ペルー「ナスカの地上絵」保護区域縮小案を撤回 考古学者らの反発受け video poster
ペルー文化省が、世界的に知られるナスカの地上絵周辺の保護区域を縮小する計画をいったん示したものの、考古学者や批評家からの強い反発を受けて撤回しました。文化遺産の保護と開発や行政効率をどう両立させるかが、2025年の今あらためて問われています。
何が起きたのか
国際ニュース専門チャンネルCGTNの報道によると、ペルー文化省は、同国を代表する考古学遺跡であるナスカの地上絵の周囲に設定されている保護区域を縮小する構想を打ち出していました。
しかし、この計画は発表後、国内外の考古学者やその他の批評的な声から、「脆弱な遺跡への影響が大きすぎるのではないか」といった懸念が相次いだとされています。
こうした反発を受け、ペルー当局は最終的に保護区域の縮小案を撤回し、現行の保護範囲を維持する方針に転じました。リマからは、CGTNのダン・コリンズ記者がこの動きを伝えています。
- ペルー文化省がナスカの地上絵周辺の保護区域縮小を検討
- 考古学者や批評家から遺跡保護への懸念が噴出
- 当局は方針を転換し、縮小案を撤回
反発の背景:なぜ保護区域が重要なのか
ナスカの地上絵のような大規模な考古学遺跡では、周囲の土地利用が遺跡の保存状態を左右します。保護区域とは、遺跡そのものに加え、その周辺での開発や土地利用を制限し、長期的な保存を図るためのエリアです。
保護区域が縮小されれば、道路や農地、建物など、さまざまな人間活動が以前より遺跡に近い場所で行われる可能性が高まります。考古学者たちは、こうした変化が地上絵を支えている地面の状態や景観に影響を与えかねないと警告してきました。
批評家たちはまた、一度保護水準を下げてしまうと、今後さらに緩和が進みやすくなる前例になりかねない点も問題視しました。今回の撤回は、こうした懸念を重く受け止めた結果だと言えます。
ナスカの地上絵とペルー社会
ナスカの地上絵は、ペルーの歴史とアイデンティティを象徴する存在として、長年、国内外の人々を引きつけてきました。遠くからは見えにくい巨大な線や図形が、上空からはっきりと浮かび上がるその姿は、古代の知恵と技術への関心をかき立てます。
ペルーにとって、ナスカの地上絵は文化的な誇りであると同時に、観光を通じて経済にも影響を与える重要な資源でもあります。そのため、保護政策は単なる文化行政ではなく、地域社会の暮らしや国家イメージとも密接に結びついています。
保護区域をどの程度広く取るべきかという議論は、土地利用やインフラ整備、観光開発など、さまざまな利害と交差する問題でもあります。今回の一件は、そのバランスをどう取るかというペルー社会の悩みを映し出したとも言えます。
今回の決定が示すもの
今回の撤回は、少なくとも現時点では「保護を優先する」というメッセージとして受け止められています。専門家や市民の声が政策に反映された例として、文化遺産保護の現場では注目される動きです。
同時に、これは終点ではなく出発点でもあります。保護区域を維持するだけでなく、その中でどのように監視体制を強化し、違法行為や劣化を防ぐのか。地域住民が保護の担い手としてどのように関わっていけるのか。課題は残されています。
今後の論点
国際ニュースとしてこの問題を追うと、次のような論点が浮かび上がります。
- 開発と保護のバランスをどう設計するか
- 考古学者など専門家の知見を政策にどう生かすか
- 文化遺産を観光資源として利用しながら、どのように負荷を抑えるか
- 他の国・地域の遺跡保護にも応用できる教訓は何か
ナスカの地上絵をめぐる今回の判断は、ひとつの国の問題にとどまらず、世界各地の文化遺産をどう守り、未来に手渡していくかという普遍的な問いを投げかけています。通勤時間の数分で読み終えられるニュースの裏側には、私たち一人ひとりが考え続けたいテーマが潜んでいます。
Reference(s):
cgtn.com








