ドンブラと古琴が紡ぐ文明間対話 草原と山水のストリングス
カザフの草原で鳴り響く二弦のドンブラと、中国の学者が七弦の古琴を前に山の詩に思いを巡らせる静かな時間。二つの弦楽器の出会いは、文明間の対話を象徴するストーリーとして、いま改めて注目されています。
草原のドンブラと書斎の古琴
国際ニュースを日本語で追いかけていると、軍事や経済の話題が中心になりがちです。しかし、文明と文明がどのように出会い、互いを理解していくのかを知るには、音楽や文化に目を向けることも大切です。
カザフの遊牧民がつま弾くドンブラは、広大な草原とノマドの精神を思わせる明るい音色を持つ二弦の弦楽器です。一方、中国の学者たちは、七弦の古琴を前に山にまつわる詩を味わいながら、静かに瞑想するように指を運びます。
カザフのドンブラが語るもの
ドンブラは、カザフの人びとのアイデンティティの中心にある存在だとされています。その特徴を、あらためて整理してみます。
- 二本の弦を持つ、明るい音色の弦楽器であること
- 細長いネックを持つリュート系の楽器として、草原の風景を想起させること
- 遊牧の暮らしや英雄譚を語る叙事詩の伴奏に欠かせないこと
- 祝宴や祭りなど、喜びの場面で主役となる楽器であること
- 2014年にユネスコの無形文化遺産リストに記載されたこと
2014年の登録からおよそ10年が過ぎた今も、ドンブラはカザフの物語や感情を伝えるメディアであり続けています。一本一本の弦の響きには、広い空の下で生きる人びとの誇りや記憶が刻まれていると言えるでしょう。
七弦の古琴が映し出す静けさ
対照的に、古琴は静かな内面世界と結びついた楽器としてイメージされます。七本の弦を持つ古琴を前に、中国の学者たちは山を詠んだ詩を口ずさみながら、ゆっくりと音を紡ぎます。
激しく感情を爆発させるのではなく、一音一音を味わいながら思索を深めていくスタイルは、ドンブラの躍動感と美しいコントラストをなしています。同じ弦楽器でありながら、求めている世界や時間の流れが違うようにも感じられます。
異なる美意識が出会うとき
タイトルにある「ドンブラと古琴が出会う」とは、単に二つの楽器を同じ舞台に並べるという意味だけではありません。草原の物語を運ぶ音と、書斎で詩とともに響く音が、互いの違いを保ったまま共鳴すること自体が、文明間対話のひとつのかたちだと言えます。
もし二つの楽器が同じ空間に響くとしたら、私たちは次のような重なりを感じるかもしれません。
- ドンブラの明るく躍動するリズムが、古琴の静かな余白を照らし出す
- 古琴の深く落ち着いた音色が、ドンブラの物語に新たな陰影を与える
- 異なる言語や歴史を越えて、「弦の振動」という共有された感覚が観客を結びつける
そこに優劣はなく、違いそのものが「対話」を生み出す源になります。
無形文化遺産としての重み
ドンブラがユネスコの無形文化遺産リストに記載されたことは、この楽器が単なる伝統芸能にとどまらず、人類共通の財産として位置づけられたことを意味します。登録によって、カザフの物語や価値観が世界と共有されるきっかけが生まれました。
無形文化遺産という視点で見れば、古琴のような楽器もまた、ある地域の人びとの生き方や考え方を映し出す「鏡」の役割を果たします。音楽は、目に見えないけれど確かに存在する記憶や感情を伝える手段だからです。
2025年の私たちへのメッセージ
2025年のいま、世界の分断や対立が強調されるニュースが多い中で、ドンブラと古琴の物語は別の見方を示してくれます。違う歴史や価値観を持つからこそ、互いの声に耳を傾けることができる、というシンプルな事実です。
スマートフォンで国際ニュースをスクロールする日常のなかで、次のような問いを心の片隅に置いてみると、ニュースの読み方も少し変わってくるかもしれません。
- この出来事の背後に、どんな歌や物語、楽器があるのか
- 自分とは違うリズムや静けさを持つ相手を、どう理解しようとするか
- 「どちらが正しいか」だけでなく、「どうすれば共鳴できるか」を考えているか
カザフの草原で鳴るドンブラと、中国で静かに響く古琴。そのストリングスの対話に耳を澄ませることは、遠い国の文化を知るだけでなく、自分自身のものの見方を少し広げるきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
When Dombra Meets Guqin: A String Dialogue Across Civilizations
cgtn.com








