくなることを意味しました。
5月23日:ハーバードが提訴、TROが発令
これに対し、ハーバード大学は翌5月23日、トランプ政権の政策は違法だとして連邦地裁に提訴します。同じ日にバロウズ判事は仮差し止め命令(TRO)を出し、政権側の措置の執行を一時停止させました。判事は、審理が進む間は「現状維持」を求め、ハーバードが急に留学生の受け入れを中止しなくてよいよう配慮しています。
5月28日前後:政権側が30日の猶予を提示
その後の5月28日付の文書で、米司法省は裁判所に対し、国土安全保障省がハーバード大学に30日間の異議申し立て期間を与えることを通知しました。この文書はハーバード側にも送付されており、大学に対して政策に異議を唱える手続きの「猶予期間」を認める内容でした。米CNNは、この動きが司法の介入を受けてトランプ政権がそれまでの強硬姿勢を一部修正したものだと伝えています。
それでも続く圧力:留学生比率「15%」発言
一方で、トランプ政権によるハーバード大学への圧力は収まっていません。TRO延長の前後には、トランプ氏がハーバード大学に在籍する外国人学生の割合を「約15%程度」に制限すべきだと発言しました。さらに、大学側に対して外国人学生の名簿を提出するよう改めて求めています。
ハーバード大学のデータによると、2023年秋学期時点で、留学生は全学生の27%超を占めています。現在、ハーバードには世界140以上の国と地域から約6,800人の留学生と研究者が在籍しており、その多くは大学院レベルの学位取得や研究に従事しています。仮に政権の主張どおり、留学生比率を15%前後に抑えることになれば、受け入れ規模を大幅に縮小せざるを得ないことになります。
資金凍結、税優遇見直し…相次ぐ圧力
留学生受け入れ資格の撤回は、トランプ政権がハーバード大学にかけている圧力の一部にすぎません。報道によると、政権はこれに先立ち、大学のガバナンス(運営体制)、採用慣行、入学選考方針などについて大規模な改革を要求し、それに応じないとして数十億ドル規模の資金を凍結しました。
さらに、ハーバード大学の非営利組織としての税制優遇措置を取り消す可能性も示唆し、大学に対する複数の調査も開始しています。トランプ政権はホワイトハウス復帰後、ハーバードを含む複数の米大学に対して方針の見直しを迫り、「応じなければ公的資金の削減もあり得る」と警告してきました。
政権が大学に求める「条件」
政権側が大学に突きつけている主な条件には、次のようなものがあります。
- キャンパスにおける反ユダヤ主義の「根絶」
- 特定の少数派を優遇するとされる多様性推進策(ダイバーシティ・プログラム)の廃止
トランプ政権は、これらの課題に大学が十分対応していないと主張し、留学生政策や財政面での圧力をテコに方針転換を迫っている形です。
米国内の世論では、こうした動きの背景には、共和党がハーバードのような名門大学を「リベラル派や民主党支持層の拠点」とみなしていることがあるという見方が広がっています。大学の自治や学問の自由を重視する立場と、政権が掲げる政治的・社会的課題を優先しようとする姿勢が、正面からぶつかっているともいえます。
国際ニュースとしての意味:日本やアジアの学生への影響は
今回の仮差し止め命令の延長により、少なくとも予備的差止命令が正式に決まるまでは、ハーバード大学は従来どおり留学生を受け入れ続けることができます。すでに在籍している留学生にとっても、突然、在籍資格を失うといった急激な変化は避けられています。
一方で、トランプ政権と大学側の対立は継続しており、今後の司法判断や政策変更によって状況が変わる可能性もあります。日本やアジアからハーバード、あるいは他の米国の大学への留学を考える人にとっては、ビザ制度や大学に対する規制の動きが、学びの機会そのものに直結し得るという現実を示した出来事だといえるでしょう。
移民政策、安全保障、少数者保護、言論の自由といったテーマが、キャンパスという場でどのように交差し、留学生の受け入れルールに反映されていくのか。ハーバードをめぐる今回の裁判は、単なる一大学の問題ではなく、米国の高等教育と政治の関係を映す鏡になっています。今後、予備的差止命令の内容や、他大学への波及の有無を含め、この問題は国際ニュースとして注視していく必要があります。
Reference(s):
Judge blocks Trump move to ban international students at Harvard
cgtn.com








