新疆ヘム村のトゥバ人と丸太小屋の暮らし:観光地になった秘境のいま video poster
中国の新疆にあるカナス地域の小さな集落・ヘム村は、朝もやに包まれた草原と木造のキャビンが並ぶ、まるで物語の舞台のような場所です。トゥバ系モンゴルの民族に属する若い女性 Ou Donghua さんにとって、ここは生活の拠点となっている「ふるさと」です。
かつては外界から隔てられた静かな村だったヘムは、近年、旅行者が集まる観光地としても知られるようになりました。2025年のいま、この変化はトゥバの人びとの暮らしに何をもたらしているのでしょうか。
霧と丸太小屋がつくるヘム村の風景
ヘム村の朝は、薄い霧と静けさから始まります。周りを山々と草原に囲まれた村には、丸太を組んで建てられた木造のキャビンが並び、その姿はどこか昔話に出てくる山小屋を思わせます。
村の暮らしのリズムは、都会の時間とはまったく違います。太陽の動きや季節の移ろいに合わせて一日が流れ、訪れる人には時間が止まっているように感じられるかもしれません。
しかし、そこに住む人にとっては、それがいつもの日常です。Ou Donghua さんも、丸太小屋の温かさや朝晩の冷え込み、季節ごとに変わる景色とともに日々を過ごしてきました。
観光地になった秘境:変わるヘム村のリズム
ヘム村は長いあいだ「知る人ぞ知る」存在でしたが、ここ数年で状況が大きく変わりました。SNS や動画を通じて、カナス地域の風景やトゥバの暮らしが広く紹介されるようになり、静かな村にも多くの旅行者が足を運ぶようになったのです。
村を歩くと、木造キャビンを生かした民宿や、地元の料理や温かいお茶を出す小さな飲食店など、旅行者を迎えるための工夫が目に入ります。観光がもたらす現金収入は、村の家庭にとって貴重な支えとなり、若い世代にとっても新しい仕事の選択肢になっています。
同時に、村のリズムも変わりました。観光シーズンには、早朝からカメラを手にした旅行者が霧の中を歩き、日中はツアーバスの出入りが続きます。静けさとにぎわいが交差する風景の中で、トゥバの人びとは、昔からの暮らしと新しい経済活動のバランスを模索しています。
トゥバ人の暮らしはどう変わったのか
Ou Donghua さんのような若い世代にとって、観光地化は単なる収入源ではなく、生き方の選択にもつながっています。村にとどまって観光業に関わるのか、外の都市に出て学び、働きに行くのか。ヘム村では、こうした問いを抱える若者も少なくないはずです。
一方で、観光客が増えることで、トゥバの文化や生活様式が「見せるもの」へと変わってしまうのではないか、という悩みもあります。民族衣装や伝統的な暮らしの道具が、日常の一部であると同時にフォトスポットとして消費される場面も増えていきます。
外から人が来ることは、村に新しい視点や出会いをもたらしますが、過度な商業化はヘム村らしさをかえって薄めてしまうかもしれません。そのバランスをどう取るかは、村全体で時間をかけて答えを探していくテーマです。
隠れた楽園の「次の一歩」
ヘム村は、自然と文化が折り重なった隠れた楽園として注目されています。しかし、この場所が本当に持続可能な形で未来に受け継がれていくためには、いくつかの視点が欠かせません。
- 自然環境を守りながら、観光の受け入れ人数や季節をどう調整するか
- トゥバの文化を、観光用の演出に閉じ込めず、日常の暮らしとしてどう伝えるか
- 若い世代が、村の内と外を自由に行き来しながら、自分なりの生き方を選べるようにするには何が必要か
こうした問いの答えは、ヘム村だけで決められるものではありません。訪れる私たち一人ひとりの態度も、大きな影響を与えます。
静かな朝の霧や丸太小屋のたたずまいを楽しみながらも、そこに暮らす人びとの生活リズムを尊重すること。写真を撮る前に一言あいさつをし、買い物や宿泊を通じて地元に還元すること。遠く離れた村と私たちの日常は、そうした小さな行動でゆるやかにつながっていきます。
Ou Donghua さんの目に映るヘム村は、決して昔に戻ることはないかもしれません。それでも、霧の朝と丸太小屋の風景の中で育まれてきたトゥバの感性や暮らし方は、形を変えながら次の世代へと受け継がれていくはずです。観光地となった今だからこそ、その変化のプロセスに静かに目を向けることが求められています。
Reference(s):
cgtn.com








